ナオミとカナコ(奥田英朗)
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![]() ナオミとカナコ
奥田 英朗(著) 『空中ブランコ』で第131回直木賞を受賞している奥田英朗の最新刊『ナオミとカナコ』。
読み終えた時、もののたとえではなく、本当に胸がドキドキして、喉がカラカラになっていました。 その動悸はしばしおさまらないくらいのもの。 いやー、この小説はすごいわ。 大学時代の友人 直美と加奈子は、今は対照的な生活を送っている。直美は名の知れた百貨店の外商部に勤め、とんでもない金銭感覚のお得意様を相手に、日々奉仕している。
一方の加奈子は専業主婦。ハンサムなエリート銀行員の夫と幸せに暮らしてる…というのは表だけで、実際は些細なことで連日暴力を振るわれている。そう、加奈子の夫はDV男なのだ。 誰にも言わずじっと耐えている加奈子。しかし加奈子の腫れ上がった顔やあざを見つけた直美は問い詰め、本当のことを打ち明けさせる。直美は幼い頃から、母親が父の暴力にさらされているのを見てきた。親友の加奈子が母親と同じ目にあっていると知り、とても他人事とは思えないのだった。 そしてある日、このままでは加奈子の命が危ないのではと思わせる暴力の跡を見た直美は、ついに口に出すのだった。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」加奈子の夫の殺害計画を綿密に立てる二人。いや、これは殺人ではない。駆除なのだ。覚悟を決め、気力を振り絞って実行に移す。 ようやく暴力から解放された加奈子だったが、「完璧」だったはずの計画のあちこちにほころびが見え始める。さて、二人はどうなるのか?! クライムノベルはいろいろあるけれど、こんなにも犯人に肩入れしたくなるのは初めてかも。 殺人など、どんな理由があっても許されないはずなのに、頑張れ、直美!頑張れ、加奈子!と応援せずにいられません。逃げて、逃げて、逃げて~!!!と。 DVに耐えかねた女性が結託して殺人を犯す…といえば桐野夏生『OUT』みたいな設定だけど、ハードボイルドで、ちょっとやさぐれていた『OUT』に比べると、直美と加奈子は可愛さがあるのです。 それがよりいっそう二人を応援したくなる原因かも。 さて、ある人物(女性)が二人を追い詰めるのですが、その人の行動力、気力がすごすぎて、怖くて怖くて。「どうなるの?どうなるの?」とハクハクしながらページをめくりました。 また、二人の味方になる癖のある中国人女性のたくましさ、ある種の大きさもこの小説に花を添えています。 よく考えてみると、この小説を引っ張っているのは、登場する女性たちがそれぞれの立場で必死で頑張る姿です。 女って強いし、怖いわね。 「ナオミの章」、「カナコの章」の二つからなるこの小説。 カナコの章を読み始めると、途中でやめることができませんでした。 これから読まれるかたは、休みの前の日にお読みになることをお勧めします。 途中ではやめられず寝不足になるでしょうから。 ところで、この小説がドラマ化されるのは知っていました。 直美が広末涼子、カナコが内田有紀で。 が、うかつにも、放送開始日時をチェックしていなかったんです。 本を読み終わってブックカバーを外したとき、帯に書かれた文字が目に入りました。 「フジテレビ系列 木曜よる10時 1月14日スタート!」ですって。 がーん!! もう2回見逃してるじゃないの。 ショックすぎる。 でも、まだ「事件」は起きていないはず。 今週の第3回めからは絶対に見なくちゃ! ナオミとカナコ
奥田 英朗(著) 幻冬舎 (2014) ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の“共犯者”になる。望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択…。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」復讐か、サバイバルか、自己実現か―。前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。比類なき“奥田ワールド”全開! 出典:amazon ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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