『食堂かたつむり』の小川糸さんの、
食べ物を中心とした短編集『あつあつを召し上がれ』。
7つのメニューと、それにまつわる人たちの物語です。
例えば、一つめは、おばあちゃんが食べたがったかき氷のお話
「バーバのかき氷」。
童女に返ってしまったおばあちゃんは、
時々家族には理解できないことをしたり言ったりする。
今日もママがご飯を食べさせようとしても、
口を引き結んで拒否。
そして「ふ」「ふ」と言っている。
いったい何が言いたいのだろう。
単なる呼吸音なのか?
孫娘のマユはひらめいた。
バーバはかき氷が食べたいんだと。
マユは自転車を飛ばしてかき氷を買いに行く。
マユがなぜ、バーバの食べたいものがわかったのか、そしてバーバはかき氷を食べることが出来るのか。
ぜひ、実際に読んでくださいね。
ほかに納められているのは
「親父のぶたばら飯」
「さよなら松茸」
「こーちゃんのおみそ汁」
「いとしのハートコロリット」
「ポルクの晩餐」
「季節はずれのきりたんぽ」
幸せな食事もあれば、切ない食事も。
なかでも読み終わった後、しばらく苦しかったのは「いとしのハートコロリット」。
タイトルのファンキーさとは正反対の、
切なくて苦いお話です。
今の日本が抱えている問題をこんなふうに提示してくるとはねぇ。
厚さ1センチにも満たない薄い文庫本に、
喜怒哀楽、人生の機微がたっぷり詰まっていました。
食事風景の描写のすばらしさもあり、お見事!
ヒット作『食堂かたつむり』も読まねば、と思いました。 |
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。
「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
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