大貫妙子「パンとスープとネコ日和」という歌。
偶然知って気に入っていました。
そして出会った 群ようこさんの『パンとスープとネコ日和』。
あれ?同じタイトルだ。
それもそのはず。
2012年4月に角川春樹事務所から単行本として刊行された
『パンとスープとネコ日和』は
2013年の夏にWOWWOWでテレビドラマ化されていたのです。
大貫妙子さんの歌はその主題歌だったというわけ。
ドラマを見ていなくて良かった。
まっさらな気持ちで読むことができます。
***
主人公のアキコは出版社勤務の独身女性。
本造りに没頭しているうちに早くも40代半ばになってしまった。
アキコを女手一つで育ててくれた母カヨ。
住居部分の1階で営む食堂は、
いわゆる大衆食堂で常連も多く、賑わっていた。
しかし、カヨは突然亡くなってしまった。
アキコは職場での人事異動を一つのきっかけとして、
食堂をリニューアル。
自ら調理師免許を取り、
自分なりの理想を盛り込んだカフェをオープンさせる。
メニューは、サンドイッチとスープ、サラダとフルーツのみ。
そんなアキコの元に、ネコがやってきた。
グレーのキジトラで、女の子なのに名前は「たろ」。
アキコは「たろさん」と呼んでいる。
パンと、スープと、たろさんと。
ほかほかした日常に、
一つの「謎」差し込んでくる。
アキコはその謎におずおずと近づいていくのだった。
***
私も意外なジャンルへの転職をした経験があるため、
会社を辞めて新たにカフェを開こうとするアキコには
すごく共感できました。
うまくいくかどうかわからない、
不安要素はいろいろあるけれど、
自分のやりたいことにチャレンジする爽快さ!
頑張れアキコ!
カフェには”しまちゃん”という力強い相棒が現れます。
外見が「プロゴルファーの不動裕理選手」に似ていて、
実際に体育会系の彼女の言動はとても気持ちがいい。
こういう登場人物がいる小説は、読んでいて楽しいです。
そしてなによりネコの「たろさん」!
飲食店の2階部分でネコを飼うからには、と、
アキコは衛生にはとても気をつけます。
だからこそ「たろさん」は甘えてもいい時間は
めいっぱいアキコに甘えるのです。
その描写がもう、ネコを家族に持つ者にはたまらないものがあります。
かわいいぞ~!!
たろさん!!
私もたろさんをモフモフしてみたい。
しかし読んでいて楽しいことばかりではありません。
主人公とほぼ同年代のせいで、
いろいろな心情が手に取るようにわかり、
切ない部分もありました。
でも、人生いろんなことがあるからこそ、
日常を慈しんで生きなくちゃね。
何気ない1日を過ごせることの幸せを感じる一冊。
ドラマも見てみたくなりました。
それにしても「ネコ日和」ってどんなお天気なんでしょうね。
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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