螻蛄(黒川博行)
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ーシリーズ疫病神ー 黒川博行(著) シリーズ疫病神。昨年『破門』で、ついに直木賞受賞した黒川博行の人気シリーズです。
『破門』はBSスカパーで連続ドラマ化されたのでそれをご覧になった方もいらっしゃることでしょう。 シリーズ疫病神の主役は二人。 タメの喧嘩では負けることがなく同業者は容赦なく叩きのめす、大阪 二蝶会のヤクザ 桑原保彦を北村一輝に。 一応カタギ(事情あり)ではあるものの、建設コンサルタントとして現場をサバくためヤクザとも付き合いがある二宮啓之を濱田岳に。 キャスティングした人は天才ですね。 これまで黒川博行の「疫病神シリーズ」を何作も読んでいますがイメージにぴったり! これ以上ぴったりの俳優さんが他に居る気がしません。 言うまでもないことかもしれないけれど”疫病神”は桑原保彦です。 『螻蛄』が新潮社から出版されたのが2009年7月ですから小説の中でおこる事件は『破門』より前の出来事。 主役二人も、ちょっと若い。 そういうことを頭に入れて読み始めました。 私にとって、黒川博行はハズレのない作家。 普段なら、ぐんぐん引き込まれ時にゲラゲラ笑いながら読むのに『螻蛄』はなぜか興が乗らないんです。 うーむ。分厚い本だぞ、こんな調子で最後までたどり着くかな? ある日二宮が事務所に出勤してみると3件のファックスが届いていた。そのうち1件は”疫病神”からのもの。あんな疫病神と付き合っていては命がいくつあっても足りないと無視をしていたら”疫病神”本人が事務所にやってきた。
髪の毛をオールバックにし、縁なしメガネをかけ、黒いピンストライプのスーツにダークグレーのボタンダウンシャツ、ノーネクタイ。一見 クラブのマネージャーに見えなくもないが身のこなし、眼の光から「隠しきれないプロの匂いがある」。 金の匂いに敏感な経済ヤクザの桑原。今回のシノギ(金儲け)は信徒500万人を擁する伝法宗慧教寺が相手だという。宗派の宝である『懐海聖人絵伝』をめぐるスキャンダルに金の匂いを嗅ぎつけたのだ。 生臭坊主、腐敗した刑事、東京のヤクザ、海千山千で美貌の画廊経営者、そして疫病神・桑原と、今度も巻き込まれてしまった二宮。 誰が金満坊主の金を手にするのか?! なぜ気が乗らなかったのかと自己分析すると、「寺社」を中心に生臭い話が展開されるから。
黒川博行はどの作品も綿密に取材をして書くそうです。 だから、登場する生臭坊主、金満坊主たちが妙にリアル。 宗教のトップがヤクザとつるんでいるなんて、いくら小説とはいえ、読んでいて愉快じゃないです。 ましてや、ここまでしっかり描かれていると「ひょっとして本当にこんなことがあるのじゃなの?」と思えてしまいます。 この作品が何も非難を受けず、文庫化までされているのが不思議。 いやいや、現実にはこんなお坊さんはいらっしゃらないから「まぁ、破天荒な小説書かはりますなぁ。 ほほほほほ」と懐深く、容認されているのかしら? もう一つ、大阪、京都、東京、名古屋と舞台がめまぐるしく移り変わり、方向音痴な私としては、置いてけぼりな気分になったのも『螻蛄』を楽しめなかった理由かもしれません。 桑原と二宮の漫才のような会話や美人画廊経営者の存在など部分部分は十分に面白いです。 お時間がたっぷりある時にどうぞ。 それにしても『螻蛄』って難しいタイトルですねぇ。 恥ずかしながら初見では「けら」と読むことができませんでした。 螻蛄
ーシリーズ疫病神ー 黒川博行(著) 新潮文庫(2014) (信者五百万人を擁する伝法宗慧教寺。その宗宝『懐海聖人絵伝』をめぐるスキャンダルに金の匂いを嗅ぎつけた、相性最悪の二人組、自称建設コンサルタントの二宮とイケイケ経済ヤクザの桑原。巨大宗派の蜜に群がる悪党どもは、腐敗刑事、新宿系極道、怪しい画廊の美人経営者。金満坊主から金を分捕るのは誰か。東京まで出張った最凶コンビの命運は? 人気シリーズ「疫病神」第2弾。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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