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関西ウーマンインタビュー(作家)


大西 智子さん(小説家)

登場人物全て自分の分身。自分の身から出るものしか書けない

大西 智子さん
(小説家)
今、作家を目指す人が多いと聞きます。さまざまな新人賞に向けて公募に挑戦される中で、頑張れば小説家になれるという保証はありません。

今回の大西智子さんは、なんと16年に及ぶ公募生活を経てプロデビュー。でもそのデビューまでの大きな壁よりも、生き残っていく壁のほうが大きいと仰います。
スポーツ大好き少女、小説家を目指す
初受賞された作品は野球を題材にされていますが、なぜ野球だったのですか?
大阪女性文芸賞をいただいた「ベースボール・トレーニング」は、社会人野球部に入ったアラサ―の女性と、名門の野球部の男子中学生との交流を描いた物語ですが、実際に私が28歳の頃、女子社会人野球をしていたんです。

練習についていけなくて辞めてしまったんですけどね(笑)。もともと体を動かすことが大好きで、中学時代はバレー部でしたし、野球は見るもの好きでした。
スポーツウーマンだったんですね。やはり読書も好きだったのですか?
本を読むようになったのは高校生の時からです。ずっとスポーツをしていましたから、「本を買って家で読むなんてネクラだ」と思っていたくらい(笑)。その自分が小説を書くようになるなんて全く思っていませんでした。

作家になりたいと思ったのは、高校の現代文の先生がすごくおもしろい授業をする先生で、夏目漱石の「こころ」についての解釈を学んだことがきっかけです。

小説ってこんなおもしろいんだ、普通に読むだけじゃ分からない解釈があるんだと思い、自分も文章を書いてみたくなったんです。そこから、小説を書くことを仕事にできれば・・・とぼんやり思い描くようになりました。
「読む」より「書く」だったんですね。
その頃は、小説というより、自分の悩みや身近なことをテーマにして日記みたいに書いていましたね。

思春期ですから、やっぱりいろんなことに悩んでいて、なんで自分はこんなに生きづらいんだろうとか、どうしてうまく生きられないんだろうとか。対人関係の悩みや、家庭の悩み、誰にも相談できないような悩みを、ただ文章に吐き出すことで癒されていました。

そこから少しずつ、短い小説を書くようになり、大学では文芸部に入部、卒業後はやはり作家になるためには本に触れていたいと思い、6年ほど図書館司書をしていました。
16年に及ぶ公募生活。「絶対小説家になりたい!」
デビューのきっかけは?
デビューできたのは小説宝石新人賞の優秀作に選ばれたことです。16年に及ぶ公募生活を続け、やっとのデビューでした。

しかし大賞ではなく優秀作で、本来ならデビューできなくてもおかしくなかったのですが、編集部と選考委員の先生方の「デビューさせてあげたい」という意向に救われました。
16年に及ぶ公募生活。諦めなかったのはなぜ?
書くことが好きというか、書きたい衝動は抑えられなかったですね。陽の目を見なくても、誰にも読まれなくても、結局、書きたいから書くんです。でも16年の間には、あまり書かないで読むことに徹底していた時期もありました。

結婚するまでは、「絶対小説家になりたい!」と、しがみついていましたが、子どもが生まれたことで、育児に追われ、子どもという新たな目標ができたこともあり、人生これで良いんじゃないかと作家への夢をあきらめかけたこともあります。でも子どもの手が離れて余裕が出てくると、やはり気が付けば書いていましたね。

デビューするまでは継続することでなんとかなったんです。一人で黙々と書いて、公募に出しては落ち、出しては落ちの連続で、何の結果も無く、何の評価も得られないというのは辛いので、同人誌活動をしたり、文学学校に通ったり。それがいい刺激になって、モチベーションを維持し続ける一助となりました。

賞をいただいたのは、子どもが産まれた後に書いた初めての小説だったのですが、読んでくれた同人誌仲間から、「世界を見る目がやさしくなった」と言われました。結婚・出産を経て、作風も変わったんだと思います。そういう意味では、ちょっといい感じに力が抜けたのが結果的によかったのかもしれません。
「小説家」になって悩むこと
小説を書くことが「仕事」となって、「壁」はありましたか?
長らく同人誌で書いていましたから、好きなように何も考えず、自分の不平不満を満たすために小説を書いてきた部分もありましたが、商業誌で書かせてもらうようになると、それではいけないと感じるようになりました。

自分のためだけでなく、読者の心も救ったり癒したりするものでなくてはならない。でもどう書けば良いか分からなくなって、すごく萎縮してしまったんです。

編集者さんに、いきなりプロットを出してくださいと言われても、書いたことないからどう書けばいいか分からない。もっとこうしたほうが良いんじゃないですかと言われても、具体的にどうしろと教えてくれないので、そこは自分で考えないといけない。

そこから慌てて小説の作法本を読みだしたんです。そういう勉強はちゃんとデビュー前にしておくべきだったなと、ひしひしと感じました。

今や多くの作家がデビューし、多くが消えていくことを考えると悩ましいところ。デビューまでも大きな壁でしたが、今後はまたそこから生き残っていくのがさらなる大きな壁だと感じています。
お子さんはまだ小さいですが、執筆の時間をどのように作っているのですか?
小説家の仕事は公私の切り替えが難しい仕事です。いつも小説の構想を考えていますし、読書をするのも仕事でもあり趣味でもあり、明確に分けることができません。

家にいるときでも何をしているときでも、やろうと思えば際限なくできてしまいますから、いつまでも小説のことを考えないで、頭を切り替えるよう心がけています。

就業時間が決まっているわけではありませんから、小説を書くのは週五日、息子が保育園に行っている間だけと自分で決めています。

息子がいると集中して書けないというのもありますが、息子がいるときはひとまず小説のことはおいて、家庭を優先しています。だらだらと書くよりも、1日何時間と決めて書くほうが、逆に効率がいいような気がします。
今後、書いてみたいテーマはありますか?
私はトリックを考えたり、ハラハラするストーリーで飽きさせないといった技巧的なタイプではないので、自分の身から出るものしか書けないと考えているんです。

登場人物すべてが自分の分身。誰しもいろんな矛盾を抱えていると思うので、どん底に落ちても、強くたくましくリカバリーするという、崩壊と再生をテーマにした作風はずっと変わらないと思います。

小説は、読んだからって実際の環境が変わることは無いかもしれないけれど、読んでいる間だけでも楽しい気持ちになったり、なんかちょっと救われた気持ちになったり、癒されたりする。

小説を書く人は、多かれ少なかれ、そういう経験をしているから書いている人も多いと思います。私自身もそういう経験があるから書いているので、読者にとって、生きていくためちょっとしたサプリメントになるような物語を書いていきたいですね。
大西 智子さん
(小説家)
1979年大阪府生まれ。2008年「ベースボール・トレーニング」で大阪女性文芸賞を受賞。2014年「カプセルフィッシュ」で第八回小説宝石新人賞優秀作に選ばれ、2015年同作を含む連作短編集でデビュー。
(取材:2017年3月)

関西ウーマンインタビュー(作家) 記事一覧

  • 「自分の身から出るものしか書けない」16年の公募生活を経て作家デビュー。女性心理の物語を綴る大西さん
  • 「ミステリーの醍醐味は気持ちよく謎が解ける楽しさ」本格ミステリーで作家デビューを果たした川辺さん
  • 「小説を描くこととは自分の心の中を整理する作業」小説家として物語に自分の想いを投影する蓮見さん

 


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