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関西ウーマンインタビュー(作家)


川辺 純可さん(ミステリー作家)

 
川辺 純可さん(ミステリー作家)
広島県呉市生まれ。日本女子大学文学部社会福祉学科卒。2005年ハーレクイン社(現ハーパーコリンズジャパン)が実施する第1回「ショート・ラブストーリー・コンテスト」の優秀賞受賞。2013年「麝香草荘(タイムそう)のユディト」で、第6回「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の優秀作に選ばれる。2014年、同作を『焼け跡のユディトへ』と改題し単行本デビュー。本格ミステリ作家クラブ会員。
http://himalayancat.blog.fc2.com/
「いつかきっと作家になれる」読書好き少女時代から、一途に小説家を目指してこられた川辺さん。プロを目指す道のりの途中、思わぬ壁に悩んだ日々がありました。「長い助走」を経て、大好きな本格ミステリーでデビューを果たすも、職業作家として気づかされることがたくさんあったそうです。
いつか作家デビューできる!
幼少時代からすごい読書家だったようですが、やっぱりミステリーが好きだったのですか?
近所に図書館があったこともあって、物心ついたときにはもう活字中毒だったと思います。8歳の時、江戸川乱歩の少年探偵団に出会い、小学校の高学年くらいには、アガサ・クリスティや、エラリー・クィーンの「Xの悲劇」とか読んでいましたね。特に横溝正史には、本当に”はまった”時期があって、少年少女向けの作品から短編小説まで全部読みました。中でも「八つ墓村」や「悪魔の手鞠歌」は大好きでした(笑)。
小説家になりたいと思うようになったのはいつ頃ですか?
小学生の頃、「将来何になりたいですか?」と聞かれると、「小説家」と答えていました。その頃からお話を書くことが好きで、学生時代からプロをめざして何度も賞に応募していましたが、二次選考と最終選考の間を行ったり来たり。でもなぜか「いつかデビューできる」という気持ちは消えずにずっと残っていましたね。
プロになるまでの壁
デビューされるまでにどんな「壁」がありましたか?
大学卒業後、学習塾で働きながら小説を書いていました。結婚後も、まずは若いうちに出産して、子育てをしながら小説を書いていこうと考えていたんです。ところがなかなか子どもができず、不妊治療を始めましたが、身体的にも精神的にも大変で。もちろん報われる保証など無いですから、日に日に気持ちばかり荒んでいくんです。体外受精を進められた頃、ちょうど夫が海外勤務になったので、内心ほっとしました。まだ年齢的に余裕はありましたが、とりあえず治療をやめて海外勤務についていきました。

出産に執着していたときも、慣れない海外生活に四苦八苦していたときも、気持ちのよりどころとして、ずっとミステリーは書いていましたが、次第に自己満足的になって、賞金額の多い難関の賞をわざと選び、逃げ道を作っていた気がします。

心のどこかに「不妊治療をやめたら子どもができた」という体験談がくすぶって、やることすべて中途半端になっていたんですね。だらだらすごしているうちに、ある日ようやく「このままでは何も残らない」ことに気付いて愕然としたんです。それからですね。プロになるため、自分にあう賞を検討し、ハウツー本などで勉強を始めました。帰国してからは小説家になるための講座にも通いました。
真剣にプロを目指そうと思われた、その具体的なきっかけとは?
日本ミステリー文学大賞新人賞の最終候補になったことです。それまで、どこか雲の上の話のように思えていましたが、最終候補に残って評をもらえるということは、ちょっと手が届くとこまで来たのかもしれないと感じました。よし本気になってやってみよう、やり直す猶予はじゅうぶんある。後悔する時間ももったいないので、長い助走だったと割り切って、ただ前を見ようと思ったんです。
そこから書く内容は変わりましたか?
最終候補に残ったのは、2作目となる『時限人形』のもとになっている話ですが、当初「なんか本物じゃない感じがする」と評されたんです。つまり、謎の組み立てがフェアじゃないと。本格ミステリーには、作法というか、「きまりごと」があって、内容を先に全部揃えてから読者に考えてもらうという、いわばパズル的な面白さがあるんですね。それをわざと隠したり、分からなくするのはフェアじゃない。

最後まで読んだとき、こことここに伏線があって、だからこうなんだ、と読者に納得してもらえた上で勝負する。やはりミステリーはエンタメですから、読者に楽しんでもらうことが一番重要なんだと気づかされました。

川辺純可さんの著書
左:ショート・ラブストーリー・コンテストの優秀賞『シーウィンド』が収録されている短編集
中:2作目『時限人形』/右:デビュー作『焼け跡のユディトへ』

 
「謎」を大切に書いていきたい
これからも本格ミステリーを主軸に?
そうですね。今や、トリックもプロットもずいぶん出尽くして、ミステリーを書くのは本当に大変です。特に本格ミステリーは、絶滅の危機に瀕している、という方もおられるほどです。

私のデビューのきっかけになった「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」は、島田荘司先生が、西洋で生まれ日本で育った「ホンカク」を再建し、また新たに世界へ広めていこうと、設けられた賞のひとつです。

「本格ミステリーは、ポーのころからずっと、その時代の先端技術や思想とともにあって、常に新しいものを取り入れてきた」と、島田先生は仰っています。だから私も既成の枠に囚われず、いろんなジャンルに挑戦し、視野を広げていきたいと考えています。今後も『楽しい物語』というスタンスは守りつつ、やはり「謎」を大切に、書いていきたいですね。
なぜ「謎」なのでしょう?
うーん(笑)。やっぱり世の中は「謎」でできていると思いますし、それが解けたときのカタルシスみたいなものを求めていきたいと思っています。昔からミステリーを読んでいる時の、謎に惹きこまれていく感動が大好きでしたし、「そうだったのか!」と人を驚かせたい。ミステリーというと、人の心のドロドロを描いたものも面白いですが、私はどちらかというと虚構の美しい世界が好きなので、気持ちよく謎が解けて、最後はすっきりするものを書きたいんです。
職業作家になられて、変わったことはありますか?
デビュー前は自分のために書いていたようなところがありましたね。長くても重くても、じっくり読む本ばかり読んでいましたから、自分が書くのもそういうところがあったように思います。なんか、自分についてきてくれる人が読んでくれれば良い、みたいな。

でも、本というものは人に読んでもらってこそ。最近はすっきり読めるものが世の中で受け入れられていますから、最近は読者のために書くという気持ちが強くなりました。

以前は古典ばかり読んでいましたが、今は売れている小説や話題の本も読むようになって、ああ、こんなふうにたたみこんで主人公を痛めつけるんだとか(笑)、読者を惹きつけるテクニックみたいなものを探してみたり。それがまたすごく楽しいです。
 
小説家として表現したいこと
今後小説で描きたいことはありますか?
今、時代ものを考えていますが、時間だけじゃなくて場所や国、つまり今の自分とは違う立場の人々の暮らしを描いてみたいと思っています。昔の人も外国の人も、今の自分たちと同じように、美しいものに感動するし、楽しいことも好き。嬉しいとか哀しいという感覚もまた、同じように持っているんですよね。

私は海外赴任生活をしている時、現地の方たちにすごく親切にしていただいたんです。韓国にも住んでいたことがありますが、政治的にはいろんな問題があるけれど、韓国の人たちは優しくて、いろんなことをたくさん教えてもらって、とても楽しく過ごしました。

最近はネットの発達で、同じ考えの人同士で固まってしまいがちですが、違うからと心から締め出さずに、もう少し歩み寄れたり、凝り固まらずにいろいろ話してみたりしようよ、ということを物語の中で伝えていけたらいいなと考えています。
最後に、小説家になるための秘訣ってありますか?
私もまだアドバイスが欲しい段階ですが、反面教師としてならいくつかあります。まず傷つくことを恐れず、積極的に第三者のアドバイスをもらうことが文章上達の近道ですね。もうちょっと上手になってからと思っていると、なかなか前へは進めません。

小説家としてデビューするためには、やはり賞をねらうことが多いと思いますが、要はあきらめないこと。自分の欠点を知った上で、強みを生かせる賞はどこかリサーチして、作戦を練るのがよいと思います。

そして、落選や酷評をもらっても、しっかり反省した後はすぐ気持ちを切り替え、落ち込みを引きずらないことです。小説を書くのは孤独で不安な作業ですし、「これはおもしろい、名作だ」「私って天才」という大それた自信がなくては、とても続きませんから(笑)
ありがとうございました。
取材:2017年2月

関西ウーマンインタビュー(作家) 記事一覧

  • 「自分の身から出るものしか書けない」16年の公募生活を経て作家デビュー。女性心理の物語を綴る大西さん
  • 「ミステリーの醍醐味は気持ちよく謎が解ける楽しさ」本格ミステリーで作家デビューを果たした川辺さん
  • 「小説を描くこととは自分の心の中を整理する作業」小説家として物語に自分の想いを投影する蓮見さん

 


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