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やばい源氏物語(大塚ひかり)

確かにやばい

やばい源氏物語
大塚 ひかり(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。

その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

2024月3月6日放送の番組では、大塚ひかりさんの『やばい源氏物語』をご紹介しました。

今年(2024年)のNHK大河ドラマ『光る君へ』は『源氏物語』を書いた紫式部が主人公。

ということで『源氏物語』に脚光があたり、ゆかりの地を訪れる観光客も激増しているそうですね。

大塚ひかりさんの『やばい源氏物語』は、さまざまな観点から『源氏物語』のやばさを紹介しています。

言わずもがな、ですが、「やばい」は昭和時代の「やばい」ではなく、今ふうの、プラスの意味の「やばい」です。

目次をご紹介します。
第1章 設定がやばい
第2章 ブスがやばい
第3章 モデルがやばい
第4章 舞台がやばい
第5章 生き霊がやばい
第6章 嫉妬がやばい
第7章 病気がやばい
第8章 貧乏がやばい
第9章 リアリティがやばい
第10章 恋愛観がやばい
第11章 年上がやばい
第12章 ヘンタイがやばい
第13章 身代わりがやばい
第14章 毒親がやばい
第15章 少子がやばい
第16章 ラストがやばい
第17章 読者がやばい
(大塚ひかりさん『やばい源氏物語』目次より引用)
大塚さんは『源氏物語』の隅から隅まで、いい意味で重箱の隅をつつくようにほじくり、やばいポイントを紹介しておられます。

と言っても、おふざけではなく、真面目に分析がなされていて、タイトルのキャッチーさからは想像もできないくらい、中身は真面目なのでした。

大塚さんによると、紫式部はリアリティを重視して『源氏物語』を執筆したようなのです。

やんごとない生まれの美男子があちこちで恋愛をしている様子を描いただけのラブロマンスではなく、社会問題を取り入れ、人間の業を描き、時の権力者までもが読まずにはいられないような小説を目指していたのです。

というのも、紫式部は『源氏物語』を、自己実現のためだけに書いていたわけではないから。

紫式部は中宮彰子にお仕えしていました。

当時、帝には何人もの女性がおり、誰が正式なお后になるのか、お世継ぎの男子を産むのかが大きな問題でした。

そのためには容貌のみならず、知性などにも磨きをかけ、帝のご寵愛を受けなければなりません。お仕えする女御たちは一種のサロンを形成し、中宮を盛り立てていたわけです。

『源氏物語』はその一助となっていたわけですから、男性の読者からも一目置かれる作品でなければならず、単なる夢物語ではない、リアルな物語に編み上げていったのでした。

私は、与謝野晶子さんと田辺聖子さんによる『源氏物語』『新・源氏物語』を流し読みした程度の知識しかありませんが、それでも千年前に書かれたとは思えない、今にも通じる人間ドラマを感じ、紫式部の凄さに感じ入りました。

例えば葵上と六条御息所の牛車争いの場面など、祭りのパレードの華々しさ、そこに正妻と愛人が鉢合わせ、本人同士は不本意ながら争いになり、年上の愛人が公衆の面前ではずかしめられる、なんてすごい設定から生じた恨みからちょっとオカルト的な展開に至るという、流れの派手さ。一方で、生き霊になるほどの怨念と、それを恥じる知性も描かれていて、

紫式部は現代に生まれていたら素晴らしい作家にも、心理学者にもなっていただろうなと思わずにはいられません。

また、深刻な場面がある一方でクスッと笑いたくなるような登場人物が現れるのも面白いところで「第11章 年上がやばい」で分析される源典侍などはその代表ではないかと思います。

源典侍はかなり年季の入った女官。

長い年月宮中で生きてきたのだから、海千山千の女官です。きっとキレものに違いありません。その一方で「色好み」として有名で、いろんな男性と浮き名を流してきました。

光源氏も、頭中将も「すごいおばさんがいるらしいゾ」という興味本位で源典侍と男女の関係になるのですが、私が現代語訳の『源氏物語』を読んだのは20代の時だったので、このあたりにはほとんど興味が湧かず、深く考えずに読み飛ばしていました。

ところがですね、大塚ひかりさんの『やばい源氏物語』で初めて知ったのですが、源典侍って57、58歳だったというのです。びっくりしました。てっきり30代から40代だとばかり思っていました。今の私とほぼ同年代ではないですか。

しかもお相手となった光源氏と頭中将の年齢が19歳と二十歳そこそこというのですから2度びっくり。

今に置き換えて考えたら鈴木福くん(20歳)と男女の仲になるってこと?

私には無理、無理、無理です!!

もうちょっと年齢を上げて、私が大好きな俳優さんである中川大志くん(25歳)、山田裕貴くん(33歳)が相手でも、無理ですわ。

若くて美しい彼らに対して、自分のこのタルタルのお腹とか二の腕、ぜーったいに見せられない。恥ずかしい以前に申し訳なさすぎて。

平安時代の57歳 源典侍、すごいわ。本当にやばい女官だわ。

大塚ひかりさんの詳細な「やばい」ポイント解説と出会ってしまったことで、私は俄然『源氏物語』を再読したくなりましたよ。

と言っても原本を読むのはしんどいので、次は角田光代さんの訳で読んでみようかしら。
stand.fm
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やばい源氏物語
大塚 ひかり(著)
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『源氏物語』は、やばかったー!!日本古典文学の最高峰とも言われる『源氏物語』。千年以上前に紫式部と呼ばれた女性が書いたこの物語は、当時の人々からすると“異端”と言えるほど、革命的なものだったー。 出典:楽天
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