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ママはかいぞく(カリーヌ・シュリュグ )

病と闘うママのお話

ママはかいぞく
カリーヌ・シュリュグ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、フランスの絵本『ママはかいぞく』
主人公の「ぼく」は4歳か5歳くらいの男の子。ママは「かいぞく」で、宝の島を探している。

ママが乗る船の名前は「カニなんてへっちゃら号」。木曜日の朝になると、ママは海に出て行ってしまい、パパとぼくはお留守番だ。

海から帰ってきたママは顔色が悪い。仲間と一緒に大きな海に立ち向かい、船酔いしたらしい……
(カリーヌ・シュリュグさん『ママはかいぞく』の出だしを私なりに紹介しました。)
このお話を文字通り受け取れば、海賊のママが、傷を受けながらも荒れ海に立ち向かい、最後に宝の島を見つけるお話と読むことができます。

でも「カニなんてへっちゃら号」なんて、海賊船にしては妙な名前です。

大人ならここで、気がつくと思います。

英語やフランス語のカニ「cancer」「crabe」が、病名でもあることを。

この絵本の作者カリーヌ・シュリュグさんには四人のお子さんがいます。

2016年の夏、カリーヌさんが乳がんを患った時、一番下のお子さんはまだ4歳半でした。

カリーヌさんは、まだ幼いからといって、お子さんを事実から遠ざけようとは思いませんでした。

とはいえ、それまでにあった「がん」について描かれた絵本は、深刻すぎるか、現実離れしたファンタスティックなものかの両極端。

そこで、カリーヌさんは医療チームや旦那様と話し合い、がん治療のいろいろな段階をきちんと説明しようと考えます。

そして、手術痕や、抗がん剤の副作用による吐き気、髪の毛が抜けることなどを、男の子が大好きな「海賊」のミッションになぞらえた絵本を作ったのでした。

一例を挙げると、頭髪が抜けた後、バンダナを巻くのは海賊のファッションである、といった具合に。

もしかしたら日本だったら、4歳半のお子さんには病気のことを説明しないかもしれません。

でも本当は、家族の大切なことを、理解できる形で教えてあげることは必要なことかもしれません。

男の子が好きなお話として作られた絵本ではありますが、実際に、病と闘い寛解を勝ち取ることは、海賊がいろいろな苦難を乗り越えた末に宝島を見つけることと似ているかもしれません。

芥川賞作家 又吉直樹さんはこの絵本を「親子で読みたい本」だとお勧めしておられるとか。私も全く同感です。
ママはかいぞく
カリーヌ・シュリュグ(著)
光文社
ぼくのママはかいぞくなんだ。ふねのなまえは“カニなんてへっちゃら”ごう。もうなんかげつもまえからママはたからのしまをめざして、かいぞくなかまとそのふねでたびをしている。たびからかえってくると、ママはいつもとてもつかれているみたい。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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