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小さいコトが気になります(益田ミリ)

普通の日常がおもしろい

小さいコトが気になります
益田ミリ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、益田ミリさんの『小さいコトが気になります』。

イラストレーターであり、漫画家、エッセイストでもある益田ミリさんが、何気ない日常生活の中、どうしてだか気になること、ついつい確認してしまうことを文章や漫画で綴ったエッセイ集です。

「ポテトサラダの確認」から始まって、「誕生日の確認」まで、収録されているエッセイには全て「○○の確認」というタイトルがつけられています。

益田さんの気になるコトは多岐に渡ります。

例えば、アイスクリームボックス。

益田さんはコンビニエンスストアに立ち寄ると、買う気もないのに、必ずアイスクリームボックスを覗き込んでしまうのだそう。

わかります。

新開発のアイスをチェックするのはウキウキするし、逆に昔からある定番アイスがボックスに収まっているのを確認すると、なぜかホッとしたりします。

新しい手帳を買ったら、自分の誕生日が何曜日なのか確認することや、送信メールをろくに「確認せず」に送ってしまって、後で読み返して後悔したりすることは、多くの人がやっていることではないかしら。

私が最も楽しく読んだのは「宝塚の確認」です。

益田ミリさんは宝塚ファンではないのだけれど、宝塚ファンのお友達を頼って、年に何回か東京宝塚劇場で観劇しておられるのですって。

チケットが取りにくい東宝で年に数回も観劇できるなんて、益田さんはなんてラッキーな人なの?!まずはそんなところに驚きました。

益田さんのエッセイを読むと、これまで何度か訪れた東京宝塚劇場の様子が脳裏に浮かんできます。

広い敷地に余裕を持って建てられている宝塚大劇場に比べて、地代の高い東京・有楽町に建つ東京宝塚劇場は、ビル形式。

住宅に例えるのは変だけど、一戸建て住宅と、マンションくらい趣に差があります。

何につけても東宝はちょっと狭いのよね。

益田さんが、そんな東宝で何を「確認」したかというと、ロビーでコンビニのおにぎりやお菓子を食べている人が意外に多いこと、ですって。

益田さんにしてみると観劇は非日常であり、ちょっと気負った晴れの日だから、食事はレストランやおしゃれなカフェでと思っているのに、なんと気負いがないことか、と感心するんだそうです。

ふーん。

私もコンビニで買ったおにぎりやパンを劇場で食べたことは何度もあります。

開演時間ギリギリに飛び込むような時、何も食べていないと劇中お腹が鳴りそうで怖いから、数分あれば食べられるものをロビーでささっと食べるんです。

それを他の人に「確認」されているかもしれないなんて思ってもいませんでしたわ。

もう一つ益田さんが「確認」したのは、最近宝塚で定番になっている「公演スイーツ」。

これは宝塚大劇場にもあるのですが、公演の内容やタイトルに合わせたネーミングのスイーツが期間限定で提供されるのです。

例えば、『エリザベート』の時は、白玉の上にチョコレートプリンやアンズジャムが乗ったスイーツで、名前は「最後のダンゴは俺のもの♪」。(トップスター演じるトート閣下が歌う最後のダンスは俺のもののパロディ)

宝塚ファンには毎回のことで新鮮味があまりないけれど、ファンでない益田さんには特に面白いのかもしれません。

いつもは素通りしていたけれど、次回観劇の時には公演スイーツを食べようと思いました。

人それぞれ感性が違うので、益田さんの「確認」ポイントに全て同調できるとは限りませんが、益田さんがちょっと気になって「確認」しておられるのはどれも人生を左右するような大きなことではありません。

だから内容に同意するにせよ、違和感を覚えるにせよ、気軽に読み進められると思います。

難しいことを考えたくない時にオススメの一冊です。
小さいコトが気になります
益田ミリ(著)
筑摩書房
人生にほぼ必要のない確認のために。人ん家の植木鉢、モンブランの中身、エンドロール…どーでもいいけど、どーしても気になること、ありませんか? 出典:楽天
profile
池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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