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もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた(NHK)

作家の日常と猫の可愛さの両方が楽しめる一冊

もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた
NHK ネコメンタリー 猫も、杓子も。
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、『もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた』

この本は、NHK BSプレミアム『ネコメンタリー 猫も杓子も』を一冊にまとめたものだそうです。

残念なことに私は一度も見たことがないのですが、猫と作家の日々を描く異色ドキュメント・映像エッセイなのだとか。

これまでのご出演者の中から、角田光代さん、吉田修一さん、村山由佳さん、柚月裕子さん、保坂和志さん、そして養老孟司さんちの猫ちゃんが紹介されています。

それぞれのお家の猫ちゃんの性格や、飼うことになった経緯、そして猫によって生活がどのように変わったか、などをそれぞれの作家さんが語っています。

それぞれ作風が違うように、猫を語る口調はバラバラですが、猫に対する思いには共通するものがあるように感じました。

「猫がいるおかげで、人間らしい生活をキープできている」、「どんな状態の自分も受け入れてくれる」など、我が家にも猫がいるのでお気持ちがわかる気がします。

そして猫に関してだけでなく、執筆に対する心構えまで話が及んでいて、読書好きにはたまらないお話が満載でした。

六人の作家さんの中で、私は最初に紹介された角田光代さんの章に最も心を動かされました。

角田さんちの猫 トトは漫画家 西原理恵子さんちの猫の子ども。飲み会で初めてお会いした西原さんが唐突に「猫いる?」と。

初対面の人にそんなことを言う西原さんも西原さんだけど、「欲しいです」と簡単に答えた角田さんも面白い人ですね。しかもその時点で角田さんは猫を飼った経験がゼロだったのに。

初めて猫を飼って以来、角田さんは全く別のもの(例えば雑巾)が猫に見えたりするようになったそう。猫が生活の一部になったからでしょうね。

そして、最も変わったのはご自分の気持ちの逃げ場ができたこと。

何かすごく辛い思いをしたり、どうして良いか分からない時でも、「とりあえずご飯あげなきゃ」と、思えることが救いになると。

わかる気がします。

つらいことだけにじーっと向き合っていては息が苦しくなるけれど、世話をしてあげなくてはいけない対象がいると、そこで別のことを考えられますものね。

もちろん必ずしも猫である必要はないのだけれど、犬や他の動物と違って、付かず離れず、でも感情を寄せてくる猫は、内省的な部分がある執筆には向いているのかもしれません。

角田光代さんが小説を書くにあたって大切にしていることにも感銘を受けました。

それは、自分なりのルール作りをしっかりすること。

小説はフィクションだけれど、作り事だからと言って、その場その場の安易なことを書いていてはいけないとおっしゃるのです。

それは角田さんの言葉では「ズルをしない」。

自分が小説を進める上で「話を進めるのに楽だから」と、ご都合主義な展開をしてはダメ。物語の中の必然性に従って人物やストーリーを動かす、ということです。

深い!

それぞれの作家さんが章末にエッセイか短編小説を書き下ろしておられますが、角田さんが書かれた短編『任務十八年』には泣かされました。

18年生きた猫の語りで書かれた短編です。うっかり電車の中で読んでしまい、涙がこぼれそうで大変でした。

作家さんたちへのインタビュー記事とともに掲載されているそれぞれの愛猫のフルカラー写真がまた、可愛らしいのです。

文章を読まずに猫の写真集だと思ってご覧になっても満足できるはず。

作家さんの日常を垣間見ることと、猫の可愛さの両方が楽しめる一冊でした。
もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた
NHK ネコメンタリー 猫も、杓子も。
河出書房新社
6人の人気作家と個性あふれる愛猫たちの日常。125点の写真+インタビュー+番組書き下ろし作品収録!! 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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