ねこのおうち( 柳美里)
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![]() 泣きました。大いに泣きました ねこのおうち
柳美里(著) ねこ好きさんなら、涙腺決壊するに違いない本を読んでしまいました。柳美里さんの『ねこのおうち』。
公園のお向かいの家の猫ニーコはおばあさんと二人暮らし。
おばあさんにいい子いい子してもらって、幸せいっぱいの毎日だが、ニーコはもともと捨て猫だった。 ニーコのお母さんはキャットショーに出るような由緒正しいチンチラだったが、飼い主さんの不注意でたった一度家を飛び出した時に身ごもってしまった。 生まれた子猫の中で最もチンチラっぽくなかったニーコだけが公園に捨てられてしまったのだ。まだ乳飲み子だったのに。 それを見つけてくれたのが優しいおばあさんだった。 しかし幸せな日々に終わりが来る。 おばあさんが「ニーコや」と言ってくれなくなった。 認知症になったおばあさんはどこかへ連れて行かれ、ニーコはひとりぼっちに。 そして家は取り壊され、野良猫になったニーコは公園に住むことに。 やがて頼りになる雄猫と出会い夫婦となり、6匹の子猫を産んだ。 しかし、世の中には猫が嫌いな人もいる。 ある日、夫(猫)が帰ってこなかった。保健所の職員に見つかったのかもしれない。 そして一人で子育てをすることになったニーコは空腹に耐えかね、仕掛けられた毒団子を食べてしまい、苦しみながら死んでしまう。 残された6匹の子猫達に「おうち」は見つかるのか? (柳美里さん『ねこのおうち』の第一話を私なりに紹介しました。第一話に関してはほぼネタバレですが、どうしても必要なのであえてご紹介しています) 泣きました。
大いに泣きました。 そして怒りが湧き上がってきましたよ。 キャットショーがなんぼのもんじゃい! 子猫を産んで体型が変わったら入賞できない、だ? ふざけるんじゃねぇ! テメエの猫はキャットショーで優勝するためだけのものなのか?! 命をなんだと思ってやがる! 生まれてきた子猫の命を粗末にしたテメエの行く末をとくと見せてもらうぜ!! と、浅田次郎先生の『プリズンホテル』か『きんぴか』の登場人物のごとく、吠えてしまいましたわ。 現実世界にも犬や猫を一旦飼っておきながら、捨てる人がいっぱいいます。 我が家に迎え入れたシュヴァルツ・権三も保護犬でした。 4匹兄弟で生まれてきて、生後間もなく全員保健所に連れて行かれたんですよ。 どういう事情かは知りませんが、飼い主さん自らが連れてきたそうです。(だから誕生日もわかっている) そのうち愛想が良かった2匹は保健所主催の譲渡会で「おうち」が見つかりました。 しかし、ビビリで人見知りな残り2匹はずっと保健所に。 殺処分の期限ギリギリに保護施設に引き取られ、その後「おうち」が見つかりました。その片割れがシュヴァルツ・権三です。 「死」に直面する毎日だったんでしょう。 最初は、知らない人が通りすがるだけで硬直し、お漏らしするようなワンコでした。 人間を心の底から怖がっていたのです。 その子を引き取った「おうち」としては、生まれてきた子猫を公園に捨てるヤツが許せない!! 加えて許せないのは、見た目が高級品種に見えない子だけを捨てた点。 二重三重に許せん!! 涙をぬぐいつつ、続きを読みました。 ニーコが産んだ6匹の子猫たちを拾った人には、それぞれの悩みがありました。 しかし、子猫を拾ったことで、少しずつ状況が変わっていくのです。 弱い生き物を助けたつもりが、その子に自分が救われるのですよ。 これも、生き物を飼っておられる方なら、わかってくださるのではないですか? 4つの連作短編を読み終わると、最初と最後が繋がります。 そして、もう一度涙がポロリ。 良かったね「ニーコ」。 この小説の中で、野良猫に餌をやることを反対されたおばあさんの思いに激しく同意しました。その部分を引用させていただきます。 どのねこも、人になついているということは、初めからノラだったわけではないのです。元は、誰かの飼いねこだったのです。
罰を受けるべきは、ねこを捨てた飼い主なのに、何故、捨てられたねこが罰せられなければならないのでしょう? (柳美里さん『ねこのおうち』 P22より引用) これぞ正論。
【追記】 私はノラ猫に餌をあげることを無条件に支持しているわけではありません。我が家では、そういう子は連れ帰って、ウチの子にしています。 ねこのおうち
柳美里(著) 河出書房新社 生まれてすぐに「ひかり公園」に捨てられたニーコ。幸運にもおばあさんに助けられ幸せな日々を送っていました。しかし三度目の春、おばあさんとの別れは突然やってきます。ふたたび公園に戻ったニーコは六匹の子ねこを産みました。そして…。いま、子ねこと、彼らを家族に迎えた人々が奏でる命の物語が幕を開けます。生きることの哀しみと煌めきに充ちた、猫小説の新たな代表作の誕生! 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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