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聖の青春(大崎善生)

聖の青春
大崎善生(著)
出版社: 講談社(2002)【内容情報】(「BOOK」データベースより)重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作。(出典:楽天
私が「時は金なり」という言葉を認識したのは
小学校五年生の時でした。
担任の先生がおっしゃったのです。

「『時は金なり』の”金”を
"銭"、"Money"だと思っている人が多いですが、それは違います。
金メダルの"金"、"Gold"のことです。
同じ時間は二度とない。
だから時間は金メダルみたいに貴重なもの、
という意味なんですよ」
と。

この言葉は11歳の私には大きなインパクトがありました。
他のことは全て忘れても、
先生のこの言葉は今でも思い出せます。

そんな貴重なものであるはずの時間なのに、
ついつい無駄に、漫然と過ごしてしまうことはありませんか?
私はしょっちゅうです。

あとになって
「ああ、あの時間に別のことをしていればナァ」と
何度思ったことでしょう。

「人間の運命はわからない。明日、事故で命を終えるかもしれない」と
理屈ではわかっていても、
真に身につまされていないから、
そんな無駄を自分に許してしまうのでしょう。

棋士 村山聖(さとし)さんは将来を期待されながら
早逝してしまいました。
まだ二十九歳で。

***
東に天才 羽生善治がいれば、
西に怪童 村山聖がいる、と言われるほど、
将棋界で傑出した存在だった村山聖。
昭和44年、広島で誕生した聖は、
幼い頃にネフローゼを発症した。
まだ友達と外で遊びたい盛りに、
真っ白な病室の中一人で過ごす聖はある日、
将棋の本と出合う。
以来、将棋の面白さにとりつかれ、
様々な本をむさぼり読んで研究する。
そして、本当の盤を前にしたとき、
子どもはもちろん、
アマチュアでは大人でさえ聖の敵ではなかった。

ネフローゼにより、
いつ体調を崩すかわからない聖にとって、
将棋は喜びであり、生きる希望となった。
そして聖は誓う。
もっともっと強くなって、いつか谷川浩司を倒し、
「名人」になるのだと。

中原誠、米長邦雄、谷川浩司、羽生善治…
将棋に興味がない人でも
名前と顔は知っているであろう将棋界のスターと
同じ時代を生き、若くして散った村山聖の青春…。
***

私は将棋を全く知りません
だからこの本の所々に挟まれた棋譜や、
巻末に掲載された戦譜を見ても全くチンプンカンプン。

そういえば、昔、JR大阪駅の北口にでっかい将棋盤があって、
米長邦雄さん監修の将棋問題が掲載されていましたっけ。
大関将棋道場でしたっけ?
こんなことなら あれをもっと理解しておけばよかった…。

わからないのは棋譜だけではありません。
文章表現でもピンとこないことはいっぱいありました。

「将棋は前期の順位戦につづいて谷川が四間に飛車を振った。
対する村山は居飛車穴熊の最強の布陣で迎え撃った。」
(大崎善生『聖の青春』講談社文庫 P316より引用)

穴熊って何?!
将棋盤に穴熊が????
きっと将棋がお好きな方は失笑されていることでしょう。
ともかくわからないことだらけ。
ところが将棋について何もわからなくても
この本を読む上では何の支障もないのです。

自分には時間がないのだと、
もがき苦しみながら夢を追った村山聖さんの短い生涯は、
どんな立場の人でも胸を打たれずにはいられないでしょう。

聖さんのお父様・村上伸一さんは、
「『時は金なり』という諺がありますが
まさしく『時は命なり』と痛切に感じました。」
とおっしゃっています。
(巻末『聖のこと』より引用)

私も、与えられた時間を大切にしなくては。

余談ですが、村山聖さんが大阪在住のころの描写、
例えばシンフォニーホールの前の小さな公園でのことや、
福島駅近くの定食屋さんでのことは、
よく知っている場所だけに、
眼に浮かぶようでした。

この作品はこの秋(2016年)、
松山ケンイチさん主演で映画化されるそう。
必ず見るつもりです。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。
「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
『私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。』⇒購入サイトはこちらAmazonでも購入できます


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