福猫屋 お佐和のねこだすけ(三國青葉)
時代小説ではあるものの身近な問題 福猫屋
お佐和のねこだすけ 三國 青葉(著) 日本にいつ頃から猫が存在したのか。
一説によると、奈良時代、日本に仏教が伝えられた際、経典をネズミから守るために輸入(?)されたと伝えられています。 平安時代には現代のように愛玩動物として飼われるようにもなりましたが、猫の総数が少ないので、ペットとして猫を飼えるのはやんごとなき人たちだけだったようです。 猫が庶民の生活に溶け込んだのは江戸時代。浮世絵にも猫が描かれるようになり、ちょとした猫ブームが起こっていました。 三國青葉さんの『福猫屋 お佐和のねこだすけ』は、そんな江戸時代を舞台にした小説です。 お佐和は35歳。15歳年上の夫 松五郎には18年連れ添ってきた。
松五郎は江戸両国の飾り職人だ。二人の間に子どもはいないが、8人いる弟子のうちの一人をいずれは養子にする心づもりだった。 しかし、ある朝松五郎はいつまで経っても起きてこなかった。おかしいと思い様子を見に行ってみると松五郎は既に亡くなっていた。医師によると、松五郎は心の臓に問題があって急死したのだろうとのこと。 あまりに突然で、お佐和は状況を受け入れきれない。それでもなんとか弟子たちを他の職人に入門させてもらえホッとした。とはいえ一人取り残されたように感じて、お佐和は涙に暮れるばかりだった。 そんな時、お佐和のもとに1匹の野良猫が迷い込んできた。しかもその猫はお腹が大きく、出産も近いように見える。お佐和はその猫を家に招き入れ、「福」と名付けた。そして福と、福が生んだ子猫たちの面倒をみているうちに、お佐和は立ち直っていく。 いや、立ち直るだけではなく、猫ショップを思いつくのだった。 (三國青葉さんの『福猫屋 お佐和のねこだすけ』の出だしを私なりにご紹介しました) 生きていると、いろいろな人との別れ、死別を経験します。
私もこれまで何度も告別式に参列してきましたから、生き死にが年齢順ではないこと、残された人たちが心の準備ができないようなお別れがあることも知っています。 その中には、この小説の松五郎のように旦那さんが急死し、「どうして気がついてあげられなかったのだろう」「私が日頃からもっと気をつけていればこんなことにならなかったのではないか」と、自分を責めておられる奥様もいらっしゃいました。 悲しみの中にいると、他のことが考えられません。何度も同じことを考えては悔いて、涙、涙…。それはおそらく時代を問わないことではないでしょうか。 そんな時に、自分しか助けてあげられない小さい命が目の前に現れたら? 野良猫と、生まれたばかりの子猫たちを救ったように見えて、反対にお佐和が猫たちに救われたのではないかと思います。 お佐和は猫の里親探しをしながら、猫に関する小物を作って販売することを思い付きます。江戸時代のペットショップと言ってもいい「福猫屋」を開業したお佐和が直面するのは、捨て猫、多頭飼いの崩壊、虐待など、現代でも問題になっていること。時代小説ではあるものの、非常に現代的で、身近な問題が描かれているといえます。 私もそうですが、猫を飼っておられる方なら一層面白く読める作品だと思いました。 福猫屋
お佐和のねこだすけ 三國 青葉(著) 講談社 夫を亡くして塞ぎ込むお佐和の家に、一匹の野良猫が迷い込む。福と名づけたその猫の面倒を見るうちに心癒やされ、すぐに子猫も生まれてお佐和は立ち直っていく。そんなある日、福に「ネズミ捕り」の依頼が舞い込み、お佐和は猫への恩返しとなる新商売を思いつく。江戸のペット事情を描く、書下ろし時代小説! 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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