愛しき駄文具(きだてたく)
不思議でダメな文房具たち 愛しき駄文具
きだてたく(著) 私は文房具が大好き。だから、ノート術や文房具に関する本は、ほぼ無条件で手に取ってしまいます。
しかし きだてたくさんの『愛しき駄文具』は少し風変わり。「駄文具」ってなんだろう? 数ページ読むうちにわかりました。 駄文具とは、一応文房具のジャンルに入っているものの、実用品という視点から見るといかがなものかと思うもののこと。 つまりダメな文具のことです。 たとえば、シュレッダーが内蔵されたペン、ネックレスになる携帯クレヨンセット、無駄に大きい骸骨型のステープラ、耳かき内蔵のペン、楽器になる定規(教則本付き)など、81もの駄文具が写真とともに紹介されています。 駄文具と文具の分かれ道はどこにあるのでしょう。 たとえば、印鑑とボールペンを合体させたネームペンは駄文具ではないことは、多くのかたに納得いただけると思います。 しかし、同じく多機能を目指しているのに、上に例としてあげた耳かき内蔵ペンときたら、ペン先から繰り出された耳かきが短すぎて、耳の穴に届かないというのだから、なんのために作られたのか意味がわからないではないですか。 まったく駄目なやつだなァ! しかし、この本に掲載されている駄文具たちは、れっきとした商品なのです。値段が付けられて、売られているわけですよ。 そのことが信じられない作品も多々有ります。 その駄目さ加減に呆れつつ、「誰が買うねん!」と突っ込みながら、結局最後まで面白く読めてしまいました。 ああ、ケッサク。 私は文房具好きを自称していながら、著者である きだてたくさんのことをまったく存じ上げなかったのですが、途中で「この人、関西人やな」と確信しました。 それは、蝶々の形をしたピンを紹介したページでのこと。「押しピン」という単語が出てきたからです。 私はずっと「押しピン」は全国区だと思っていたのですが、関東では通じないと聞いて驚きました。 どうやら関西弁だったもよう。 では関東では「押しピン」をなんと呼ぶのか疑問を抱きました。 正解は「画鋲」らしいですね。 確かに画鋲という言葉も知っているけど、普段生活しているときにはほぼ100パーセント「押しピン」って言いますワ。 まぁ私のことはどうでも良くて、普通に文章の中に「押しピン」が出てきたので、きだてさんは関西人だなと思ったわけです。 きだてさんが駄文具との縁について語っておられる「おわりに」に、こんなことが書いてありました。 僕が通っていた関西の小学校では、クラス内のヒエラルキーが勉強できる順でも、運動できる順でもなく、「面白い順」で決まりました。
(きだてたく さん『愛しき駄文具』 P151より引用) そうそう!!
私の通っていた小学校でも、モテる男子は「オモロイ子」でした。 中学高校と進むにつれ、イケメンの人気が上昇するのですが、小学校ぐらいのときは何よりも面白さが大事なんですよね。次に人気があるのは運動神経が良い子か、カシコか。 著者のきだてさんは、特別運動ができるわけでも、勉強ができるわけでもない、かと言ってオモロイことを言えるわけでもなく、だったら何かオモロイものを持っていれば良いのではと思ったのだそうです。 しかし、小学生は縛りがきつくて、おもちゃや漫画を持っていくことはできません。文房具だったら許されるはず…… ということで、誰もが思わず「なにこれ?!」「変なの!!」と反応してしまうオモシロ文房具を探し出すことになったのだそう。そしてそのまま駄文具を愛する大人になったのですって。 駄文具への愛が有り余って(?)「色物文具」というジャンルを確立されたのだそうで、何事も徹すれば道ができるのだなあ、と感心してしまいました。 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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