地のはてから(乃南アサ)
![]() |
|
![]() 地のはてから
乃南アサ(著) 巻頭に掲げられているのは、大正時代、政府が発行した北海道入植の手引き書。
今も昔も、政府というのは厳しい現実をそうではないかのように発表するものなのね、という内容。 いかに北海道の冬が厳しいものか、未開拓の原野を開墾することが困難であるかを説いておらず、「拓けば拓いただけ土地が自分のものになる」という夢を持ってこれを読んだ人が「よし、北海道に行って一旗揚げよう」と思ったであろうことは想像に難くありません。 あらすじは… 借金を抱えた農家の次男坊の妻であるつねは、夜逃げ同然で北海道知床に移住。過酷な北海道の原生林に入植した つねは、故郷・福島への思いを抱きつつも、なんとか幼い二人の子どもを守り、生き延びるために必死で働く。
つねの子、とわ が北海道に渡ったのは2歳のとき。福島の記憶がなく、物心ついたときには北海道の原生林の中掘立小屋で生活していた。そのため、何もない貧しい生活が普通だと思い、口減らしのため奉公に出されることも、寂しくはあったが仕方がないと思っていた。 奉公先での体験、意に染まぬ結婚を経た とわは、自分の母と同じように、生きるため、子どもを守るために必死で働く…。「とにかく生きろ。生き抜くんだ」と言った兄の言葉を胸に。 大正から昭和33年まで、つね と とわの母娘2代記と言ってもいいと思います。
女性が、自分の意思を通すことなどできなかった時代、自分の希望とは違う方向に流されていく人生の中で、たくましく「とにかく生きる」姿が力強く描かれています。 この小説の面白いのは、登場してくる女性が皆個性的で、生き生きと力強いこと。 もし現代に生きていたら、この女性たち、どれほどのことをしただろうと思います。 それに対して、出てくる男性のほとんどみんな弱っちい! 「もっとしっかりしなはれ!」とお尻を箒でバシバシ叩きたいような衝動に駆られましたワ。 北海道開拓、第二次世界大戦、アイヌの問題などを含みつつ、思うように行かない人生を強く生きる意味、「とにかく生きることが大切」というメッセージが熱く伝わってくる小説でした。 一家の故郷が福島ということにも大きな意味を感じます。 この小説は構想10年ということなので、東日本大震災とは無関係な設定だったのでしょうけれど。 面白くてとまらず、結局午前3時までかかって読み終えました。 眠い眠い。 でも面白くて閉じられないような本を読むのって、本当に楽しい~。 お勧め度は★★★★☆ 読んで絶対損はないと思います。 地のはてから
乃南アサ(著) 講談社(2013/03) 凍てつくオホーツク海に突き出し、人も寄せ付けぬ原生林に襲われた極寒の地・知床。アイヌ語で「地のはて」と呼ばれたこの地に最後の夢を託し、追われるようにやってきた開拓民の少女。物心ついたときにはここで暮らしていたとわは、たくましく生きる。今日から明日へ、ただ生き抜くことがすべてだった。北海道・知床で生きた女性の生涯を丹念に描いた、著者の最高傑作。中央公論文芸賞受賞作。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
|
OtherBook