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美貌のひと( 中野京子)

知識は人生のスパイスだ

美貌のひと
歴史に名を刻んだ顔
中野 京子(著)
本屋さんで表紙の美人と目が合ってしまい、連れて帰らずにはいられなかった中野京子さんの『美貌のひと』。

誤解や誹りを恐れずに言いますと、私は昔から美しい人が好きです。

近づいて仲良くなりたい、というよりも、美しい絵画や景色のように、眺めるのが好きなのです。

反対に、ブサイクを憎んでいました。

私のいうブサイクは、容貌の問題ではありません。

美人を見て「何よあの子、顔が良いだけじゃない」と言うような人、それが私の定義する「ブサイク」です。

生まれつき頭が良い人や、足が早い人、文章が上手な人、絵が上手い人、そういう人のことは「才能がある」ともてはやすのに、なぜ顔だけ(容姿だけ)は、綺麗に生まれついたことを素直に誉めたたえないのか。

おかしいじゃないか!!それも一種の才能じゃないか!

ずっとそう思っています。

それくらい美人が好きな私なので、この表紙を見た瞬間、思わず足を止めてしまいました。

「綺麗ねぇ、あなた、どなた?」

残念なことに、私は絵に関して苦手意識があります。

これまで積極的に理解しようとしてこなかったせいもあり、恥ずかしいくらい知識がありません。

この表紙の絵は、ロシア人画家クラムスコイが描いた「忘れえぬ女(ひと)」という作品だそう。

この絵が発表されると、誰がこの絵のモデルなのか、突き止めようとする人が多かったらしいのですが、多くの人がアンナ・カレーニナだと思ったのだそうです。

アンナ・カレーニナはトルストイの作品『アンナ・カレーニナ』の主人公で、トルストイが創作した架空の人物。

『アンナ・カレーニナ』が発表された6年後の1833年、この作品を見た人たちが、実在しないと半ば知っていながら、これこそアンナだと思ったのもわかる気がします。

美しく、尊大な眼差しながら、どこか不幸の影がある美女に、読者は不倫の果てに駆け落ち、最後は自殺してしまうアンナの面影を見出したのでしょう。

ちなみに、クラムスコイはトルストイの肖像画も手がけたそうで、小説と肖像画は同時進行していたそう。

そういう関係性も、この美女がアンナ・カレーニナだと信じられる原因になったのでしょう。

ところで、この絵の原題は「見知らぬ女」なのですって。

それが日本で展示される際、「忘れえぬ女」と訳されたのだそう。

訳者さん、天才ですね。

「忘れえぬ女」の方が絶対に良い!

絵の眼差しと同じくらい、ミステリアス!

私は何も知らずにこの絵に惹かれましたが、中野さんにこういったエピソードを教えてもらうと、より一層深く惹かれるのでした。

私はずっと、絵には理屈はなく、ただ絵の前に立ち感じればいいのだ、と思っていました。

むしろ知識がなければ感動できないような絵なら、エセじゃないのか、とも。

しかし、中野京子さんの解説を読むと、知識や教養の大切さを感じずにはいられません。

例えば、ロシアの画家クストーディエフの作品『商人の妻のティータイム』などは、紅茶の飲み方を見ただけで、描かれている女性の身分がわかるんですって。

私には「ぽっちゃりさんだけど綺麗。色使いが生き生きしている」くらいしか感じることができないのですが、知識があれば、絵画の隅々に至るまで、いろいろなことを読み取ることができます。

私は中野さんの解説を読んで、世界が広がるのを感じました。

もっと若い頃、学生時代にこういう解説を聞くことができたら、どんなに幸せだったろうと思います。

とはいえ、遅まきではあるけれど、今知ることができて良かった。

これで、僅かとはいえ、私の世界は確実に広がりました。

ありがたいことです。

中野京子さんがこの本で紹介した「美貌のひと」24人。

私がもっとも惹きつけられたのは、シュティーラーの作品「ゾフィ大公妃」でした。

ミュージカル『エリザベート』でシシィをいびり倒す、あの皇太后ゾフィーの肖像画です。

綺麗なのですよ、ゾフィー。

よく考えればシシィ(エリザベート)のおばさまですものね。

もう一枚、とても印象的だったのは、アルテミジアの作品「ユーディトと侍女」。

美人とは言い難いけれど、緊迫感と迫力に引き込まれました。

ユーディトの物語は旧約聖書外伝に出てくるのだとか。

古代ユダヤの街がアッシリア軍に包囲され、陥落寸前の時に、豊かな未亡人ユーディトが侍女一人だけをお供に、敵地に乗り込み、敵将を籠絡。油断した相手の寝首を掻き、味方のもとに持ち帰る……

という逸話だそうです。

すみません、無知なことにその話自体を知りませんでした。

ですから、絵の女性がなぜ剣を肩に担いでいるのか、目に緊迫感があるのか、全然わかりませんでした。

そもそも侍女が抱えた籠の中に敵将の「首」が入っていることにも気がつかなかったぐらいです。

やっぱり予備知識はあった方がいい!

絵が数百倍面白く感じられます。

中野京子さんの『怖い絵』シリーズもちゃんと読んでみたいです。

これで私の絵に対する苦手意識も薄れるかも。

ところで、私の持論である「美人も才能だ」に関して。

多くの才能がそうであるように、美貌も、研鑽や努力、人間性の向上なしには持続しないのだと思います。

「若いときは綺麗だったのにねぇ」と言われる人がいると思えば、年齢を重ねるにつれ、良いお顔立ちになっていくかたもいらっしゃいます。

何事も、天賦の才にあぐらをかくだけではダメなのでしょうね。
美貌のひと
歴史に名を刻んだ顔
中野 京子(著)
PHP研究所
絵画のなかの美しいひとたちは、なぜ描かれることになったのか。その後、消失することなく愛でられた作品の数々。本書では、40の作品を中心に美貌の奥に潜む光と影を探る。 出典:楽天
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