ルドルフとイッパイアッテナ (斉藤 洋)
生きる知恵と友情の物語 ルドルフとイッパイアッテナ
斉藤 洋(著) 今年の夏休みの読書感想文教室の受講生は合計16人。そのうち5人は昨年、あるいは一昨年受講してくれたお子さん。以前会った時より、背が伸びていたり、お顔が少し大人びているお子さんと再会できたのは嬉しかったです。
二人が同じ本を選んでいたので、私が講座前に読んだのは15冊。 私は子どもがいないので、普段は今時のお子さんがどんな本を読むのかわかりません。毎年この講座のおかげで本との新鮮な出会いがあります。 そのうちの一冊が斉藤洋さんの『ルドルフとイッパイアッテナ』でした。 『ルドルフとイッパイアッテナ』の初版は1987年といいますから、私がシステムエンジニアになって2年目、残業に明け暮れ、疲れ果てていた頃です。 そのころも本は読んではいましたが、『ルドルフとイッパイアッテナ』を書店でチェックした記憶がありません。2016年に映画化されて初めて知ったのでした。 随分可愛らしい猫が主人公なんだなぁ、と気になってはいたのです。この機会に読めてよかったわ。 黒猫ルドルフは飼い猫だったが、家の外にも出かけていく。
ある日、魚屋の店主に追いかけられ、逃れるために苦し紛れにトラックに飛び乗ってしまう。目が覚めたら、見知らぬ土地に来ていた。 トラックから降りたルドルフは大きくて凄みのあるトラ猫と出会う。 いじめられるかと思いきや、トラ猫はルドルフに親切にしてくれる。 人間との上手な付き合い方や、教養のある猫としてすべきこと、すべきでないことを教えてくれるのだ。 そう、イッパイアッテナには教養がある。なにせ文字を読み書きできるのだ。 今いるところが東京という場所であること、ルドルフが住んでいたのが岐阜という場所であることも、イッパイアッテナのおかげでわかった。 そして文字が読めるおかげで、岐阜に帰る方法もわかった。 ルドルフはイッパイアッテナと一緒に居られる間にと、生きる知恵や読み書きを熱心に学ぶようになった。 ルドルフは岐阜に帰れるのか?! (斉藤洋さん『ルドルフとイッパイアッテナ』のとっかかりを私なりにまとめました) 私が最初に気になった「イッパイアッテナって名前なの?」という疑問は割と早く解決しました。
要領よく色々な人間に可愛がられているトラ猫は、人によって呼び名が違うのです。 「俺の名前はいっぱいあってな」という前置きをルドルフは名前だと勘違いしてしまったというわけ。 可愛らしいではありませんか。 私は子どもの頃から動物が大好きだったので、動物が出てくる物語も好き。一気に読み終えました。 猫の世界を描いた童話とはいえ、他人(他猫)とギスギスしない距離の取り方、言って良いことと悪いことがあること、弱った相手を労わることなど、生きる知恵が満載でした。 私は気がつけば黒いチビ猫ルドルフの目線になって物語の中に入り込んでいました。 イッパイアッテナと体験するあんなことやこんなこと、ワクワクハラハラ、そして時々はしんみり。 こんな素晴らしい本に出会えるなんて、読書感想文講座を担当して良かったと思います。 ところで、文字を読み書きできるイッパイアッテナのおかげで思い出したことがありました。 それは小学校3年生の時、叔父からプレゼントされた「きつねものがたり」。 結婚したばかりの叔母が旦那様(つまり叔父)と一緒に我が家に来てくれた時、私が本好きだと知って、叔父が選んで持ってきてくれた外国の童話でした。 文字の読み書きができる きつねが主人公。痛快なお話が気に入って、何度もなんども読み返しました。 叔父はすでに亡くなってしまったけれど、「きつねものがたり」を選んでくれた叔父のことは忘れません。 今もあるかしらと検索したら、ありました! 国語の教師だったおばに、言われたことがあります。 「動物の物語に泣いたり笑ったりするのは幼児性が抜けていない証拠」と。 うーむ。否めない。 私は自分でも、自分の中の一部分が幼児のままだと思いますもん。 とはいえ、大切なことが子どもにもわかるように書かれた児童書は古びて固くなった大人の心にも届くと思うのです。 生きる知恵と友情の物語『ルドルフとイッパイアッテナ』は年代を問わずお勧めの一冊です。 映画も見てみようっと。 ルドルフとイッパイアッテナ
斉藤 洋(著) 講談社 ひょんなことから長距離トラックに乗って東京にやってきてしまった、小さな黒ねこ、ルドルフ。人間の字の読み書きができるボスねこ「イッパイアッテナ」たちと出会い、思いがけないノラねこ生活がはじまった。その冒険と友情に子どもも大人も胸を熱くした不朽の名作児童文学が、初めての文庫化! 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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