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大阪人の胸のうち(益田ミリ)

ともかくほぼ全てに共感できる

大阪人の胸のうち
益田ミリ(著)
私は正確に言うと兵庫県民なのだけど、自分を大阪人だと思っているフシがあります。

益田ミリさんの『大阪人の胸のうち」は、自分のことを書いてある本だと認識して読むことにしました。

イラストレーターであり、漫画家、エッセイストでもある益田ミリさんは1969年に大阪に生まれ、26歳まで大阪で育ったそうです。

東京に住むようになってから、再び大阪を思って書かれたのが『大阪人の胸のうち』。大阪あるある、が満載です。

例えば、子どものしゃべり言葉がなぜか歌になっている話。

子どもがお友だちのお家の前で「○○ちゃん、あそぼー」と声をかけるときは、

ソファソー ファファソー

小学校で終わりの会を終え、日直の声がけに従ってみんなで声を合わせて言う

「先生、さようなら、皆さん さようなら」も、数字を一から十まで数えるときも、なぜかメロディーになっているとのご指摘、

わかるわかる。

確かに音階になっています。

ただし「先生さようなら、みなさんさようなら」に関しては、私はミリさんとは微妙に違う音でしたけどね。

それは住んでいる地区での差、かもしれません。(益田ミリさん『大阪人の胸のうち』P30〜31参照)

また、大阪人と言うと「がめつい」と思われがちですが、損得を度外視して大事にしているものがあるという指摘も正しいと思う。

阪神タイガースの優勝を受けて、道頓堀川に飛び込む人々は、単に優勝が嬉しくて飛び込んでいるのではなく、「誰かアホな奴が飛びこまへんかなァ」と期待している周囲の人を笑わせたいのだと。
ウケる、笑わせる、ということがこんなにも重要なのは、日本、いや世界でもここだけではないかと私はしみじみと見ていたのだった。
(益田ミリさん『大阪人の胸のうち』P47から引用)
それから、なぜか会話の頭に否定語が出てくるというのも笑いました。

その否定語とは「ちゃうねん」。

例えば、待ち合わせに遅れた時、「ちゃうねん、電車が遅れてな」のように使われることが多い言葉です。

「ちゃうねん」は標準語に直すと「違うんですよ」「違いますよ」になるのだろうけど、それでは全く意味が通じないというか、ニュアンスが伝わりません。

文頭の「ちゃうねん」は「言い訳を聞いてぇな」に近いニュアンス。「私はワルないねん、怒らんといてや」と言いたいわけですね。(益田ミリさん『大阪人の胸のうち』P76参照)

「でん」という言葉もどうやら大阪独自の言い回しのようですね。

益田ミリさんはこの「でん」を、「タッチ」のようなものと説明。鬼ごっこで鬼が誰かに触る時の感じを例に挙げておられます。

私は日常会話でよく「でん」を使います。

例えば、行った先で長居することなく、即座にとって返した時に、「でんして帰ってきた」と言うんですよ。

壁にタッチしただけ、他には何もしなかった、というニュアンス。

ちなみに私は「でん」は「する」と言うけど、益田さんは「でんついて帰って来た」とおっしゃっていて、「でん」は「突く」もののようです。

この辺りは地域差があるのかも。(益田ミリさん『大阪人の胸のうち』P112参照)

そして懐かしい、子ども時代に大人から言われる言葉の数々。

「シーコイコイ」(ビローな言葉ですみません!)

「まんまんちゃんアーン」

「やいとすんで(やいとするで)」

「ぽんぽん痛なるで」

ああ、これらも大阪弁であったか!

ともかくほぼ全てに共感できる『大阪人の胸のうち』の中で、一つだけ

「それはちょっとちゃうんちゃう?(ちょっと違うのでは?)」

と思ったことがあります。
さて、友達との待ち合わせ場所は「いすゞのショールーム前」が、渋谷で言う「ハチ公前」くらい一般的だった。ちょうどJR大阪駅と阪急梅田駅の中間(徒歩で行ける距離)なので、複数の友達が集まるときは都合が良かったのだ。
(益田ミリさん『大阪人の胸のうち』P166から引用)
いやいやいや、いすゞショールームはJR大阪駅と阪急梅田駅の中間地点ではなかったはず。

阪急梅田駅と地下鉄谷町線 東梅田駅との中間地点、もしくはJR大阪駅から、東梅田駅に向かう途中でしょう。

細かいけど、そう突っ込まずにはいられませんでした。

それにしても、今はもうない いすゞのショールーム。

この本を読むまですっかり忘れ去っていましたワ。

あー。懐かしすぎます。
大阪人の胸のうち
益田ミリ(著)
光文社
「誰かアホな奴が飛び込まへんかな~」の期待に応えて道頓堀川に飛び込んでしまう大阪人。「味は悪ないけど、あいそ悪いわ」「そらアカンわ」。味よりも愛想第一のおばちゃんたち。「ほな、切るで」。胸がキュンとする恋人仕様の大阪弁etc.上京して十数年、大阪出身の著者だからこそわかる大阪人の胸のうちとは?好評イラスト・エッセイ第3弾。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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