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FACES いじめをこえて(NHK「FACES」プロジェクト)

いじめを受けている人たちにエールを

FACES
いじめをこえて
NHK「FACES」プロジェクト(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、NHK「FACES」プロジェクトの『FACES いじめをこえて』。

この本は、過去にいじめで辛い思いをした人たちが、自分らしく生きていけるようになったきっかけを語り、今いじめを受けている人たちにエールを送る内容です。

元々はNHKと海外の放送機関が連携して、いじめを体験した人たちの体験談を2分間の動画にして配信していました。

2017年から2020年に放送した20人の語りを文字にしたのがこの本です。

いじめの内容や、それを乗り越えたきっかけなど、短くまとめられてはいるものの、アドバイスには重みがありました。

それぞれがいじめられるようになったきっかけは様々。

ただ、じっくり全体を読んでみると、いじめは「自分(自分たち)と違う」ことが原因で起きることが多いと感じました。

本当は一人として同じ人間はいないはずであり、違うことは悪いことではないはずなのに。

むしろ多様性を重んじることが、自分の可能性を広げることにもなると思います。

それを幼い頃から教えたほうがいいのかもしれません。

もう一つ共通していると感じたのは、いじめられている人はだんだん「自分が悪いからいじめられるのだ」と思い込んでしまいがちだということ。

この本で自身の体験を語っている人たちは皆、一旦はその穴に落ちてしまいますが、途中で気がつくのです。自分は悪くはない、と。

そしていじめられている場所に我慢してとどまり続ける必要はない、とも気がつきます。

その場から逃げること、学校や職場を辞めたって構わない、それは自分を守ることであって、なんら恥ずかしいことではないのです。

また、いじめから逃れるために自傷や、場合によっては死を考える人たちに対して、このようなアドバイスを語っている人がいました。
永遠ってないんですよ、嫌なことも、もちろんいいことも。

いつかは必ず終わる。つらいことがあれば逃げていけばいい、逃げた先でそれはきっとなくなっている。

楽しいことが見つかったなら、それがなくなるまで楽しみ倒せばいい。そしたら、いいことがまた降ってくる。

世界中に誰かひとりは、自分や自分の作品のことを認めてくれる人は必ずいます。その人に出会えるまではやめないで。

生きることも、何かを作ることも。
(『FACES いじめをこえて』 P94より引用)
今のつらさが永遠には続かないから絶望しないで。

そもそも今いる場所が辛いなら、逃げていいのだから。

もちろん周囲にSOSを言っていい。

そして何より、いじめている人間が刷り込んだ「自分には価値がない」という間違った思い込みを捨てよう。

体験者たちはみな、言葉は違えどそんな風にアドバイスしています。


最近、東京オリンピック開会式関連のニュースで多くの方が「いじめ」について改めて真剣に考えたのではないでしょうか。

この本を今日ご紹介することはもっと前から決まっていました。

このタイミングになったのは偶然ですが、今、いじめで苦しんでいる人にこの本が届くきっかけとなってくれれば。


なお、この本はいじめられる側に寄り添った本です。

しかし、いじめる側を放置しておいては解決にはなりません。

もし今 自分の不満解消のためや、面白半分で誰かをいじめている人がいるなら、伊坂幸太郎さんの小説『逆ソクラテス』を読んでみてください。

小説ですから架空の世界の話ではありますが、誰かをいじめることは自分の首を絞めるのと同じことだということがわかるでしょう。

『「いじめ」がなぜいけないのか、答えがここに 伊坂幸太郎『逆ソクラテス
FACES
いじめをこえて
NHK「FACES」プロジェクト(著)
KADOKAWA
いじめと向き合い、自分らしく生きる“きっかけ”を掴んだ人々の証言。世界中で大反響の動画配信サイト「FACES How I survived being bullied」(FACES Project/NHK)が待望の書籍化! 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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