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あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと(辰巳渚)

母の愛が詰まっている

あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと
ひとり暮らしの智恵と技術
辰巳 渚(著)
辰巳渚さんの『あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと』を読みました。実用書にこんなにジーンとするとは、自分でも意外でした。

辰巳渚さんと言えば、2000年に出版された『「捨てる!」技術』が衝撃的でした。

敗戦で物がない時代をくぐり抜けた日本には、物は「収納する」「どこかに片付ける」ものだという意識が根強かったように思います。

今でこそ、「ときめき」を基準にしてものを捨てるとか、「断捨離」が浸透しつつありますが、2000年の段階では、まだ使えるものを「捨てる」ことに罪悪感を持っていた人は多かったのではないかしら。

辰巳さんは収納術では解決しない問題があると指摘。「捨てる」のは物を粗末にことではなく、自分の暮らしをより良くするためなのだという辰巳さんの主張は目からウロコで、130万部のベストセラーとなったのでした。私も買って読みました。

その辰巳さんの訃報が入ったのは昨年のこと。2018年6月26日にバイク事故で亡くなられました。52歳という若さで。

この本は、2017年の夏から執筆が始まり、辰巳さんが亡くなる直前までかかって仕上げられたものです。結果的に遺作ということになりました。

内容は、タイトルそのまま。辰巳さんはこの本を、”ひとり暮らしを始める方たち”や、”ひとり暮らしを始める子どものいる親御さん”に読んでもらいたいと、「はじめに」に書いておられます。

ひとり暮らしのための知恵は、4つの章に分けて書かれています。
第1章 はじめの3週間 あなたが生き延びるために必要なこと

第2章 つぎの3か月 生活に慣れたら始めてほしいこと

第3章 これからの6か月 季節や環境に合わせて暮らすということ

最終章 1年経ったら 生活しながら未来に向かって生きていく
(辰巳渚さん『あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと』目次より引用)
第1章の一番最初に書かれているのは、自分でご飯を炊いてみること。

そんな簡単なこと、と笑いそうになりますが、衣食住の全てを親まかせにしていたお子さんを念頭に書かれているのです。

食の他に大事なことはゴミ出し。

生活していれば必ずゴミが出る。

これまでいつの間にか部屋が片付いていたり、ゴミ箱が空っぽになっていたのは、家族の誰かがやってくれていたから。

自分がゴミ出しをしなければ、部屋の中はゴミだらけになるんだよと諭します。

同時に、冷蔵庫を開ければいつでも食べ物があったのは、誰かが補充してくれていたから。

これからは自分で買い足していかねばならないこと、買い物の仕方などを教えます。

それが説教くさくなく、胸にスッと入ってくるのは、辰巳さんがご自分のお子さんに言って聞かせているように感じられるから。温かいのです。

衣食住の生活テクニックの他に、辰巳さんが説いているのはお金のこと。

無駄使いをしてはいけない、というのはもちろんですが、一番感銘を受けたのは食費を削ってはいけない、という部分です。
欲しいものを買ったり趣味にお金をかけるために食費を削るのは、健康を削って楽しみを買うようなものです。
(辰巳渚さん『あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと』P84より引用)
「自立心は大事だけれど、人を頼ることを恥と思わなくていい。精神的、物理的に切羽詰まったら、迷わず誰かに助けを求めなさい」

という助言や、お金に関するトラブル回避の知恵などは、衣食住のノウハウ以上に役にたつと思いました。

その他、体調が悪くなった場合や、災害への備えなど、適度なページ数の中に、よくこれだけ盛り込めたものだと、感心するほどの項目が詰まっています。

もし私が若い頃に、これと全く同じ内容を自分の親から言われたなら、どう対応していただろうと、ふと想像しました。

おそらく、ありがたいと思う反面、

「もう、わかってるって!」
と、うるさく感じたのではないかと思います。

なのに他人様から言われると素直に受け止められるのは不思議です。

そういう意味で、自分のお子さんに対して、口を酸っぱくして言い聞かせるより、この本をそっと渡した方がいいかもしれません。

ところで、この本は本文以上に「あとがき」が素晴らしいのです。

「あとがき」を書かれたのは、辰巳渚さんのご長男、加藤寅彦さん。

お母様・辰巳渚さんが亡くなったのは寅彦さんの二十歳のお誕生日の11日前だったのですって。

ご実家から離れた大学に入学された寅彦さんは、ひとり暮らしをしておられました。慌てて病院に駆けつけたものの、お母様の最期には間に合わなかったそうです。

その後、この本の「あとがき」執筆依頼を受け、お母様の遺稿を読まれた寅彦さん。「これは僕に向けて書かれた本だ!」と感じたんですって。多分それは間違っていないでしょう。

他人事ではなく、ご自分の大事な息子さんが自立した生活ができるよう、思いを込めて書かれているからこそ、この本は万人に通用するのだと思います。

手に取られた時は、必ず「あとがき」も読んでくださいね。

「ひとり暮らしの知恵と技術」が書かれているのになぜか、”ひとり”ではなく”家族”のことを思うようになる実用書です。
あなたがひとりで生きていく時に知っておいてほしいこと
ひとり暮らしの智恵と技術
辰巳 渚(著)
文藝春秋
「自立」していく我が子へー急逝した著者が、最後に遺した「ひとり暮らし」のバイブル。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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