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赤と青のガウン(彬子女王)

プリンセスの留学記

赤と青のガウン
オックスフォード留学記
彬子女王(著)
著者、彬子女王は髭の殿下として親しまれていた寬仁親王とお妃である信子様の長女でいらっしゃいます。

学習院大学をご卒業され、イギリスのオックスフォード大学に留学され博士号を取得されました。

2009年10月に京都の立命館大学の衣笠総合研究機構に就職されました。

私は毎日新聞の連載記事(不定期だったかもしれない)で彬子女王の文章を読んだことがありました。

ご就職後、京都で過ごされている中で感じたことを記されたエッセイでしたが、上品であるのはもちろん、知的でわかりやすく、しかもどこかにユーモアを含んだ文章だったことを覚えています。

ですが、迂闊にも、オックスフォード留学記を出版されたことは知らずに今日まで過ごしていました。

最近、あちこちの本屋さんで彬子女王の『赤と青のガウン』が平積みされているのを見かけるようになりました。

X(旧Twitter)でも、面白いと評判なので、読もうと思ったのでした。

『赤と青のガウン』は元々は、月刊誌「Voice」の2012年4月号から2014年5月号に掲載されたもの。

その時のタイトルは『オックスフォード留学記 ー 中世の街に学んで』だったんですって。

その後、加筆再編集されて単行本『赤と青のガウン』が誕生したのは2015年1月のこと。

不勉強なことに、そのことを私は全く知らずにおりました。

なぜ今『赤と青のガウン』が話題に上っているのかというと、その理由が「今どき」なのです。

2023年5月にTwitter(現X)で『赤と青のガウン』が面白いと呟いた人がおられ、その投稿に3万以上の「いいね」がつくことになりました。いわゆる「バズった」わけですね。

彬子女王ご自身はこの現象を、チャールズ国王の戴冠式に近い時期だったことで、多くの方にイギリスやオックスフォード大学留学に興味を持っていただけたのではないかと分析しておられます。

「『赤と青のガウン』が面白い」というつぶやきは拡散され、彬子女王の友人知人の目に留まるまで広がりました。

その頃彬子女王は色々な人から「Twitterで見ましたよ」とお声をかけられたそうです。

同時に「手にとって読んでみたいけれど、今はもう手に入らないのね」というお声も寄せられました。

そこで彬子女王は出版元のPHP出版に「重版していただけないでしょうか」とお申し出になったんですって。おずおずと。

諸事情で単行本の重版はかないませんでしたが、文庫本として再び本屋さんに並ぶことになったのでした。

いやむしろ、比較的価格も安く、持ち運びしやすい文庫本になったのは幸いだったのかもしれません。

私が買った本の奥付を見ると

2024年4月15日 第1版第1刷
2024年7月12日 第1版第9刷

と書かれています。すごいですねぇ。

実際に読んでみると、とてもわかりやすくユーモアがあり読みやすいです。

何より、彬子女王のご体験は普通では体験できるようなことではありません。

エリザベス女王にお声かけいただいて、お二人で午後のお茶を楽しまれた、なんてびっくり!

また皇族のパスポートは私たちが持っているような赤いパスポートではなく、外交旅券であることなど知りませんでした。

空港で、小柄なセーター姿の女性(外国の人から見れば少女)が外交旅券を持っていることを不審がられた時の会話など、プリンセスの日常を垣間見る気分。

もちろん、留学記ですから本業である研究についても書いておられます。

彬子女王のご専攻は日本美術史。オックスフォード大学では海外に流出した日本美術に関する調査・研究をされていたそうです。

なんと彬子女王は、火災で焼失してしまった法隆寺の金堂壁画の一面「弥勒浄土図」の模写が大英博物館にひっそりと収蔵されていたことを発見されたのです。

こういうことを日本のメディアは大々的に報道していますか?していないのでは?すごく大事なことなのに。

大事なことといえば、そもそも彬子女王がなぜオックスフォードに留学されることになったのかについても記述されています。

それは彬子女王のお父様、髭の殿下 三笠宮寛仁親王の悲願だったようなのです。

彬子女王は幼い時から、お父様からオックスフォード留学を刷り込まれていたのですって。

三笠宮寬仁親王といえば、度重なる癌発症に立ち向かっていた宮様です。

私には、宮家の特別な家庭環境を想像することはできませんが、彬子女王が語るお父様の思い出話には思わず涙してしまいました。

幼すぎて「お父様お母様」と言えず、「おうとま、おかあま」と呼んでおられた頃の彬子女王が、父の日にプレゼントしたものを、寬仁親王がずっとお財布に入れて持っておられた…なんていうエピソードにはうるうるしてしまいました。

人は、生まれてくる場所を選べません。

宮家に生まれて来ることが、どれほどのプレッシャーを受けるものなのか、想像することもできません。ですが、人間は生まれた場所で咲くしかないのです。

彬子女王はご自分に与えられた場所で見事に花を咲かせておられるのだと感じました。

謎の上から目線ですみません。
三笠宮彬子様インタビュー
ご著書に関するインタビューです。
ロイヤルファミリー本
実は私はロイヤルファミリーが好きなのです。(日本に限らず)

これで、我が家の本棚の一角にある「ロイヤルファミリー本」コーナーに1冊増えたことになります。

いずれもとても興味深く面白い本ですよ。
彬子女王のお隣にある「四季の家庭料理」は彬子女王のお母様、寬仁親王妃信子様のご著書です。
食道がんを患われた寬仁親王が一度にたくさん召し上がることができず、一日6回食事を取られるようになってからのレシピとエッセイが収められている名著です。

宮様のお食事ですから、高級なものばかりかと思いきや、前日のメニューでできた屑野菜で翌日はチャーハンを作る、など、明日からでも参考にできるレシピ満載なのですよ。

今でも手に入るロイヤルファミリーの書籍をご紹介しておきますね。
赤と青のガウン
オックスフォード留学記
彬子女王(著)
PHP研究所
女性皇族として初の博士号取得。瑞々しい筆致で綴られた留学の日々。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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