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舟を編む(三浦しをん)



 
舟を編む
三浦しをん(著)
出版社:光文社(2011)【内容情報】(「BOOK」データベースより)玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていくー。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのかー。(出典:楽天ブックス
この作品は2012年の本屋大賞を受賞。
大変売れている話題作です。
私は本屋大賞には思うところがあり
二度と釣られないぞ、と決意しておりましたが
三浦しをん、だというので
まぁ間違いはなかろうと
ちゃんと本屋さんで買って読むことにしました。

結果は大満足。
面白かったし、胸を打たれました。

このちょっと変わったタイトル「舟を編む」の
舟とは辞書のこと。
「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」(P27より引用)
言葉の大海原を渡るにふさわしい舟を編む…という意味を込めて
「大渡海」と命名された辞書を世に出すために全力を注ぐ
玄武書房辞書編集部のひとたちの物語なのです。

出版社名が、青龍書房、朱雀書房、白虎書房ではなく
玄武書房なのもポイント高し!
いかにも地味でコツコツしてそうで。

それにしても変わった舞台設定だわ。
私は子どものころから本が大好きで
小説も結構な数を読んできたつもりですが
辞書を作成する人たちが登場する小説って初めて読むような気がします。
そんな地味な人たちの物語が面白いのだろうか…

それが面白いんです。
面白いし、途中からは思わず襟を正し、
最後には自宅にある辞書を手にとってナデナデしてしまいました。

まず、登場人物のキャラクターが一人一人際立っていて面白い。
まずは冒頭登場する荒木公平。
子どものころから言葉に興味があった荒木さんは
できることなら国語学者になりたかった。

でも大学に通うころには自分には学者になれるほどのセンスはないと自覚。
それならばせめて、編集者として辞書作りにたずさわりたい…と
猛勉強して玄武書房に入社。以来、辞書づくり一筋37年。
監修の松本先生と立案した新しい辞書「大渡海」の完成を待たずに
もうすぐ定年を迎える。

30年以上の付き合いがある松本先生のためにも
なんとしても辞書づくりにふさわしい後継者を見つけなくてはと
思っている人です。

読み始めて6ページめに、
この二人が出会ったころを述懐する会話があります。

おそらく普通の人の会話だと
「先生とお会いして30年以上たちますね。
あの頃の先生はもっと髪の毛がフサフサでいらした」
「荒木君も、ずいぶん白髪が出てきてしまったねぇ」
となるであろう内容が、
さすがに辞書づくりに会社人生のすべてをささげた人と
辞書を編む先生の会話。

正直に言って私は、この会話部分で「舟を編む」の虜になりました。
どんな言葉で話しているかは実際に読んでのお楽しみ。

荒木さんの後継者に選ばれたのは
第一営業部から引き抜かれた「まじめくん」。
この まじめ君が主人公ということになるのだと思います。

名前にふさわしい真面目さとトボケぶり!
そのほか、チャラ男キャラの西岡くん、
仕事ができるが愛想なしの佐々木さんが登場。
彼らの中で、まじめ君が「大渡海」編纂の中心人物になったところで
物語の前半が終了。

次にページをめくったところで、びっくり!
「大渡海」が企画されてから13年もたっていて
まじめくんが主任になっているのに
まだ完成していません!

辞書って、気が遠くなるような労力がかかるんですね。
当然 費用もかかる…。
だから「改訂」はあっても
新しい辞書が世に出るというのは
なかなかないことなんだそうで。
「大渡海」が本当に完成したときには
私まで胸が熱くなりました。
その辞書、欲しいぞ!

この小説は、職人ともいえる
辞書編集部の人たちの仕事ぶりだけではなく、
まじめ君が下宿するアパートの大家、タケさん、
下宿に出入りする猫のトラさん、
そしてタケさんの姪の「かぐや さん」
たちの 人となり(猫となり?)も好ましく読めます。

それと、チャラ男、西岡君の"その後"もね。

お勧め度は
★★★★★
ぜひ読んでください。
軽いタッチの小説ですが
含まれているものは熱く、温かく、深いです。

ああ、やっぱり三浦しをんにハズレはなかった。

【おまけ】
私も今以上に「言葉」にはもっと神経を使わないとね、と
思いました。

小説の中に出てくる「上がる」と「のぼる」の違いを始め、
同じような意味に思えて、実は微妙に異なる言葉を
普段、意識はしていて「今どの言葉が一番ふさわしいだろう」と
使い分けているつもりではありますが
「舟を編む」の登場人物のように
今やっていることを中断してまで確認…なんてことをしていません。
これからは、ちゃんと辞書を引いてみようと思いました。
それも電子辞書じゃなくて、紙の辞書で。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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