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顔ニモマケズ(水野敬也)

笑顔に滲み出るそれぞれの生き方

顔ニモマケズ
水野敬也(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、水野敬也さんの『顔ニモマケズ』です。

私はこの本を以前、読んだことがあります。本屋さんで偶然見かけた瞬間、ハッとし、手に取らずにはいられなかったのです。

その衝撃は、1998年に出版された乙武洋匡さんの著書『五体不満足』を初めて目にした時と同じだったと思います。

『五体不満足』は電動車椅子で横断歩道を渡っている乙武さんの写真が表紙です。

一目見ただけでわかる乙武さんの障害の重さと、笑顔の眩しさのコントラストが激しすぎて、初めはどう捉えて良いのかわからなかったのでした。

『顔ニモマケズ』では、様々な病気が原因で、「見た目」が一般の人とは違う9人が紹介されています。

そのうちの3人の方の笑顔が表紙を飾っているのですが、笑顔の清々しさと、あまりに見慣れない症状のギャップにしばらくは呆然と見つめてしまうのでした。

著者の水野敬也さんは『夢をかなえるゾウ』や『人生はニャンとかなる!』のご著者です。

すごく明るく前向きな方なのだと思っていたのですが、思春期の頃は「醜形恐怖」という強迫観念に苛まれ、心療内科に通った経験があるそうです。

顔にものすごい劣等感を抱いていた水野さんは、自分の外見に劣等感を持つかどうかが人生の幸福度を大きく左右するのだと実感し、その問題をどうにか解決したいと模索します。

そして「見た目」問題を解決し、誰もが自分らしい顔で自分らしく生きられる社会を目指すNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」に出会います。

この本は「マイフェイス・マイスタイル」の代表者から紹介された9人に水野さんがインタビューした内容がまとめられています。

9人の方の「見た目」が他の人と違う原因は、それぞれリンパ管腫、動静脈奇形、網膜芽細胞腫、口唇口蓋裂、全身型円形脱毛症、アルビノ、単純性血管腫、ロンバーグ病、トリーチャーコリンズ症候群という病気です。

口唇口蓋裂は同級生に居たので知っていましたし、網膜芽細胞腫、単純性血管腫、アルビノは知識として知っていましたが、それ以外はそんな病気があったのかと思うものばかり。

生まれた時から病気による外見と折り合って生きてきた9人の方達。

どうして自分の「見た目」はこんな風なんだろうと、思わなかったわけではありません。中には引きこもってしまっていた人もいます。

でも今は9人とも自分を肯定して生きておられる。9人の方が語る、自分自身の物語には、本当に深いものがありました。

言葉は違っても共通しているのは、「変えられるもの」と「変えられないもの」があることをしっかりとわかっておられること。

「変えられないもの」に固執して悩み苦しむのではなく、自分の力で「変えられるもの」に力を注ぐことで、充実した生き方を見つけることができたのです。

私は、子どもの頃、障害のあるかたを指差したり、真似をしたらいけませんと諭された経験があります。

少し成長したら、誰に注意されなくても、そんなことはしてはいけないのだと思うようになりました。

しかし、もう少し年齢を重ねると、障害を持っておられる方から目を背けたり、まるでそこに何もないかのように振る舞うことも、大変に失礼なのではないかと思うようにもなりました。

一体どうしたら良いんだろうと悩んだ末、今では「この人はこういう人なんだな」と、ありのままに受け入れて見れば良いのだと思っています。

それにしても、この9人の方達の笑顔の写真は、静かな気持ちで何分でも見つめていられるのが不思議。

なぜだろうと考えていたら、この本の中に答えがありました。

それは、顔は第一印象を与えるものではあるけれど、人は相手の顔だけを見ているわけではないということ。

好きなものに一生懸命に取り組んでいたり、おしゃれに気を配ったり、運動をしていたり、といった生き方やスタイル全体が人間の印象を作り上げていくのでしょう。

9人の方々の今の生き方はある種の自信となり、それが笑顔に滲み出しています。

それを感じるから、とてもフラットな気持ちで見つめることができるのでしょう。

水野敬也さんはこの本を、次のような人たちに役立つとおっしゃっています。
□年齢を重ねることで自分の魅力が失われていくんじゃないかと不安になっている人

□「人からどう思われているか」が気になってしまう人

□周囲の人間関係に悩んでいる人

□就職や仕事のことで悩んでいる人

□恋愛に自信を失っている人

□自分の欠点やコンプレックスが気になる人

□他者とのコミュニケーションが苦手な人

□いじめに悩んでいる人

□外に出るのが億劫で部屋に引きこもりがちになっている人

□「やりたいこと」や「好きなこと」が見つからない人

□今の自分の環境や状況を変えたい人

□やりたいことがあるけど勇気がなくて踏み出せずにいる人
(水野敬也さん『顔ニモマケズ』P6、P7より引用)
確かに、悩みから抜け出すための、かなり具体的な方法が紹介されていると思いました。

あらゆる年代の方に読んでいただきたい本です。
顔ニモマケズ
どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語
水野敬也(著)
文響社
『夢をかなえるゾウ』『人生はニャンとかなる!』『スパルタ婚活塾』などの著者・水野敬也は、思春期のころ、醜形恐怖という外見への執着に悩んだ経験があります。それ以来、外見へのこだわりや劣等感は幸福を大きく左右する問題だと感じており、「見た目問題」に興味を持つようになりました。そして、NPO法人マイフェイス・マイスタイルの協力のもと、見た目に傷やアザなどの症状を持つ「見た目問題」当事者の方たちと会話を重ね、外見から生まれる仕事や恋愛の問題をどのように乗り越えていったのかを学んだのです。その結果、彼ら・彼女らが問題を乗り越えたプロセスは、自分の外見に悩む人だけではなく人生の様々な悩みに応用できると確信し、今回の本が生まれました。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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