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ミュージアムの女(宇佐江みつこ)

自分のお仕事に真面目に取り組んでいる人は美しい

ミュージアムの女
宇佐江みつこ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、宇佐江みつこさんの『ミュージアムの女』

ミュージアムの女とは、美術館などの展覧会場の端っこにいる人のこと。学芸員とはまた違う職種で、監視係なのですって。

著者 宇佐江みつこさんは、岐阜県美術館の監視係さん。これはいわゆる「お仕事本」の一種です。

美術館で鑑賞する際の、ちょっとした注意点やお仕事「あるある」を、宇佐江みつこさんは四コマ漫画で描いておられます。

しかも、登場人物が全て猫(体は人間ふう)なのが可愛い。内容がすっと入ってきます。

私は美術に詳しくないけれど、時々は美術展に出かけます。最近では「怖い絵展」が印象的でした。

その会場にも「ミュージアムの女」はいらっしゃたのでしょうが、全く意識していませんでした。大変失礼ながら、存在すら気がついていなかったかも。

でも監視係の人にとっては、存在に気付かれないほうが嬉しいんですって。ご自分たちの存在が作品への集中を削いでいないということだから。

この本で、今まで気に留めていなかった監視係さんのお仕事内容を知り、監視係さんを観察するために美術館に行きたくなりました。

「え?それもお仕事なの?!」ということがいろいろあるのですもの。

たとえば「虫報告」。館内で虫を発見したら、全て捕らえて学芸部に提出しなくてはならないのですって。
”作品に害を及ぼす可能性のある虫を「文化財害虫」と呼びます。”
 (宇佐江みつこ『ミュージアムの女』 P20「苦手なしごと」より引用)
だそうですよ。知らなかったなぁ。

監視係さんは目立ちすぎない服装を心がけておられ、足元はナースシューズを着用することが多いのですって。足音が鳴らないし疲れにくいから。

わかります。私も大学では四年間ナースシューズを履いていましたから。私の出身大学は美しいヴォーリズ建築の校舎が有名で、その廊下は大理石貼りでした。

パンプスやブーツでカツカツ歩くと大理石が傷むし、生徒も滑って転んだりする危険がある。だから入学と同時に全員、上履きとしてナースシューズを購入させられました。(今は知りませんが)

登校すると各自ロッカーでナースシューズに履き替えるのですが、冬は寒くてねぇ。ブーツを脱ぐのがつらくて、そのまま授業を受ける人多数でしたっけ。

話が逸れました。ナースシューズが優秀なことを私も知っている、という話です。

ただ、黒色のナースシューズがあることをこの本で知りました。黒なら、足元だけ浮くことがなくていいかも。これも、次に美術館に行ったら確認したいことの一つです。

それからこの本を読んで、美術館に行く時の服装にもっと注意しようと思いました。

NGなのは、ツバの大きな帽子やキャップ、フレアスカート、ショルダーバッグなど。

ガラスケースなどに入っていない展示品に手を触れないように注意している人でも、ぱっと方向転換した時などに、それらが作品に当たってしまう可能性があるからです。

そういったところも、監視係のかたは注意しておられるのですね。同じ意味でポニーテールなども危険をはらんでおり、監視係さんを緊張させているようですよ。

それから、美術館でNGなのはボールペンやシャープペンシル。ボールペンはインクが作品につくと消せないし、シャーペンは芯が折れやすく、折れた芯が作品に飛ぶ可能性があるからですって。美術館でメモを取りたいときは、鉛筆にしてくださいとのこと。

宇佐江さんは美術系の大学を卒業されています。高校生の頃から一番好きだった場所・美術館に就職されました。そしてもっと多くの人に、この素敵な場所に来て欲しいという気持ちで日々働いておられるとか。それなのに、こんな日があるんですって。
”わたしだって落ち込む日があります。学芸員でもなく作家でもないのにいつも作品のそばにいるわたしたちはほんとうに美術館に必要なのだろうか…”
(宇佐江みつこ『ミュージアムの女』 P23「柳ヶ瀬ぶるーす」より引用)
与えられた仕事だけをこなしている人には、無縁の悩みだと思います。自分のお仕事に真面目に取り組んでいる人は美しい。宇佐江さんにお会いしてみたいものです。
ミュージアムの女
宇佐江みつこ(著)
KADOKAWA
その隅っこに座っている人は人形ではありません。人間です。岐阜県美術館公式アカウント発Twitter&Facebook。新聞・テレビ各メディアで話題となった美術館のお仕事4コマ!! 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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