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二十四時間(乃南アサ)

二十四時間
乃南アサ(著)
出版社: 新潮社(2007)【内容情報】(「BOOK」データベースより)幼なじみの“よっちゃん”は、会う度に違った。私立の詰め襟中学生、暴走族の高校生、恋する浪人生。でもその内面はいつも温かで…(「二十四時」)。子供の頃、雪の積もった帰り道を歩いた。方向感覚を失って、“遠く”という“悲しく寂しい場所”に迷い込んでしまった(「十七時」)。人生のそれぞれの風景を鮮やかに切り取った、私小説の味わいを残す、切なく懐かしい二十四の記憶。(出典:楽天
一日を構成する二十四時間、
それぞれの時間帯で起こった二十四の短篇集。

主人公は「私」で、基本的に一話完結ですが、
通して読むと「私」は同一人物で、自身の体験を語っていることが判ってきます。

東京郊外で育ち、私立中高一貫校を卒業後大学に進学するが中退。
広告代理店勤務を経て作家になった…
つまり乃南アサの私小説と思われます。

誰にでもありそうな思い出を、
時間に結び付けて語っていく手法が面白いと思いました。
中でも一番共感し、涙したのが「十五時」

*********
「私」が作家になりかけの一番あわただしい頃に、実家の愛犬が老衰で死亡。
死に目に会うことが出来ませんでした。
少し前から「私」の目にも老化が著しかった愛犬「くま」。
「私」は実家に帰るたびに
「今日がお別れかもしれないけど、またきっと、生まれかわってきて。
そうしたら、今度は死ぬまで一緒に暮らせるようにしようね」
「今度こそお別れかもしれない。どうか苦しまないで。大丈夫、
きっとまた会えるからね」
と話しかけていたのです。
白内障で目が見えなくなり、耳も遠くなっていた「くま」に向かって。

それからしばらくしたある日、
アパートに帰ってきて鍵を開けている「私」のもとに、
一匹の子猫が駆け寄ってきて
はっし!とジーンズに飛びつきしがみついてきました。
「そっくす」と名づけたその猫が…
*********


泣きました。
私も実家に「小太郎」という、愛想のいい誰にでも好かれる
だけど駄犬を置いてきていたのです。
その子は17歳で天寿を全うしましたが
最後の半年ぐらいは、まったく「くま」と同じでしたから。

そして、生後半年で「自己免疫性血小板損傷」という白血病に似た病気で
天に召された白い子猫のテン。

私もテンに何度も何度も話しかけたものです。
「必ず見つけ出すから、生まれかわってきてね。
今度は健康に生まれて来るんだよ。また会おうね」と。

その後我が家にはモンプチと言う子猫がやってきましたが
残念ながらテンの生まれかわりだとは思えません。

乃南アサ「十五時」を読んだら、
もう一度生まれかわりを信じたいと思えました。

愛しかった犬や猫(もちろん人間も)と、もう一度どこかで会えるのだとしたら、
それはどんなに嬉しいことでしょう。

あー、これを入力していても泣けてくる。
このあと出かけないといけないって言うのに、鼻水ずるずるだぁ。

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BLOG ⇒PROページ

著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。

「千波留の本棚」50冊を機に出版された千波留さんの本。
『私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。』購入サイトはこちらAmazonでも購入できます


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