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苦しかったときの話をしようか(森岡 毅)

ご自分のお嬢さんに向けて書いた「働くことの本質」

苦しかったときの話をしようか
ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」
森岡 毅(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、森岡毅さんの『苦しかったときの話をしようか』

著者 森岡毅さんは日本の実業家で、その実績には輝かしいものがあります。

まずはP&Gジャパン・マーケティングに入社し、アメリカにあるP&G世界本社に移籍。

その実績を見込まれて、経営難だったユニバーサル・スタジオ・ジャパンにヘッドハンティングされ、落ち込んでいた来園者数をV字回復させました。

また、丸亀製麺やグリーンピア三木(現在の ネスタリゾート神戸)などの経営を立て直したことでも有名です。

そんな森岡さんが、ご自分のお嬢さんに向けて書いたものを一般化したのが『苦しかったときの話をしようか』。サブタイトルは『ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』です。

森岡さんはお子さんが4人いらっしゃいます。ご長女が大学生になり、そろそろ就職活動について考えないといけない時期になったとき、正面切って就職活動について話し合おうとすると、なかなかうまくいきません。想像するに、成功者であるお父様と就職について話し合うのは煙たかったのではないでしょうか。そんなお嬢さんのために、職業を選ぶ時に大切なこと、仕事をしていく上で大切なことなどを文章にしていたそうです。会話では煙たがられても、文章で読んでもらったら受け入れやすいかもしれないと考えたのでしょう。

それを読んだ編集者が、家族だけで読むのはもったいない、一般の人にもきっと役に立つと判断し、細部を修正して書籍化したそうです。

娘さんに当てて書いたものですから、文章に変な見栄や装飾がなく、非常に気持ちに訴えかけるものがありました。

まず、森岡さんは「そもそも人間は平等ではない」ことを告げています。

いくつもの幸運を生まれながらに持っている人もいれば、いくつもの不運を背負って生まれてくる人もいると。

だけど、どんな境遇に生まれてきたとしても、人間は自分の人生を選ぶことができると森岡さんは言い切っておられます。選べる、というのはちょっと弱い表現で、森岡さんはこうおっしゃっています。
どのような特徴を持って生まれてきたとしても、人生の目的も、それに向かう道筋も、自分の人生をコントロールする”選択肢”を握っているのは実は自分自身しかいない。
森岡さんは最初にこう述べることで、まず甘えを封じ込めているのかもしれません。

物事がうまくいかないことを何か(誰か)のせいにしてはいけない、ということです。

次に、森岡さんは就職活動の前に、自分自身とよく向き合うことを勧めています。

どんな会社に入社するべきか、どんな仕事につくべきか、と考える前に、自分自身の能力や特徴をちゃんと分析していますか、と。

自分のこともわかっていないのに、やみくもに就職活動に突入しても自分に向いた仕事などわかるわけはないというわけです。

この辺りは結構具体的なパターン分けなどが示されていて、自分に合う職種などを決めるのに、かなり参考になると思います。

そして就職後のことは、ご自身の体験を具体的に書いてくださっています。

P&G入社後、誰もが羨むアメリカ勤務、P&G世界本社での体験は、まるでドラマのよう。

人種差別や同僚からの妬み、嫌がらせ……。それに立ち向かっていった森岡さんだからこそ、のちにいくつもの企業の経営不振を飛躍的に回復させることができたのだと思います。

森岡さんの持論は「会社と結婚するな、職能と結婚せよ!」だそうです。

昭和の時代は終身雇用が当たり前で、一つの会社で勤め上げることが善だと思われていました。

それも一つの立派な生き方ですが、自分自身がより良く生きていくためには「職能」こそが重要で、それを発揮する場が1箇所である必要はないということでしょう。

そして、それを実現するためには自分自身の才能や能力をずっと磨き続けることが何より大切だと述べておられます。

この辺りは、すでに仕事に就いている誰にも当てはまることだと思います。もちろん私自身ももっともっと努力しなくては、と背筋が伸びましたよ。

タイトル『苦しかったときの話をしようか』の”苦しかったとき”については後半に書かれています。

森岡さんは、仕事やお金など、外的なことは真の苦しさではないと考えておられます。

本当に苦しいのは「自分が無価値である」と思ってしまうことだと。

自分には存在価値がない、と、自分で自分を否定してしまうことが最も苦しいことだという森岡さんの言葉に、「絶望は死に至る病」だと言ったキルケゴールを連想しました。

輝かしい成功を収めている森岡さんにも、そんな体験があったのです。

そのときのことやどうやってそこから抜け出したのかは、実際に読んでみてください。

この本は若い方、特に就職活動に臨む前の学生さんに向けて書かれたものですが、それ以外の年代の人にも有益だと思います。

私は、生きている限り自分自身を磨くこと、自分がなりたい自分をイメージしてそれに向けて頑張ることの大切さをおしえてもらいました。
苦しかったときの話をしようか
ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」
森岡 毅(著)
ダイヤモンド社
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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