一切なりゆき~樹木希林のことば(樹木希林)
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![]() 人生は「なりゆき」あるいは「必然」「運命」なのか 一切なりゆき
樹木希林のことば 樹木希林(著) 昨年(2018年)9月15日に亡くなられた樹木希林さんの言葉を集めた本『一切なりゆき』を読みました。
出版社やメディアのインタビューでの希林さんの言葉を文芸春秋編集部が取捨選択したもの。他社の協力があってこその一冊です。 希林さん独自の一本筋の通った言葉を人生、家族、仕事、病気や老いといったテーマごとに集められていて、とても読みやすいです。 第1章 生きること
第2章 家族のこと 第3章 病いのこと、カラダのこと 第4章 仕事のこと 第5章 女のこと、男のこと 第6章 出演作品のこと といった構成になっています。 (『一切なりゆき』目次より引用) 樹木希林さんといえば、内田裕也さん。
まるで後を追うように、今年(2019年)亡くなられました。 この本を読むと、希林さんの性格や生き方を感じる以上に、内田裕也さんがどんな人だったのか理解できると思います。 例えば、内田裕也さんは財布に3万円しかなくても100万円のお買い物をするような人だったそうです。 普通、そんなことをする人は、病的に金銭感覚がないか、あるいは極端な見栄張りだと考えてしまいます。 しかし、裕也さんの散財には別の理由があったのです。 希林さんは常々、舞台出演の際、楽屋に届けられる花が多すぎることを贅沢なことだし、もったいないことだと思っておられ、友人知人に「楽屋に花なんか贈らなくていい」と言っていたそう。 それを聞いた裕也さんは「花屋も生活がかかってるんだ!」と怒るんですって。 そういう人だから、お店に足を踏み入れたら、絶対に何かお買い物をせずには出られない。お店の人にも生活があると思うから。 そして希林さんに「お前もなんか買え!」。 そんなことで、持っている以上のお金を使ってしまうというわけ。 また、若い時の希林さん(悠木千帆だった頃かな?)はしょっちゅう毒を吐いていて、周囲から煙たがられていました。影で悪口を言う人もいたのでしょう。 それが裕也さんの耳に入ると、裕也さんは相手のところに行って、体を張って喧嘩していたそう。 裕也さんの言うことには 「俺はお前をフォローするんでくたびれはてる」
(『一切なりゆき』P84より引用) 行動が極端すぎる気はしますが、裕也さんは独特の優しさと愛情の持ち主だったのですね。
失礼ながら私はずっと、樹木希林さんほどの人が、どうして内田裕也なんかといつまでも別れずにいるのだろうかと思っていたのですが、何もわかっていなかったわけです。 よく、夫婦のことは夫婦にしかわからないと言うけれど、まさにその通りでした。 希林さんの言葉を通してわかるのは、裕也さんのことだけではありません。 娘さんである内田也哉子さん、娘婿の本木雅弘さん、そして杉村春子さん、吉永小百合さん、森繁久弥さんなどのことも、希林さんというフィルターを通して知ることができ、今まで以上に親しみを感じるようになりました。 面白かったのは郷ひろみさんとのご縁。 松田聖子ちゃんが一方的なお別れ会見を開いた後、ひろみくんは全くマスコミに出なくなります。事務所側は、なんとかきっかけが欲しいと思うわけです。 そんな中、ひろみくんが希林さんとなら話すと言っていると聞き、希林さんは比較的中立の立場で記事を書いていた「サンデー毎日」に二人の対談記事を掲載するよう尽力します。 希林さんにしてみれば、一緒にヒット曲を出したひろみくんを復活させたいけれど、松田聖子ちゃんを悪者に仕立て上げたくもない。 あっちも立てて、こっちも立てて、なんとかしてあげたいと奮闘した希林さんが当時を振り返って言うひとことが笑えます。 だけど、今の二人を見てると、全く必要なかったんですねぇ(笑)、私の方がなんとかしていただきたい。
(『一切、なりゆき』P139より引用) ところで、この本のタイトルの由来は、希林さんが色紙にサインするときに添えておられた言葉「私の役者魂はね、一切なりゆき」なのですって。
ただ、也哉子さんがみてもらった占い師の言葉、 「お母さんはつまんないことでちょっと転んで、あれ、起き上がらないなと思って見てみたら死んでるとか、そう言う簡単な死に方をします」
「お母さんが死ぬときには即座にお父さんの襟首捕まえて逝くから大丈夫よ」 (『一切なりゆき』P111より引用) にはゾクッとせずにはいられません。
人生は「なりゆき」なのか、あるいは「必然」「運命」なのか。 色々なことを感じさせてくれる希林さん語録でした。 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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