九十歳。何がめでたい(佐藤愛子)
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![]() 九十にしてなお意気軒昂。パワーをもらえること間違いない 九十歳。何がめでたい
佐藤 愛子(著) 作家佐藤愛子さんは、昨年(2016年)の11月5日に九十三歳になられました。
私はこのかたのエッセイが大好き。どんな困難に直面しても、どこか明るい。突き当たりまで行ってしまったら、ええい、なるようになれ!なんとかしてみせる!そんな肝の据わった女性と拝察しています。 『90歳。何がめでたい』は2015年4月から2016年6月まで、女性セブンに連載されたエッセイをまとめたものです。 ご自身の思い出、おざなりな作りのテレビ番組のこと、高齢者を狙った詐欺の話、そしていじめによる自殺のことなど、話題は多岐にわたっています。 どんな問題に対しても、佐藤さんの意見ははっきりしており、スパスパものをいう様子がとても面白い。 とはいえ、同じく作家の曽野綾子さんのような、切れ味鋭い怜悧な感じではなく、どこか明るく温かく、愛嬌があります。(私は曽野綾子さんの文章も好き。どちらが良い悪いの話ではありません) 29編からなるこのエッセイに、たびたび上っているのが新聞の身の上相談。人生山あり谷あり、さまざまな苦境を、度胸と才覚で乗り越えてこられた佐藤さんからすると、質問内容はあまりにもぬるく感じられるのでしょう。結構厳しい感想を述べておられます。 確かに新聞の身の上相談の中には、私でさえ、「そんなこと、相談するまでもないでしょう」「はー。それしか悩みがないとは平和だなぁ」と思うことはたまにあります。 佐藤さんは、どんな質問にも一生懸命答える回答者に深く同情する、と締めくくっています。この話も私が書くと、なんとなく きつい感じがするかもしれませんが、佐藤さんが書くと、なんだか笑えるんです。人徳かもね。 収められたエッセイの中で私が一番好きなのは、佐藤さんの愛犬 ハナにまつわる「グチャグチャ飯」。 ハナとの出会い、思い出が綴られ、「もっと長生きできると思っていたのに亡くなったのは、私が与えていたのが”グチャグチャ飯”だからではないか」と心を痛める佐藤さん。グチャグチャ飯とは、佐藤流”ぶっかけご飯”です。 このあたり、愛犬を亡くしたことがある人は気持ちがわかりすぎて泣くと思います。もっと長生きして欲しかったのに、あれが悪かったのか、これが悪かったのか、自分がわんこにしてきたことを省みて、思い悩まずにはいられないというのが。 そんな佐藤さんの思いは、ある人の言葉で晴れます。どんな言葉かは直接お読みください。ああ、思い出しても泣けてくる。本当に「グチャグチャ飯」は良い話ですよ。この本は活字が大きめで、老眼の方でも読みやすいのが優しいではないですか。 それにしても『九十歳。何がめでたい』って、このお歳になってもこんなエッセイが書けることが、めでたいではないですか!九十過ぎてもなおお元気な佐藤愛子さんのパワーをもらえること間違いない一冊です。 佐藤愛子さん、これからもお元気にお過ごし下さい! 私もこんな九十歳になりたい! ![]() ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』 |
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