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諦めない女(桂望実)

これからもっと「諦めない女」にならねば

諦めない女
桂望実(著)
『諦めない女』と聞いて、どんな女性を想像されますか?

執念深い女?
往生際の悪い女?
なんとなくマイナスイメージを抱きませんか?

でも桂望実さんの『諦めない女』は、ちょっと違いました。
飯塚桃子は35歳のフリーライター。小さな仕事をあっちこっちからもらって、なんとか生活している状態だ。

世間から注目される題材を取材して出版し、一発当てたいと考えていた。そして、実際に、大きなチャンスを手にいれた。

12年前に、買い物の途中で母親が目を離したすきに、6歳の女の子が行方不明になってしまうという事件が起こった。

営利誘拐かと思われていたが、犯人からの接触はなし。みなが少女のことを諦める中、母親だけは諦めずにいた。その母親への取材の許可を得られたのが桃子だったのだ。

桃子は、事件の当事者である子どもの両親や祖父母、学校の同級生など、関係者のインタビューを丁寧に行い、ルポルタージュをまとめることにした。

しかし、いろいろな人に話を聞くにつれ、改めて、自分が扱っている題材がとんでもなく大きなものだと自覚する。そして一人一人に感情を揺さぶられていくのだった。

本当に自分に書けるのか?不安にもなるが、絶対に他の人に譲れない。出せば必ず当たる素材なのだから……
この小説は子どもを誘拐された母親、京子へのインタビューから始まります。

確かに子どもから目を離したのは良くなかったけれど、事情を聞けば、どこにでもありそうな状況で、同情せざるを得ません。

以来、いなくなった子どものことを常に考える京子。常軌を逸している感も否めません。

一方、いなくなった子どもの父・慎吾は、普通に出勤し、日々を過ごすようになります。娘がいなくなったことが悲しくないわけはない。

でも、稼がなくては生きてはいけないし、むしろ仕事をしている間は行方不明の娘のことを少しでも忘れていられて助かっている面もある。これも、同情せざるを得ません。

常に子どものことが頭から離れない京子からすると、普通に出社し、社会生活を送る夫が信じられないし、慎吾はというと、妻がいつまでも引きずっていることを、わからないでもないけれど、いい加減に現実を受け入れろよ、と思ってしまいます。

第一、お前が目を離したりしなければこんなことにはならなかったのに、と心のどこかで妻を責めてしまう……。

ああ、ある日突然子どもを失うってこういうことか、と辛い気持ちになりました。

ところで肝心の、行方不明になった女の子がどうなったのか、途中までは全くわからないような作りになっています。

桃子のインタビューが進むにつれて、それが明らかになってくるのですが、その面白いこと!

いや、面白いという言葉は不謹慎かもしれません。世界で起こっているとされる、子どもにまつわる 闇の問題と繋がっていくのですから。

怖い、けど先が気になって仕方がない!

もう途中からは続きを読みたくて読みたくて、仕方がなくなりましたよ。例えば運転中の信号待ちの間にも読みたいと思うくらいに。(もちろん読んでおりませんけどね)

読み終わった時に、強く感じたことは、作中に出てくる「諦めちゃダメ。諦めたらそこで終わってしまうから」という言葉の重み。

桃子のルポルタージュ本は、小説の中ではまだ完成しないのだけど、おそらく、桃子はくじけそうになった時にこの言葉を思い出し、りっぱな本を出版することでしょう。いや、そうであって欲しい。

私も結構諦めの悪い女を自負しているけれど、これからはもっと「諦めない女」にならねば。為せば成る、為さねば成らぬ何事も!!

この本の後半の面白さを損なわないために、肝心な部分には一切触れないようにしています。本当はあれもこれも書きたいし、触れておきたいのだけど、我慢我慢。ぜひぜひお読みください。

桂望実さんの『嫌な女』の感想はこちら⇒[千波留の本棚] 桂望実『嫌な女』
諦めない女
桂望実(著)
光文社
小学生になったばかりの沙恵は、学校帰りに母京子の勤務先に寄り一緒に帰宅する。スーパーに入った京子は、入口のベンチで待っていたはずの沙恵が、忽然と姿を消し狂乱する。そして数年が経ち、離婚した京子は今日もひとり、わが子の帰りを待ちながら、情報を集めてビラを撒く。失われた時間、果たせなかった親子の絆を求めて…。 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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