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わかれ縁(西條奈加 )

身近に感じる江戸時代の離婚事情

わかれ縁(えにし)
西條 奈加(著)
この小説はこんな一文から始まります。
もう、嫌だ! 今度こそ、愛想が尽きた。
(西條奈加さん『わかれ縁』P7より引用)
主人公 絵乃の心の声です。

彼女の夫はお金にも女性にもだらしがなく、巨額の借金をこしらえています。

柄の悪い借金取りがやってきても夫は涼しい顔。全て絵乃がなんとかしてくれると思っているから。

そして自分は他の女性のところに入り浸っているのです。

夫が絵乃を甘く見るのは当然でした。

そんな夫から離れることができずズルズルと過ごしてきたから。

今度こそもう嫌だと思っても、この時代に離婚するには夫からの三行半が必要で、夫が、金づるである自分を手放すはずがない。しかも自分が帰る家は他にない。

どうすればいいのだろう……。

途方に暮れていた絵乃を見つけ、声をかけてくれたのは公事宿「狸穴屋」の手代である椋郎でした。

公事とは今でいう裁判と考えれば良いようです。

公事宿は、地方から公事のために出てきた人の宿泊施設。

ただし、ただ泊めるだけでなく、彼らが役所に提出しなくてはならない書類の作成や手続きの代行、弁護士的な役割もこなすのも、公事宿の仕事のうち。

現代のホテルと司法書士と弁護士を一つにまとめたような施設です。

当然、幕府からの許可を得て営業しています。

刑事事件に強い弁護士もいれば、民事に強い弁護士もいるように、公事宿にも得意なジャンルがあるようです。

狸穴屋の得意なのは「離縁」。

なにせ、狸穴屋の女将は七度も離縁を経験していますから、大抵の縁切りは仕切ることができるのです。

絵乃の離縁も請け負ってもらえそうだけれど、お金が全然足りません。

女将は絵乃に面白いことを提案します。

手代見習いとして住み込みで働くのはどうか、と。

そうすれば色々な事例を見ることができ勉強になるだろうし、いずれ一人前になれば稼ぐこともできるだろうというのです。

今度こそ夫と縁を切りたいと本気で思った絵乃は、その提案に乗りました。

公事宿に住み込んだ絵乃は、色々な事例を見ることになります。

無駄遣い癖のある母親と実直な商売人である父親、
2人を離婚させて欲しいとやってくる子どもたち。
離婚後、一人息子を後継として欲しがる父方母方両家。
嫁姑の仲が悪く、嫁を離縁したいという夫……

いかがですか?

江戸時代のお話ですが、現代にも通用する話ではないですか。

数ページ読んだだけで、絵乃を身近に感じ、先行きが気になって、どんどん読み進めてしまいました。

公事宿に住み込みで働くことで、読み書き算盤を改めて学び、生活力をつける絵乃。

金銭面だけではなく、自分のトラウマに向き合い、精神的にも成長していく絵乃を見守るのが楽しいんです。

そして、七度の離婚経験者であるサバサバ女将がややこしい物事をさばいていく手際の良さも痛快。意外な江戸時代の事情も面白い。

結局絵乃の離婚は成立するのか?!ぜひ読んでみてください。
わかれ縁
西條 奈加(著)
文藝春秋
結婚して五年、定職にもつかず浮気と借金を繰り返す夫に絶望した絵乃は、身ひとつで家を飛び出し、離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」に流れ着く。夫との離縁を望むも依頼できるだけの金を持たない彼女は、女将の機転で狸穴屋の手代として働くことに。果たして絵乃は一筋縄ではいかない依頼を解決しながら、念願の離縁を果たすことができるのか!? 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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