言葉ダイエット(橋口幸生)
勉強になります! 言葉ダイエット
橋口幸生(著) 喋ったり書いたり、言葉を使う仕事をしています。スキルアップにと、橋口幸生さんの『言葉ダイエット』を拝読しました。
橋口さんは電通のコピーライター。 お仕事柄毎日、多くの企画書やメールなどに目を通されるのですが、「この人は何が言いたいのか?!」と首を捻る文章が多いのだそう。 意味が伝わらない原因の多くは、過剰な言葉。 言葉足らずで真意が伝わらないのではなく、あれも伝えたいこれも書かねばと欲張りすぎて、核心がぼやけてしまっているのですって。 過剰なまでの丁寧な言い回しがそれに追い打ちをかけていることも。 そこで橋口さんは提案しておられます。 「言葉ダイエットをしましょう」と。 橋口さんはまず、なぜ読みにくいメールや企画書、エントリーシートになってしまうのかを分析。次に、言葉ダイエットで短く書くことを提案。 肥満体のメールや企画書のサンプルから言葉を省いたり最適化したりする言葉ダイエットの練習問題も掲載されています。 もちろん、言葉ダイエットも実際のダイエットと同じで、ただガリガリに痩せればいいというものではありません。 最後には、読みたくなる文章の書き方も伝授してくださいます。 参考になることだらけで、本がヤマアラシになるくらい、付箋を貼りまくりましたよ。 特に参考になったのは「させていただく」症候群。 「〜させていただきました」「させていただきます」など、最近は「させていただきます」だらけ。 橋口さんはこれを「ムダ敬語」とバッサリ。 させていただきました症候群の背後にあるのは、「主張はしたいけど、嫌われなくない」という心理です。
(橋口幸生さん『言葉ダイエット』P39より引用) ああ、わかります!
「させていただく」症候群は、しゃべり言葉にもあって、テレビを見ていたらほとんどの司会者が「させていただく」を多用しています。 そういう私もラジオ番組で話すときに、結構な頻度で「させていただく」と言っています。 その背後にあるのは「クレームをつけられたくない」という心理。 本来なら「〜いたします」と言うべきところでもとりあえず丁寧に言っておけば間違いないという風潮があるのです。 ああ、お恥ずかしい。 恥ずかしいといえば、長文書きの私にぐさっと刺さるご指摘がありました。 ちょっと長いですがご紹介します。 読みやすい文章を書くためには、ある程度のスキルやノウハウも必要です。
しかし、本質的には「自分以外の誰かを、どれだけ思いやれるか」ということなのです。つまり「想像力」です。 読み手の気持ちを想像すれば、カタカナ語を連発した、何十文字も続く長文は書けないはずなのです。 言葉を換えれば、読みにくい文章とは「読み手そっちのけで、自分のことばかり考えている文章」とも言えます。 自分の言いたいことを全部詰め込むから、ダラダラ長くなる。自分が傷つきたくないから、「させていただきたいと思います」のような回りくどくて不自然な敬語を使う。 すべては「想像力」の問題なのです。 (橋口幸生さん『言葉ダイエット』P203より引用) 想像力が大事であることは、アインシュタインも言及しています。
「想像力は、知識よりも大切だ。知識には限界がある。想像力は、世界を包み込む」と。 自分が想像力を働かせずに「読み手そっちのけ」「聴き手そっちのけ」になっていないかどうか、考え込んでしまいました。 しかし、落ち込んでしょげ返る必要はなさそうです。 橋口さんは同時にこうもおっしゃっていますから。 「何歳からでも、おもしろくなれる」。
(橋口幸生さん『言葉ダイエット』P152より引用) 人におもしろいと感じさせるものは何か、については、実際に『言葉ダイエット』を読んでみてくださいね。
『言葉ダイエット』は文章を「書く」ことについて書かれた本ですが、「しゃべり言葉」についても当てはまることが多くて、本当に勉強になりました。 夏休みの作文教室の指導にも役立ちそう。 これから「言葉ダイエット」頑張ります! 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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