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美しい日本のくせ字(井原奈津子)

手書き文字に興味は尽きず。

美しい日本のくせ字
井原奈津子(著)
著者紹介欄を見てちょっと笑ってしまいました。井原奈津子さん、くせ字愛好家ですって。そんなジャンルがあったとは。

そしてページをめくって、井原さんのくせ字愛の熱さにびっくりしました。

著名人から名もない人まで、集めに集めた字の数々。すごいわ、面白いわ。

顔や姿形性格が一人一人違うように、字もまた全然違う。十人十色なんて言葉では足りないです。

有名人の字として最もインパクトが強かったのは稲川淳二さんの字。

全国から集めた怪談のネタ本なのですが、まずインクの色が尋常じゃないの。

「なにこれ、血?!」

使っているのはPILOTのHI-TEC-Cの0.5ミリ、「マンダリンオレンジ」ですって。ああ、赤じゃなかったんだ。

怪談のおどろおどろしい雰囲気を出すためにこの色を使っておられるのかと思いきや、稲川さんなりの事情がおあり。

それを読んで、私も「マンダリンオレンジ」を使ってみたくなりましたよ。

私は文房具フェチで、買い物をしないときも、文房具屋さんを一周してチェックをしているのですが、マンダリンオレンジってあんまり見かけませんよ。

稲川さんは、お店で見かけると、あるだけ全部買うそうです。ふーむ。すごいぞ。

色のすごさと同時に、稲川さんの字体にも驚きました。なんと表現したらいいか。綺麗、端正、読みやすい、活字フォントみたい……

著作権(もしかしたら肖像権か?)もあり、ここに掲載できないのが残念でたまりません。ぜひ、インターネットなどで「稲川淳二 字」と検索してください。

稲川さんは怪談師、ではなくて、元々デザイン系のお仕事をされていたのですよね。そのセンスが字に現れていると思いました。一度見たら忘れられない字です。

有名人といえばもう一人、松田聖子さんの字の変遷について。

井原さんの考察が面白くて、笑ってしまいました。井原さん、本当に「字」が好きなのねぇ。

名もない人の字の紹介ページで、私が声をあげたのは「事務員G」さんの字。定規をあてながら書いた字です。

文字の下の部分が定規に当たるので、文字が独特の面白い形になります。罫線がなくても罫線があるように見えるから読みやすい。

私がなぜ声をあげたかというと、高校生の時、私も定規をあてて、同じような字を書いていたから。自分のノートの字を思い出しました。

なぜ定規をあてて字を書くようになったのか?

それは自分の字がどうにも不安定で、パッと開いたノートが全然綺麗に見えなくて、どうにかして整った字を書きたいと編み出した方法だったのです。

「事務員G」さんも字が下手だというコンプレックス解消のため、定規を使い始めたんですって。いやー、全国にはもっと定規文字の人がいらっしゃるのかも。

再び高校時代の私の話に戻ります。

美文字とは言えないとしても、定規文字でノートが整って満足していた私ですが、ガンコで怖い生物の先生が私のノートを見て、今でいう「二度見」をしたのです。

「ん?!なんじゃこの字は?!」っていう感じ。そして私にノートを返しながらニヤリ。

「読みやすい字を書きますなぁ!」

今思うと、ユニークだと褒めてくれていたのかもしれないのに、そのときの私は、それを皮肉と受け取りました。

やっぱりこんなヘンテコな字を書いていてはいかん!なんとかしたい!

それで私がどうしたか?同学年のある女子のところに行って、頼みました。

「お願い、あいうえおかきくけこ…五十音を書いてくれない?お手本にしたいねん」

字の上手い人は何人かいたけれど、こういう字を書きたい!!と思えるのはその人の字だったのです。

頼まれた相手は、最初は面食らっていたけれど、私が本気なのがわかって、「ホンマに私の字で良いの?嬉しいわ」と言ってくれました。

そして翌日、彼女の美しい楷書文字の五十音が並んだきれいな便箋をもらったのです。

それから私は毎日授業中も、家でも、それを見ながら字を書いたんですよ。エブリタイムペン習字。

あの便箋はどこへ行ったんだろう。もう現物はないけれど、私の心の中には、いつも彼女の字がある気がします。

高校卒業後、全然会っていないなぁ。この場を借りて「まっつん!変なお願いを聞いてくれてありがとうね!」

この本の中に「美文字練習帳の選び方」について書かれた箇所があります。そこには「好きと思える字で選びなさい」と。

じゃあ、私は知らず知らずにそれを実行していたことになるわけね。

さっきからプライベートなことばかり書いていますが、最後にもう一つ。

字といえば、書聖と呼ばれた王羲之。この本の中にも登場します。

亡き祖父は晩年、本当に体が動かなくなるまで、毎日書を練習していました。入院中ですら欠かさずに。

兄弟が多く、家も貧しく、途中で学問を諦めた祖父は、ずっと独学で書道を勉強していたのです。そのお手本は「王羲之」。

あれは私がまだ小学校低学年だったある夏休み。書を練習中の祖父の手元をじーっと見ている私に、「王羲之、いう人の字をお手本にしてるんやで」と教えてくれたのでした。

以来「王羲之」は私にとってまさに「書聖」、特別な存在です。

『美しい日本のくせ字』著者の井原さんほどでないにせよ、私も人の手書き文字を見るのが大好きなのは、この祖父の影響ではないかと思っています。

もしかしたらあの世でも書をしたためているかも。
美しい日本のくせ字
井原奈津子(著)
パイインターナショナル
稲川淳二、南伸坊、レディ・ガガ、さらに王羲之などの古典文字から道ばたで拾った名も無き文字まで。手書き文字収集家井原奈津子が考察する、あんな文字、こんな文字。きれいな文字も、汚い文字も、みんなちがって、みんな美しい!くせ字練習帳付き! 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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