手洗いがやめられない(佐藤陽)
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![]() 身につまされた 手洗いがやめられない
記者が強迫性障害になって 佐藤陽(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。
その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。 2024月2月28日放送の番組では、佐藤陽さんの『手洗いがやめられない 記者が強迫性障害になって』をご紹介しました。 強迫性障害という病名をご存知でしょうか。 嫌なイメージや考え(強迫観念)が頭に浮かび、それに伴う不安や恐怖を打ち消す行為(脅迫行動)を繰り返す精神疾患です。 具体的にいうと、著者である佐藤陽さんは「洗浄汚染強迫」の症状を患っておられます。 汚れや病気が気になって、清潔にしたい、洗いたいという欲求が高まると、ずっと手を洗い続けずにはいられないのです。 10分、20分なんて単位じゃありません。1時間、2時間です。 職場ではアライグマと呼ばれていたこともあったそう。 ご自分でも、ここまでするのは異常だ、と分かっていてもやめられません。 それが強迫性障害ですから。 実は私も強迫性障害です。 医師の診断を受けたことがないのですが、この本を読む前から、そうではないかと思っていました。 私の場合は「確認脅迫」。 玄関の鍵を閉めたっけ? ガスの火を消さずに家を出てしまったのではないか? それが気になると、もう、帰宅して確かめずにはいられません。 我が家から歩いて2分もかからないところにバス停があります。 そこに行く途中に「あれ?鍵を閉めたっけ(ガスの火を消したっけ?)」と思ったら、もう引き返す以外にありません。 家に戻って鍵が閉まっている、ガスの火は消えていることを確認。 再度出発しても、バス停までたどり着く前にまた思うのです。 「あれ?鍵を閉めたっけ?」 理屈では分かっています。 さっき家に帰った時に、確認したんですから。 そもそも鍵は最初からちゃんと閉まっていたし、ガスの場合も、火はついていませんでした。 そしてそれをちゃんと確認したのです。 なのに、再度家を出ると心配になるのです。 確認のための行為で、鍵を開けたままにしてしまったのでは?とか、火がついていないか確認したつもりだったけど、うっかりして見落としたのではないか?と。 自分でもおかしなことをしている、理屈には合わない行動をしていると分かっていてもやめられません。たった2分ほどのバス停にたどり着くまで何度も何度も家にとって返してしまいました。 立派な強迫性障害です。 私の場合、鍵のかけ忘れに関しては割と早く抜け出ることができました。 「玄関が空いていたからって、どうなるっていうのか。死にはしない」と開き直ることで、症状が緩和されました。 ガスの火の消し忘れを心配することに関しては、なかなか症状が良くなりませんでした。 おそらく、ガスコンロの火の場合、火事の可能性を含んでいるため、家で留守番をしている犬猫が私のせいで亡くなってしまうかもしれないという強迫観念が非常に強かったのだと思います。 もちろん、実際にはガスの火をつけたまま外出していたことは一度もないのですが。 玄関ドアの強迫行動を抜け出たように、この症状もなんとかしたい! 私はまず、心配になったら外出先からガス会社に電話して、ガスの元栓を締めてもらう対策を取るようになりました。 昭和の昔はいざ知らず、今はリモートでガスの元栓を締めてもらうことができるのです。(ありがたい) バス停から、駅から、私は何回もガス会社に電話したことがあります。 オペレーターさんの「元栓を締めました。帰宅されましたら、ロック解除ボタンを押していただくか、再度お電話ください」という回答をどれほど頼もしく感じたことか。 ガスコンロが古くなった時、温度センサーにより、温度が上がりすぎた時は自動的に火が消えるガスコンロに買い換えたことも症状緩和に役立ちました。 もう一つ、私があまりにもガスの火の消し忘れに過敏になっているのを見た夫がカメラを取り付けてくれたことで、ほとんど強迫行動をしないで済むようになりました。 留守中のペットを見守るためのカメラなのですが、台所も映すことができ、スマホのアプリでリアルタイムのコンロの様子を見ることができるのです。 この3つの対策のおかげで私の強迫性障害は劇的に改善されました。 強迫性障害の症状は多岐に渡りますし、個人差があると思いますが、脅迫行動が過度に繰り返されると生活に支障が出ます。 食べ物に関する強迫性障害の場合、命に関わることもあります。 世界保健機関(WHO)の報告において、強迫性障害は生活上の機能障害をひきおこす10大疾患の一つとされているのですって。 もし、自分でコントロールできない「理屈に合わない行動の繰り返し」について、自分だけ異常なのではないかと悩んでいる方がいらっしゃったら「違いますよ」と言って差し上げたい。 この本を読んだらわかるのですが、強迫障害はある日、小さなきっかけで始まることがあります。 それは誰にでも起こることです。 誰かに聞いてもらったり、医療機関で治療を受けたり、症状緩和の方法があります。 今そのような症状でご自分やご家族、ご友人が悩んでおられる方に読んでいただきたいのはもちろんのこと、将来ご自分や身近な人が患った時に慌てないように、今は他人事の方にも読んでいただきたい一冊です。 【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】 この記事とはちょっと違うことをお話ししています。 (アプリのダウンロードが必要です) 手洗いがやめられない
記者が強迫性障害になって 佐藤陽(著) 星和書店 ある日、突然「赤いシミ」が気になるところから、すべては始まった…。すべてのものが汚く見えだし、手洗いやシャワーが4時間を超すことも。壮絶!現役朝日新聞記者とそれを支えた妻の「強迫性障害」体験記。朝日新聞「患者を生きる」連載、待望の書籍化! 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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