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強運の持ち主(瀬尾まいこ)

強運の持ち主
瀬尾 まいこ(著)
大学時代、私は部活(箏曲部)の合宿には必ずトランプを持って行っていました。

夜遅くなると、楽器の音が近所迷惑になるため、練習をすることができなくなるのです。

その時間帯にトランプを持ち出して、何をしていたか?

それは「占い」です。

私の母は霊感が強くて、どなたかの訃報を受ける前にボソッと予言をしたりしていました。

また、トランプで一人占いをしていることがあり、それを幼い頃から見ているうちに、門前の小僧よろしく私も、トランプで占いができるようになっていたのです。

部活合宿での占いですから、相手は同じ学生。

もちろんお金をいただくプロとしての占いではありません。

でも、毎回真剣に占いました。

自分で言うのもなんですが、結構当たると好評でだったのです。

今思うと、学生の悩みなんて他愛のないものばかりだから占うことができたのかもしれませんけど。

さて、瀬尾まいこ『強運の持ち主』。
主人公 吉田幸子の職業は占い師。ショッピングモールの一角を間借りして占いをしている。特に占いに興味があったわけではなく、「未経験者大歓迎。時給千二百円」の広告につられたのだ。

応募して1日目は研修。2日目には助手として先輩占い師を手伝い、驚いたことにその翌日からは、占い師として働き始めた。名前も吉田幸子ではなく、なにやらミステリアスなルイーズ吉田に変えて。

ルイーズは、最初のうちこそ占いの本を何冊も読み、参考にしながら真面目に占っていたが、慣れるに従って、直感で占うようになってきた。分厚い本を基にして、あれこれ計算するよりも、相手の話し方や容姿を見て判断したほうがよっぽど当たるのだ。

占いの師匠によれば、良い占い師というのは、適当なことを話して、相手の背中を押してあげられる人なのだそう。だとすればルイーズは立派な占い師と言える。

そんなルイーズのところに、さまざまな人が占いを受けに来る。「父と母のどちらを選ぶべき?」という小学生の男の子。「ある人を自分のほうに向かせたい」という女子高校生。ものごとの終わりが見えてしまう、という青年。ルイーズはそれぞれの背中を押してあげられるのか?
途中まで読んで、「なにこれ?!こんな占いで良いんだったら、私もそのショッピングモールに出店したいわ!」と憤慨しましたワ。

いとこの朝ちゃんがプロの占い師 なので、お金をいただいて占うことの大変さがわかるだけに、ルイーズのゆるさ、良い加減さに腹が立って。

でも徐々に、この小説の主眼はそこではないとわかり、あとは私ものんびり、おおらかに読ませてもらいました。

夫婦や家族の温かさが味わえる小説でした。

ちなみに、私のトランプ占いですが、あることがきっかけで封印しました。

就職したあとだったと思います。

私が持っているトランプを遊びに貸して欲しいと言われ、断れずに貸してしまったのです。

そうしたら、なにを占っても全く当たらなくなりました。

占い用のトランプを遊びに使ってはいけなかったのになぁ、と後悔したけど後の祭り。

以来、しっくりするトランプと出会えず、今に至ります。

『強運の持ち主』を読んで、もう一度占い用のトランプを探しに行きたくなりました。
強運の持ち主
瀬尾 まいこ(著)
文藝春秋(2009)
元OLが営業の仕事で鍛えた話術を活かし、ルイーズ吉田という名前の占い師に転身。ショッピングセンターの片隅で、悩みを抱える人の背中を押す。父と母のどちらを選ぶべき?という小学生男子や、占いが何度外れても訪れる女子高生、物事のおしまいが見えるという青年…。じんわり優しく温かい著者の世界が詰まった一冊。 出典:(出典:amazon)
profile
池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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