大学時代、私は部活(箏曲部)の合宿には
必ずトランプを持って行っていました。
夜遅くなると、楽器の音が近所迷惑になるため、
練習をすることができなくなるのです。
その時間帯にトランプを持ち出して、何をしていたか?
それは「占い」です。
私の母は霊感が強くて、どなたかの訃報を受ける前に
ボソッと予言をしたりしていました。
また、トランプで一人占いをしていることがあり、
それを幼い頃から見ているうちに、門前の小僧よろしく
私も、トランプで占いができるようになっていたのです。
部活合宿での占いですから、相手は同じ学生。
もちろんお金をいただくプロとしての占いではありません。
でも、毎回真剣に占いました。
自分で言うのもなんですが、結構当たると好評でだったのです。
今思うと、学生の悩みなんて他愛のないものばかりだから
占うことができたのかもしれませんけど。
さて、瀬尾まいこ『強運の持ち主』。
***
主人公 吉田幸子の職業は占い師。
ショッピングモールの一角を間借りして占いをしている。
特に占いに興味があったわけではなく、
「未経験者大歓迎。時給千二百円」の広告につられたのだ。
応募して1日目は研修。
2日目には助手として先輩占い師を手伝い、
驚いたことにその翌日からは、占い師として働き始めた。
名前も吉田幸子ではなく、
なにやらミステリアスなルイーズ吉田に変えて。
ルイーズは、最初のうちこそ占いの本を何冊も読み、
参考にしながら真面目に占っていたが、
慣れるに従って、直感で占うようになってきた。
分厚い本を基にして、あれこれ計算するよりも、
相手の話し方や容姿を見て判断したほうがよっぽど当たるのだ。
占いの師匠によれば、
良い占い師というのは、適当なことを話して、
相手の背中を押してあげられる人なのだそう。
だとすればルイーズは立派な占い師と言える。
そんなルイーズのところに、さまざまな人が占いを受けに来る。
「父と母のどちらを選ぶべき?」という小学生の男の子。
「ある人を自分のほうに向かせたい」という女子高校生。
ものごとの終わりが見えてしまう、という青年。
ルイーズはそれぞれの背中を押してあげられるのか?
***
途中まで読んで、
「なにこれ?!こんな占いで良いんだったら、
私もそのショッピングモールに出店したいわ!」
と憤慨しましたワ。
いとこの朝ちゃんがプロの占い師 なので、
お金をいただいて占うことの大変さがわかるだけに、
ルイーズのゆるさ、良い加減さに腹が立って。
でも徐々に、この小説の主眼はそこではないとわかり、
あとは私ものんびり、おおらかに読ませてもらいました。
夫婦や家族の温かさが味わえる小説でした。
ちなみに、私のトランプ占いですが、
あることがきっかけで封印しました。
就職したあとだったと思います。
私が持っているトランプを遊びに貸して欲しいと言われ、
断れずに貸してしまったのです。
そうしたら、なにを占っても全く当たらなくなりました。
占い用のトランプを遊びに使ってはいけなかったのになぁ、と
後悔したけど後の祭り。
以来、しっくりするトランプと出会えず、今に至ります。
『強運の持ち主』を読んで、
もう一度占い用のトランプを探しに行きたくなりました。 |
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター
コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、
ナレーション、アナウンス、 そしてライターと、
さまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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著書:パーソナリティ千波留の読書ダイアリー
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。
だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。
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