くらくらのブックカカフェ(廣嶋 玲子他)
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![]() しんどい時は本の世界に逃げ込もう! くらくらのブックカフェ
廣嶋 玲子(著), まはら 三桃(著), 濱野 京子(著), 工藤 純子(著), 菅野 雪虫(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。
その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。 2024月11月27日放送の番組では、まはら三桃さん、廣嶋玲子さん、濱野京子さん、菅野雪虫さん、工藤純子さんの『くらくらのブックカカフェ』をご紹介しました。 この本は児童書です。 私は小学生対象の作文教室講師をしている関係で、児童書もよく読みますが、普段はブログに児童書の感想をあげることはまずありません。 今回は、この本の底に流れている「願い」のようなものを感じたので、児童書ではありますが、紹介させていただきます。 この本は5人の児童文学作家によるアンソロジーです。 アンソロジーとは、特定のテーマや基準で複数の作家や詩人の作品をまとめた作品集のこと。 『くらくらのブックカフェ』のテーマや基準は次の通り。 主人公は小学生で、蔵を改装したブックカフェが主な舞台。
そのカフェは普段子どもたちが足を向けないような場所にあり、主人公は猫によってカフェに導かれる。 カフェのマスターはお客一人一人にふさわしい飲み物とお菓子を出してくれる。 土蔵には本がたくさんあり、お客は好きな本を読むことができるが時間制限があり、出された飲み物がなくなったら終了。続きを読みたくても、そこでストップせねばならない。 料金は大人500円、こども100円。 ただし、自分が持っている本を1冊カフェに置いていけば、お金を払わなくても良い。 (『くらくらのブックカフェ』に収められた5つの短編に共通する設定を私なりに説明しました) 以上のような設定のもと、5人の児童文学作家さんたちがそれぞれの主人公をカフェに送り出します。
それぞれの主人公と、マスターがその子どもに出した飲み物とお菓子をご紹介しましょう。 ● まはら三桃さん『よつばが消えたら』
破天荒な友人と絶交したばかりの はるか。カフェラテと よもぎカステラ。 ● 廣嶋玲子さん『呪いの行く末』 いじめられっ子の亜希。ほうじ茶ラテと水まんじゅう。 ● 濱野京子さん『張り子のトラオ』 名前は強そうだけれど植物が大好きな優しい虎生。キャラメルラテとスイートポテト。 ● 菅野雪虫さん『バッドエンドのむこうに』 古本屋さんで結末のない本を買ってしまった蓮。カフェラテとくるみと黒砂糖の焼き菓子。 ● 工藤純子さん『もうひとつの世界へ』 好きな男子と、とても仲のいい女友達の間で板挟みの仁胡。カフェモカとフォンダンショコラ。 どの飲み物・食べ物もおいしそうですねぇ。
最近のお子さんには幼い頃から「カフェ」という感覚があるのでしょうか。 私が子どものころには、本を読みながら飲食をしても良い場所というのはなかったように思います。 小学生の頃から、構えずにお茶しながら読書ができるなんて、ちょっと羨ましい状況です。 これら主人公5人は、元々本が大好きな子もいれば、そうでもない子もいます。 でも、不思議な導きのようにこのカフェに来て、本を手に取り読み始めると、その「物語」の中に自分の姿を見出すのです。 友だちだと思っていた人に裏切られたような気持ちや、クラスの友人との距離の取り方に悩んだり、 周囲の人が自分に持っているイメージと素の自分とのギャップに悩んだり……。 自分の子どもの頃のことはすでに遠い昔であり、通り過ぎてしまえば全て小さな問題だったことに気がつくのですが、当事者にとっては大きな問題です。 主人公である彼らは、現実世界で悩んでいる時にはただモヤモヤするばかりだったのに、物語の中で起こる出来事や登場人物の心理の変化を客観的に見ることによって、実生活で起こった問題の解決の糸口を自然と見つけるのです。そういうことって、おとなになってもありますね。 だから、悩んでいる時には、一旦その悩みをどこかに置いておき、読書を楽しむのがいいのかもしれません。 児童文学作家さんの中には、子供のころにひどいいじめにあったり、複雑な事情があって家庭では安らげない経験を持った方がいらっしゃいます。 その方たちは、読書をしている時だけは夢のような世界で羽を広げ、辛い現実を忘れることができたと語っておられます。そしていつの間にか、ご自分が物語を紡ぐようになったのだと。 現実世界には蔵のブックカフェはないかもしれませんが、本はいろいろな世界の入り口になります。 特別な装置も、場所も入りません。本を開くだけでいいのです。楽しい世界、面白い世界、怖い世界や不思議な世界、どこにだっていけます。 今、もし辛いことがあるお子さんがいらっしゃったら、そこから一旦離れていいのだ、逃げることは悪いことではないよと教えてあげたい。 そんなとき、物語の世界はリスクが少なく、お金もかからない逃げ場です。 とはいえ、『くらくらのブックカフェ』にはそんな堅苦しいことは書いていません。 以上のことは私の深読みに過ぎないのかもしれません。 安心して不思議なカフェでの体験を楽しんでください。 くらくらのブックカフェ
廣嶋 玲子(著), まはら 三桃(著), 濱野 京子(著), 工藤 純子(著), 菅野 雪虫(著) 講談社 1つだけでも、続けて読んでもおもしろい!現代児童文学界のトップランナーたちが描く夢の競作リレー小説!猫にいざなわれた人だけがたどり着けるふしぎなブックカフェ。さあ、くらくらするような物語をどうぞ。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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