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君とパパの片道列車(灘中までの道)

勉強は楽しい

君とパパの片道列車
最難関校を目指した父子の中学受験日記
灘中までの道(著)
サブタイトル「最難関校を目指した父子の中学受験日記」というサブタイトルを見て、最近の中学受験がどのようなものか知りたくなって読みました。

「灘中までの道」という風変わりなペンネームは、Twitter(当時)のアカウント名。著者は、お子さんが小学5年生になった3月から1日も欠かさず中学受験についてのツイートを続けた方なのです。

私には子どもも孫もいませんので、今時の中学受験がどのようなものかは全くわかりません。

自分自身の受験時は、受験の心得、ノウハウ、などは塾の先生に教えていただいたり、近所の、年上のお姉さんの体験をお聞きするくらいしかありませんでした。

今は、SNSで中学受験のことをつぶやくことができ、いろいろな方と情報交換ができるんですね。

すごく羨ましい。

「灘中までの道」さんのご家族構成は、夫婦、お子さん二人。

ご夫婦は共働きで、近くに住んでおられる奥様のご両親が育児の手伝いをしてくださっています。

お子さんの受験勉強が始まったのは、小学3年生の2月。

新学期が始まる4月から塾に通っていては遅いらしいです。

その2ヶ月が大きな差になる、それを知っているかどうかでも、スタートダッシュが変わりますね。

塾に通うことになり、お子さんはピアノや水泳、書道など、それまで通っていた習い事をやめます。

週に2回の塾の日は、学校が終わると学童保育。帰宅後、おやつを食べて、祖母が駅まで送ってくれて、電車を乗り継いで30分かけて通うことになりました。

最初は、漠然と、兵庫県の私学に合格できたらいいね、と思っていたそうなのですが、ある日「灘中」という目標が定ります。

それは一つの問題からでした。

「灘中までの道」さんがお子さんの塾の問題集を何気なく見ていた時、手をつけていない問題があることに気が付きます。

どうしてその問題を解かずに飛ばすのか、聞いたところ

「それは灘中の問題だからやらなくていいと言われた」

とのこと。

見るだけ見たらどうか、どんなものか一度解いてみたらどうかと「灘中までの道」さんが勧めてみてもお子さんは「やる意味がない」の一点張り。

とても難しい問題であり、灘中を目指す「灘コース」に入っている人以外は、やっても意味がないと塾の先生がおっしゃっていたようなのです。お子さんは塾の先生をとても信頼してました。

そのことがあって「灘中」が親子の意識に登ってきたのでしょう。

そしてどうせ受験するのだったら難関校にチャレンジしてみようという気になります。

灘中の難しい問題をやってみたい、やれるようになりたいということです。

それ以降、塾の中の実力テストを経て、お子さんは「灘コース」に入ることができました。

灘中コースは、これまで通っていた塾よりさらに遠い場所にあります。

放課後、塾で授業を終えて電車で帰ってくる小学生……

いくら治安の良い日本だと言っても、想像すると少し不安になります。

お子さんに、パパに迎えにきてほしいと言われ、「灘中までの道」さんは決意します。

仕事が終わったら、家にまっすぐ帰るのではなく、お子さんの塾の最寄り駅まで移動し、塾帰りのお子さんと一緒に帰宅すると。

これまでは週2回の通塾でしたが、「灘コース」は平日3回と土曜日に塾があります。

「灘中までの道」さんは、週4回、お子さんを迎えに行く、まさに文字通りの伴走をすることになりました。

そのために、職場の皆さんにも事情を説明し、協力を仰ぎます。

私の中学受験の頃とは環境が全く違うのだなとびっくりしました。

時々「お勉強ができるからって、社会に出たら役に立たない」という意見をお聞きすることがあります。それは一部真実であり、間違ってもいると思います。

もちろん、お勉強ができても社会に適合できない人もいるでしょう。

でも勉強ができる上に社会でも活躍できる人もいるはず。

ゴリゴリの受験勉強をして難関校に入った人たちが、ガリ勉なのかというとそうでもないと私は思っています。

私は兵庫県生まれ兵庫県育ちなので、灘中はもちろん存じていますし、他の難関校の生徒さんを目にする機会が何度もありました。

その中で「やっぱりカシコは賢い」と思ったエピソードを紹介します。(関西人は賢いお子さんのことを「カシコ」と呼びます)

あれは私が中学生だったか、高校生だったか……

いわゆる難関校に進学した知人と喋っていた時のこと。

テストによっては、辞書持ち込みなども可能という話を聞いた時、私ときたら「辞書に色々書いてカンニングする人がいるんじゃないの?」と聞いてしまったのです。

すると相手はとても不思議そうな顔でこう言いました。

「何のために?」

え?

カンニングって、一般的にいい点を取るためにするものだと思うんだけど、何のためにってどういうこと?

今度は私の方が不思議そうな顔をしていたと思います。

すると相手は

「カンニングしても何の得にもならない。そのテストだけ良い点をとっても、知識とか理論が身に付いていなかったら何の得にもならない。後で困るのは自分。カンニングのために何かを書き写したりする暇があったら、その分問題を解いたり、考えたりする方が自分のためになる」

と答えました。

担任の先生はテストのたびにおっしゃるそうです。

「カンニング?したかったらなんぼでもしてええで」と。

その話を聞いて、私は穴があったら入りたいくらい恥ずかしかったことを今でも思い出せます。

本当に恥ずかしかったですわ。

そして「やっぱりカシコは本当に賢いわ。物事の本質をちゃんとわかって行動するねんなぁ」としみじみ思ったのでした。

「灘中までの道」さんの中学受験記を拝読すると、ここまで徹底しないとダメなのか、とか、難関校を片っ端から受けるなんて、受験料だけでも大変だなぁ、などと色々感じることはあります。

だけど、本人にやる気があり、家族が同じ方向を向いているのであれば「やれることは全部やる」のが正解かもしれません。

中学受験のチャンスは一生のうちに一度だけなのだから、悔いがないようにできる限りのことをするのが良いのでしょう。

それにしても「灘中までの道」さんのお子さんの受験勉強を本を通して横から覗き見しているうちに私も無性に勉強したくなりました。

難しい問題にくらいつき、一生懸命に解くことに喜びを感じているお子さんが、とても楽しそうなのです。

答えが間違っていた場合、何度も見直し、考え直し、回答できて納得した時の喜びも伝わってきます。

ご本人も受験勉強を「楽しかった」とおっしゃっているとか。

受験が楽しい、勉強が楽しいって最高じゃないですか。

私もそんな喜びを感じてみたい!

早速小学5年生の算数を勉強し直すことにしたのでした。

侮ってはいけませんね、計算ミスをしたり、思い込みで問題文を誤解したりして、なかなか満点は取れません。

「灘中までの道」さん父子のおかげで、勉強は楽しいということを教えてもらいましたよ。
stand.fm
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【パーソナリティ千波留の読書ダイアリー】
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君とパパの片道列車
最難関校を目指した父子の中学受験日記
灘中までの道(著)
光文社
関西の最難関、灘中を目指す息子。新小4から塾通いを始め、小5からは灘コースのある遠い校舎まで片道1時間の遠距離通塾がスタート。帰りは必ず仕事終わりのパパが塾まで迎えに行き、電車の中で復習をする日々。最難関への受験勉強は過酷を極め、何度も訪れるピンチを切り抜ける家族。ついに迎えた入試本番、そして合格発表ー働き方を改め息子の心身のサポートに徹するパパと、パパとの信頼関係の中でぐんぐん成長していく息子の姿に感涙必至。中学受験をとおして絆を深めた家族の、苦しくも幸せな受験日記。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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