物件探偵(乾くるみ)
不動産が泣く!?物件の謎 物件探偵
乾くるみ(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、乾くるみさんの『物件探偵』。ちょっと風変わりな小説でした。 ”主人公の名は不動尊子。ふどうたかこといいます。
「不動さん」と呼ばれることが多く、その音が「不動産」に通じることから、将来その道に進みたいと、15歳で宅地建物取引主任者の資格を取った。 念願叶って不動産の仕事についたものの、不動産への愛が深すぎるのか、最近は物件の気持ちがわかるように。泣いている不動産があれば、ついつい様子を見に行き、真実をつきとめてしまうのだった……。” (乾くるみさんの『物件探偵』を大まかにまとめました。なお「宅地建物取引主任者」は2015年4月1日から「宅地建物取引士」に名称変更されましたが、小説の中での表記に合わせています) 「不動産が泣いています」
「この物件は悲鳴をあげています」 ドアを開けたら見知らぬ女性が立っていて、そんなことを言われたら普通はビックリしますよね。 そこで不動尊子が取り出すのが宅地建物取引主任者証。まるで警察手帳のように、住人に提示するシーンがヘン。またそれに納得して尊子の話の続きを聞いてしまう住人もヘン。 『物件探偵』は設定がとてもヘンです。だけど、いったいどういうことなのか、気になってついつい先を読んでしまうことになるのです。そういう意味では私もヘンかもね。 ヘンといえば、小説の形態も少しヘン。最初のページに、物件の占有面積や値段や場所、間取り図、管理費や最寄駅などが書かれた不動産会社のチラシがついているのですよ。 私は見取り図を見るのが大好きだから良いのですが、風変わりな小説だなぁと思いました。 そもそもなぜ物件が泣いたり、悲鳴をあげたりすると思います? 理由は実にさまざまですが、一例をあげると、不動産会社の思惑で買い手に不利益が生じるとき。そんなことに悪用されるなんて、と物件が泣いているわけです。 ちなみに、物件(短編)の数は六つ。 ・田町9分1DKの謎 ・小岩20分一棟売りアパートの謎 ・浅草橋5分ワンルームの謎 ・北千住3分1Kアパートの謎 ・表参道5分1Kの謎 ・池袋5分1DKの謎 不動尊子がその手口やカラクリを説明してくれるのですが、「ええっ?!そんなことが可能なの?こわ〜!」不動産業者不信に陥りそうです。 不動尊子は泣いていた物件のそれぞれの謎を解き明かしてはくれますが、買い手にとっての真の解決をしてくれるわけではありません。 「え?ここで終わり?!そのあとこの人どうするの?」と思わずにいられません。 そこがちょっと物足りない気がするのだけど、きっとこの小説においては、そこが問題じゃないんでしょうね。 ちなみに私の実家が不動産業を営んでいた関係で、私も宅地建物取引主任者試験を受け、資格を持っております。 今、証明書を見たら更新年月の関係で、まだ旧の資格名「宅地建物取引主任者証」となっていました。 今年更新年なので「宅地建物取引士」に変わるのね。私も勉強し直して、物件の声が聞こえるまで頑張ろう…… なんてことは全く考えておりません。 物件探偵
乾くるみ(著) 新潮社 利回り12%の老朽マンション!?ひとりでに録画がスタートする怪現象アパート?新幹線の座席が残置された部屋??間取り図には、あなたの知らない究極の謎が潜んでいる。大家さんも間取りウォッチャーも大興奮の本気で役立つリアル不動産ミステリ! 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』 |
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