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常設展示室(原田マハ )

「好き」を仕事にしている人たち

常設展示室
原田マハ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、原田マハさんの『常設展示室 Permanent Collection』

『常設展示室 Permanent Collection』は6つの作品が収められた短編集です。

一話ごとに一つ、有名な絵画をめぐるエピソードが描かれていることと、全て女性が主人公で、一話を除いて全員が絵画関係の仕事をしているという共通点があります。

絵画関係といっても、メトロポリタン美術館の教育部門勤務からギャラリー勤務まで様々です。

活躍の場は違っても、主人公たちはみな、絵が、アートが好きなのです。

「好き」を仕事にできる人はそう多いとは言えないでしょう。

しかし自分が好きで始めたことだから頑張れるし、情熱を燃やし続けて、努力できるのかもしれません。

タイトルと、作中に登場する絵画をご紹介します。

『群青 The Color of Life』
ピカソ<盲人の食事>

『デルフトの眺望 A View of Delft』
フェルメール<真珠の耳飾りの少女>

『マドンナ Madonna』
ラファエロ<大公の聖母>

『薔薇色の人生 La Vie en Rose』
ゴッホ<ばら>

『豪奢 Luxe』
マティス<豪奢>

『道 La Strada』
東山魁夷<道>

六作のうちで私が最も感動したのは『道 La Strada』です。
主人公 貴田翠は裕福な家庭に育ち、子供の頃からパリやミラノで暮らした。

パドヴァ大学で近代美術を学び、オックスフォード大学院で博士号取得。美術評論家として活躍後、イタリアの大学で現代美術に関する教鞭をとった。

日本の芸大教授として呼び戻されてからも、愛車はイタリアのスポーツカー、マセラッティという華やかさ。

立派な経歴と美貌の持ち主である翠はメディアからの取材も多く、その影響力を見込まれて、美術賞の審査員にまでなってしまった。

翠は、美術賞の選考方法を一新することを提案した。応募者の氏名、経歴、作品タイトルを全て伏せて、作品だけを見て選ぶようにすべきだと。

長く続く美術賞では、審査員の縁故や派閥など、作品の魅力以外のものが審査に影響を与えてきており、その結果賞の値打ちが下がってしまっていたのだ。

それを翠は打ち破った。もちろん審査員たちからの反発はあったが、悪習を絶ったことで、美術賞への応募は増えた。今年も千点以上の応募があったらしい。

最終選考に残った作品を審査する席で、翠は一本の道を描いた水彩画に惹かれた。

もしかしたら自分の知っている人が描いたものかもしれない……
主人公 翠の幼少期と今が交互に描かれ、絵が翠と「ある人」との縁を結ぶ様子が感動的でした

悲しいけれど、明るい物語です。

著者の原田マハさんは、大学卒業後、美術館に勤務していた経験があるのだそう。それが作品に生かされているのだと思います。

お恥ずかしいことに、私が調べずに思い浮かべることができた絵はフェルメールの<真珠の耳飾りの少女>だけでした。

あとは小説を読みながら、ネット検索してどんな絵なのか確かめた次第です。

絵について詳しいかただったら、それぞれの短編に寄せられた著者の思いをもっと受け取ることができるかもしれません。
常設展示室
原田マハ(著)
新潮社
人生の岐路に立つ人々が世界各地の美術館で出会う、運命を変える一枚。アート小説の第一人者が描き出す、最新短篇集。人生のきらめきを描き出す、極上の6篇。 出典:amazon
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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