その本は(又吉直樹/ヨシタケシンスケ)
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![]() 本好きが集まって作りあげた面白い本 その本は
又吉直樹/ヨシタケシンスケ(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、ヨシタケシンスケさん、又吉直樹さんの『その本は』。 人気絵本作家のヨシタケシンスケさんと、芥川賞作家の又吉直樹さん。 お二人の共著であることに、まずは興味を惹かれました。 一体どういう内容なのかしらん? 『その本は』というタイトルから、私はてっきり、いろいろな本について二人が語り合う趣向かと思い込んでしまいました。 ところが、そうではありませんでした。 本が大好きな王様がおりました。
しかし、王様は歳をとって目が悪くなり本が読めなくなってしまいました。 そこで、王様は二人の男を呼び寄せ、世界中を旅して珍しい本を探し、その本について自分に報告するよう命じたのです。 王様はたいていの本は読んでいるので「珍しい本を」と指定したのでした。 そこで二人の男はそれぞれ旅に立ち、世界中を旅して珍しい本を探しました。 1年後、二人は戻ってきました。 そして、二人は変わりばんこに、自分が出会った本の話を毎晩1つづつ王様に報告したのでした…… (ヨシタケシンスケさん 又吉直樹さん『その本は』の出だしを私なりにご紹介しました) 出だしのご紹介の通り、第一夜は又吉さん、第二夜はヨシタケシンスケさんがそれぞれ「その本は」という出だしで始まる話を披露します。毎晩王様にお話をするなんて『千夜一夜物語』みたいですね。
又吉さんのページは文字だけ、ヨシタケさんのページはもちろんイラストと手書き文字で。 最初はどちらも小話のような、あるいは一休さんのトンチ話のような、短い「その本は」が続きます。 軽い気持ちで読んでいると、途中で、心に刺さる「この本は」が登場します。 第7夜、又吉さんの「その本は誰も死なない。」で始まる物語がそれ。 小学校5年生の時にやってきた転校生と「僕」の物語です。 転校生は自己紹介の時に名前と将来の夢を語ります。彼女の夢は絵本作家になることで「僕」の夢と同じでした。 同じ夢を持つ二人は徐々に親しくなり、交換ノートを始めるのですが、そのことで「僕」は彼女がとても辛い状況にいることを知るのです。 「それで?それで?彼女はどうなるの?」 『その本は』の中で物語を聞いていた王様もきっと、私と同じことを考えたことでしょう。 でもこのお話は短編で、彼女がどうなったかまではわからないのです。 又吉さん!!このお話をどうか単独で書いてください。切にお願いいたします。 それ以外にも、娘の結婚式でトランペットを吹くお父さんの話や、自分を励ましてくれた本がもしかしたら自分一人のために書かれたものであるかもしれないとわかった話など、「これをもっと深く単独の小説として読みたい」と思うものが後半に多く現れてきます。 「あら、最初はトンチ話ばかり集めているのかと思ったら、意外に感動するワ」 そう思いつつ最終章「エピローグ」に進んだら、あらあらあら、笑ってしまうオチがついていました。 『その本は』は装丁にもこだわっていて、実物の本自体が王様の命によって作成された本だという仕立てになっています。ですから、本についている帯を外すと日本語のタイトルの他に金色のアルファベット(ローマ字)表記があり、なんだか立派な感じです。ページもわざと四隅がセピア色に変色したようにしつらえてあり、いつの時代のどんな王様が作らせた本なのだろうと思わせるようにできています。 つまり、細部にこだわった面白い趣向の本なのです。 本好きの大人たちが集まって作りあげた面白い本、それが『その本は』なのだと思いました。 よくこういう企画を思いついたものですねぇ。 その本は
又吉直樹/ヨシタケシンスケ(著) ポプラ社 本の好きな王様がいました。王様はもう年寄りで、目がほとんど見えません。王様は二人の男を城に呼び、言いました。「わしは本が好きだ。今までたくさんの本を読んだ。たいていの本は読んだつもりだ。しかし、目が悪くなり、もう本を読むことができない。でもわしは、本が好きだ。だから、本の話を、聞きたいのだ。お前たち、世界中をまわって『めずらしい本』について知っている者を探し出し、その者から、その本についての話を聞いてきてくれ。そしてその本の話を、わしに教えてほしいのだ」旅に出た二人の男は、たくさんの本の話を持ち帰り、王様のために夜ごと語り出したー。お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹と、大人気の絵本作家ヨシタケシンスケによる、笑えて泣けて胸を打たれる、本にまつわる物語。 出典:楽天 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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