ランチ酒 おかわり日和(原田ひ香)
いつだって誰かが誰かを見守っている ランチ酒
おかわり日和 原田ひ香(著) 犬森祥子、30歳過ぎ、現在独身一人暮らし。今日のランチは表参道で。少し前から焼き鳥が食べたかった。焼き鳥に生ビールは最高の取り合わせではないか。
最近はスマートフォンで食べたいものを検索すれば、お店がどこにあるかすぐわかる。歩いて行ける距離に「焼き鳥丼」の店を見つけた。 開店5分前だったというのに、すでに客が入っている。かなりの人気店なのだろう。生ビールと一緒に食べる焼き鳥丼は大当たりだった…… (原田ひ香さんの『ランチ酒』第一話の食事シーンを私なりにまとめました。) 犬森祥子、なんというお気楽なヤツ。
この辺りまで読んだ時、私はそう思いました。 昼日中から生ビールに焼き鳥丼、さぞや美味しいことでしょう。 祥子は生ビールを頼むのに、全く迷いがありませんでした。 つまり、かなり頻繁にお昼から飲んでいる人なのですよ。 しばらく読むと昼からアルコールを飲むのは「頻繁に」ではなくて「ほぼ毎回」であり、なんだったらモーニングから飲んでいることがわかってきます。 なんという自由な。 祥子は、幼馴染が経営している「何でも屋」に勤めています。 ここの経営者の方針は「性的なサービス以外なら なんでも引き受ける」なので、依頼はいろいろ。 年配者の通院の付き添いだったり、受験生の夜食を作ることだったり、スマホ依存症の女子大生が少しでも眠るように一晩中付き添ったり……大雑把に言えば、祥子は「見守り屋さん」と言えるでしょう。 勤務が終わるのが朝、あるいは昼になることが多く、仕事終わりの一杯を楽しみたくなるのも無理はないかもしれません。 仕事をして、美味しいものを食べて、飲んで、楽しい人生だなぁと思いきや、祥子には悩みがありました。 それは、別れた旦那のもとにおいてきた娘のこと。 住むところも仕事もないまま婚家を出た祥子は幼馴染の何でも屋に拾ってもらったものの、子どもを引き取って育てることが出来ませんでした。 経済的な目処がたったら話し合おうと思っていたら、元旦那が再婚。 月に一度許されていた娘との面会も、新しい母親に慣れるまで、しばらく遠慮してほしいと言われ、すでに半年。 ランチ酒を楽しみつつも、娘のことが気になって仕方がない、という状態です。 この小説は、祥子が依頼された様々な仕事と、見守る相手が抱えている問題、仕事終わりのランチ(モーニング)の描写、そして祥子と娘との関係など、色々なことがらが縦軸横軸になっています。 まずは世の中には色々な立場の人がいること、ちょっとしたことで他人の力になれるのだということに感嘆しました。 そして祥子と一緒にひと仕事終えた気分で読む食事シーンのおいしそうなこと! ああ、私もこの店で食事したい、一杯飲みたい!緊急事態宣言があけたら、私もおいしいお店を探すぞ! 仕事を通じて出会った人々から色々なことを学んでいく祥子。いつも「見守る」側の翔子を、読者が見守ることになります。 気がつかないうちに、人間って誰かが誰かを支えているんだなぁ。 原田ひ香さんの小説はこれで3作目。どれもハズレなしでした。 ランチ酒
おかわり日和 原田ひ香(著) 祥伝社 バツイチ、アラサー、犬森祥子の職業は“見守り屋”。依頼が入ると、夜から朝までひたすら人やものを見守る。彼女の唯一の贅沢は、夜勤明けの晩酌ならぬ「ランチ酒」。街で出会ったグルメを堪能しながら思うのは、一人娘のこと。別れた夫とその再婚相手のもとで暮らす娘に会えぬまま半年が経っていた。独り思い悩むが、ワケありな客たちと過ごす時間が徐々に祥子を変えていき…。恋(?)の予感の半生ハンバーグとビール、母心のスパゲッティーグラタンとレモンハイ、復活のからあげ丼とハイボール…疲れた心にじーんと沁みる珠玉の人間ドラマ×絶品グルメの五つ星小説! 出典:楽天 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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