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幸せのコイン(鯨統一郎)

まっすぐに正直に生きるって良いなぁ

​幸せのコイン
鯨統一郎(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、鯨統一郎さんの『幸せのコイン』。 『幸せのコイン』は七つの短編集です。

・会社を継がせようとする父の元から独立し、別の事業を開業しようとする娘。
・変わらぬ友情を誓う三人の女子高生
・なかなか営業成績を上げられず、上司や先輩にいびられ続けている営業マン
・小さな行き違いの積み重ねの末、ついに離婚を決意した一組の夫婦
・自分の絵の完成度を高める為、1本500円もする絵の具が欲しい小学生
・会社の不正の駒として使われた上に自殺に追い込まれる男性社員
・容姿端麗ではないのに(控えめに言って)社長秘書に抜擢され、周囲の社員から嫌がらせを受けることになった女性社員

これらすべての物語に登場する500円玉は同一の硬貨です。

しかし、何か目印でもない限り、同じ500円玉かどうかなどわかるわけがありません。それに関しては、第一話の中にきちんと仕掛けがあります。

タイトルが『幸せのコイン』とあるように、一話ごとの主人公たちは皆、明るい方向に向かいます。

短編なだけに、食い足りないというか、「そのエピソードをもっと掘り下げて教えて欲しいわ」と思う部分はありましたが、読後感がいいのが何よりです。

ほのぼのする、と言うか、ほっとすると言うか。そして、まっすぐに正直に生きるって良いなぁ、と思えました。

第七話で、それまでの登場人物たちが脇役として登場するのは、演劇の幕切れで登場人物たちがそれぞれ舞台を横切っているさまを連想させました。そういう場面が浮かぶ点でも好きな作品です。

ちなみに、七つの短編に共通するのは500円玉だけではありません。植物に詳しい人はこの小説からもっと深い意味を読み取れるかもしれないと思いました。
​幸せのコイン
鯨統一郎(著) 中央公論新社
会社を継がせようとする父親と対立し、自分の夢を実現するために、家を出た社長令嬢。父娘喧嘩の際、煤けてしまった五百円玉が、人々のポケットを渡り歩き、それぞれの人生の岐路に立ち会う。そして最後に辿り着いたのは…。一枚のコインが紡ぐ、ハートウォーミングで、ちょっと不思議な七つの物語。文庫オリジナル。 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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