あなたが誰かを殺した(東野圭吾)
安定の面白さ あなたが誰かを殺した
東野 圭吾(著) 東野圭吾さんの作品シリーズの中でも人気が高い加賀恭一郎シリーズ。『あなたが誰かを殺した』は、その最新作です。
舞台は閑静な別荘地。
別荘の持ち主である裕福な数家族が恒例にしていたバーベキュー大会の日に連続殺人事件が発生した。 静かな別荘地に響き渡るパトカーのサイレン。 地元警察が被害者家族に聞き取り調査をし、犯人を追おうとしていた頃、犯人は別荘地に近いホテルの高級レストランで優雅に食事をとっていた。そして食事が終わった時、犯人はレストランの店員に、自分が連続殺人犯であることを告げ、警察に通報するように促したのだった。 犯人は、自ら死刑を望んでいた。 そのためあっさり自分の犯行を認めたのだが、動機や殺人の詳細については全く語らない。 被害者はなぜ殺されなければならなかったのか、一体どのように殺人が行われたのか、詳しいことが全くわからない状況に、遺族たちは納得できなかった。 そこで、遺族たちは犯人が最後に過ごしたホテルに集まり、真相を探るための「検証会」を開く。 そこに、休暇中の加賀恭一郎が参加して……。 (東野圭吾さん『あなたが誰かを殺した』の出だしを私なりにまとめました) この小説はミステリです。
通常、ミステリというのは、名探偵や刑事が犯人が誰かを明かしていったり、犯人が仕掛けたトリックを暴いたり、あるいは犯罪の動機を明かすことが主眼となっていることが多いです。 ところが『あなたが誰かを殺した』は、そのどれにも当てはまりません。 そもそも、物語が始まってすぐに犯人が逮捕、というか自分から犯罪を告白するのです。 ここで私は違和感を覚えました。 こんなに早く犯人が逮捕されてしまったら、タイトルの『あなたが誰かを殺した』の意味が通らないのではないかと。 ところが「検証会」が開催される段になって、タイトルがクローズアップされてきます。 「検証会」に参加している遺族たち全員に何者かが「あなたが誰かを殺した」という手紙を送っていたことがわかるのです。 遺族はそれぞれ、自分の夫や、両親など肉親を殺された被害者のはず。それなのに「あなたが誰かを殺した」というメッセージを送りつけられるとは、どういうことでしょう? ネタバレを避けるためにはこの辺りまでしか書けません。 私は、読み始めた時から2人の人物に違和感を覚えていました。この人たち、なんだか怪しいゾと。 そして読み進めるにつれて、私の違和感は的を射ていたことがわかってくるのですが、東野圭吾さんは色々と仕込んでくれていて、単純に「ほらね、私の思った通りだったワ」という結末にはなりませんでした。 いやー、東野圭吾さんのミステリはいつも期待を裏切りません。 加賀刑事のおかげで事件の真相がわかった、と思った後にもまだ仕掛けがあって、読み終わった時に、「この先どうなったのかな?」と考えさせられるようになっています。 ある意味、結末を決めるのは読者である、そんなミステリでした。 ただ、この作品は加賀恭一郎シリーズではあるものの、休暇中の加賀さんが頼まれて管区外の犯罪に関わるという設定になっています。 やはり加賀さんには刑事として犯罪と向き合って欲しいなぁ、と、新たな作品を期待してしまうのでした。 【補足】 東野圭吾さんの『あなたが誰かを殺した』を気に入られたのであれば、多分『どちらかが彼女を殺した』(1996年)、『私が彼を殺した』(1999年)もお気に召すと思います。合わせてお勧めします。 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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