HOME  Book一覧 前のページへ戻る

九時まで待って(田辺聖子)

おせいさんの恋愛小説は極上!

九時まで待って
田辺聖子(著)
久々に田辺聖子さんの小説を読みました。『九時まで待って』。タイトルだけでは、どんな小説なのか想像もつきませんでしたよ。
大阪在住の作家 浅野稀(あさの まれ)。彼と同居している江木蜜子は、時に彼の秘書であり、漫才の相方のようでもあり、妻のようでもある。

蜜子は入籍にはこだわっておらず、稀との軽妙な会話を楽しんだり、締め切りの波を必死で乗りこなしている稀をそばで見ていて可愛いと思っているのだった。

しかし時々は稀に投げつけられる言葉に心がザラっとすることもある……
(田辺聖子さん『九時まで待って』を大雑把にまとめました)
関西にお住いの田辺聖子さん。スヌーピーと宝塚歌劇が大好きでいらっしゃいます。ご著書が宝塚歌劇の演目となったこともあり(『隼別王子の反乱』『舞え舞え蝸牛』など)いろいろなところでお見かけしたことがある、親しみ深い作家さんです。

大変失礼ながら、べっぴんさんとは言えないお顔立ち。でも、なんとも言えぬ愛嬌に満ちておられ、大好きな作家さんです。関西の誇りです。

田辺聖子さんの作品は、多岐にわたっていますが、恋愛小説の素晴らしさは、群を抜いていると思います。見た目がほんわか系で、「恋の手練れ」のイメージではないのに。

会話が軽妙で、するすると読み進められるのだけれど、そこはかとない物悲しさがにじむ文章なのです。

私は恋愛を得意げに語るほど、経験が豊富ではないのだけれど、満月のように満ち足りた恋愛であったとしても、恋にはどこか不安や哀しみが つきまとうものだと思うのです。

おせいさん こと田辺聖子さんの恋愛小説には、それがはっきりと表現されているように思います。

『九時まで待って』では、正式に夫婦になっていない男女がうまく同居する(おせいさんは「供棲み」と表現している)コツがいろいろと書かれていて、今更ですが勉強になりました。

蜜子が稀以外の男性と過ごす、神戸や大阪の夜の描写も素敵。私も夫以外のボーイフレンドと、大阪北新地で おでんを食べてみたいよう!!

まずはそんな小洒落たボーイフレンド作りから始めねばならないけど、小説みたいにうまくはいかないでしょうねぇ。

また、作家にしかわからない、作家の生態や思考なども盛り込まれていて、興味深かったです。

太宰治じゃないけれど「選ばれしものの恍惚と不安我にあり」の生活なんですねぇ。

『九時まで待って』というタイトルの意味は小説の終盤になってようやくわかります。

弾けるような若い世代ではなく、少し落ち着いた恋愛をされているかたには大いに共感できる小説だと思いました。

ちなみに、田辺聖子さんの恋愛小説の中で、私が一番好きなのは、平安時代が舞台の『不機嫌な恋人』。

まだ若い時に読んだのですが、読後、切なくて切なくてたまりませんでした。

おせいさん、いつまでもお元気でいらしてくださいね。
九時まで待って 改訂新版
田辺聖子(著)
集英社
31歳の密子は人気急上昇の作家、浅野稀と共棲みして5年。つつましいアパートから始まった2人の暮しは稀が売れっ子作家になるにつれて豊かになっていくが、最近、彼は独身を装い、密子の存在を世間に隠すようになったのだ。知らず傷つけられたプライド。甘え上手で子供のように寄りかかってくる男につい押し流される人生…。心に少しずつ不可解な気分が混り込んだ密子の前に、味わい深い中年男と少年らしさを残した青年が現われて…。オトナのラブ・ストーリー。 出典:楽天
profile
池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



OtherBook

千波留の本棚

読めば食欲増進・元気倍増

侠飯(福澤徹三)

千波留の本棚

人は占いに何を求めるのか

占(木内昇)

千波留の本棚

知っていると知らないとでは大違い。

嫁をやめる日 (垣谷美雨 )




@kansaiwoman

参加者募集中
イベント&セミナー一覧
関西ウーマンたちの
コラム一覧
BookReview
千波留の本棚
チェリスト植木美帆の
[心に響く本]
橋本信子先生の
[おすすめの一冊]
絵本専門士 谷津いくこの
[大人も楽しめる洋書の絵本]
小さな絵本屋さんRiRE
[女性におすすめの絵本]
手紙を書こう!
『おてがみぃと』
本好きトークの会
『ブックカフェ』
絵本好きトークの会
『絵本カフェ』
手紙の小箱
海外暮らしの関西ウーマン(メキシコ)
海外暮らしの関西ウーマン(台湾)
海外暮らしの関西ウーマン(イタリア)
関西の企業で働く
「キャリア女性インタビュー」
関西ウーマンインタビュー
(社会事業家編)
関西ウーマンインタビュー
(ドクター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性経営者編)
関西ウーマンインタビュー
(アカデミック編)
関西ウーマンインタビュー
(女性士業編)
関西ウーマンインタビュー
(農業編)
関西ウーマンインタビュー
(アーティスト編)
関西ウーマンインタビュー
(美術・芸術編)
関西ウーマンインタビュー
(ものづくり職人編)
関西ウーマンインタビュー
(クリエイター編)
関西ウーマンインタビュー
(女性起業家編)
関西ウーマンインタビュー
(作家編)
関西ウーマンインタビュー
(リトルプレス発行人編)
関西ウーマンインタビュー
(寺社仏閣編)
関西ウーマンインタビュー
(スポーツ編)
関西ウーマンインタビュー
(学芸員編)
先輩ウーマンインタビュー
お教室&レッスン
先生インタビュー
「私のサロン」
オーナーインタビュー
「私のお店」
オーナーインタビュー
なかむらのり子の
関西の舞台芸術を彩る女性たち
なかむらのり子の
関西マスコミ・広報女史インタビュー
中村純の出会った
関西出版界に生きる女性たち
中島未月の
関西・祈りをめぐる物語
まえだ真悠子の
関西のウェディング業界で輝く女性たち
シネマカフェ
知りたかった健康のお話
『こころカラダ茶論』
取材&執筆にチャレンジ
「わたし企画」募集
関西女性のブログ
最新記事一覧
instagram
facebook
関西ウーマン
PRO検索

■ご利用ガイド




HOME