100万回死んだねこ(福井県立図書館)
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![]() 人前では読めません! 100万回死んだねこ
覚え違いタイトル集 福井県立図書館 電車やバスの中で読めない本ってありますよね?涙が止まらないとか、思わず爆笑してしまう、とか。
福井県立図書館が編集した『100万回死んだねこ ー 覚え違いタイトル集」は後者の代表のような本でした。 昭和の時代、図書館には本の他に、タイトルや出版社、著者名などが書かれたカードが収められた棚がありました。 私たちはそれを1枚1枚検索して、その本が図書館のどこにあるのか探したものです。 最近の図書館は、パソコンが置いてあり、検索して蔵書を調べることができます。 便利になったように見えますが、大抵の図書検索システムはネットでの検索とは違い、漢字や助詞を間違えると、うまく検索できません。 うろ覚えのタイトルだったりすると、検索に引っかからず、たどり着けない訳です。 図書館の役割の一つが「レファレンス」。 利用者が探している情報にたどり着けるよう、司書さんがお手伝いをしてくれます。 自分で検索してみても、うまくたどり着けないようなとき、「あの、○○っていう本はありますか?」と、図書館司書さんに相談して探してもらうことができるわけです。 思い込みや勘違いなどで、違うタイトルを入力してしまい、自力で検索できないことが往々にしてあるわけで、図書館司書さんたちは、そこから正確なタイトルや著者名を推測し、利用者さんが探している本を割り出すわけです。 この本は、福井県立図書館が記録しておいた利用者さんのタイトルの覚え違いを集めたものです。 いやはや珍妙な覚え間違いの数々に、思わずブハッと吹き出すやら声を出して笑ってしまうやら。とても電車やバスの中で読むわけにはいきません。 どんな覚え間違いが掲載されているのか、どれを例にあげてもネタバレになってしまうので、出版社が本の帯に上げている事例の中から、私も読んだことがある本をご紹介しますね。 「『100万回死んだねこ』貸してください」 佐野洋子さんの絵本です。 一瞬、どこが間違っているのかわかりませんでした。 正解は『100万回生きたねこ』。 何度生まれ変わっても、「どうってことない」と思っていた猫が、愛を知って、「生きること」「死ぬこと」を理解するという、深い深い絵本です。 私は夫からプレゼントしてもらって持っているのに、『100万回死んだねこ』でも合っている気がしましたよ。 覚え間違っても仕方がないかもね。 「『蚊にピアス』はどこにありますか?」 蚊にピアス?! きっと小さくて細くて、繊細なピアスなんだろうな。 でもそもそも、蚊に耳があるの?! 正解は第130回芥川賞受賞作、金原ひとみさんの『蛇にピアス』。 私はこの衝撃的なタイトルの意味が知りたくて読んだ記憶があります。 読後、確かに『蛇にピアス』だな、と思いました。 このタイトル間違いをした方は、きっと、本屋さんや広告ででタイトルをチラッと見て、図書館で借りようと思ったのでしょうね。 「蛇」と「蚊」、似ていなくもない。 「ねじ曲がったクロマニョンみたいな名前の村上春樹の本ありますか?」 正解は村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』。 村上春樹さんが描いてくれるのなら『ねじ曲がったクロマニョン』も読んでみたい気がします。 私が一番ウケたのは、 「『おい桐島、お前部活やめるのか?』ある?」 正解は朝井リョウさんのデビュー作『桐島、部活やめるってよ』。 私は、これまでにない感じのタイトルに惹かれ、読みました。 そして朝井リョウさんの 言い回しや改行の仕方などに「今の若い人はこういうふうに書くんだ」と、新鮮な驚きを感じたものです。 この作品の意外なところは、タイトルロールである桐島くん本人が登場しないこと。 それなのに、この覚え間違いさんはいきなり本人に聞いちゃってるんですよ。 「おい桐島、お前部活やめるのか?」って。 「おう、やめるよ」「いや、やめないよ」 桐島くんがどう答えるのかは知らないけれど、本人に直接聞いちゃったら、話が先に進まないじゃないの、そこで終わっちゃうじゃないの、 そう思って、この思い違いはツボにハマりました。 帯で紹介されている例だけでも十分面白いのに、本文には、あるわあるわ、笑える覚えまちがだらけ。 ページを捲るたびにブハッ!クククク、笑えるのでした。 実は、こういったタイトル間違いは本に限ったことではなく、私たちのようなラジオのお仕事でもたまにあります。 タイトルが微妙に違っていたり、アーティスト名が違うリクエストをいただくことが。 そんなときにはスタッフと「多分この曲のことだと思うんですけどねぇ」「もしかしてこの歌手のことじゃない?」と推測して曲をかけることになります。 私が担当している番組は全部生放送なので、ゆっくり時間をかけることができないし、次のリクエストに集中しなくてはいけませんから、記録をとっていないんです。 この本を読んで、これからは私たちも番組宛に来たタイトル覚え違いを記録しておいた方がいいかもしれないと思いました。 ただ、この本に紹介されているような面白い間違いは滅多にありませんけども。 ともかくずっと笑いながら読みましたが、私の知らない作家さんや、読んだことがない本がいっぱい紹介されており、おかげで今後読みたい本が一気に増えました。 なお、福井県立図書館では覚え違いタイトル集をWEBで公開しています。興味がある方は覗いてみてくださいね。➡福井県立図書館 | 覚え違いタイトル集 ![]() 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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