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おいで、アラスカ!(アンナ・ウォルツ)

誰もが弱いし、強いんだ

おいで、アラスカ!
アンナ・ウォルツ(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、オランダの児童文学、アンナ・ウォルツさんの『おいで、アラスカ!』
12歳の女子 パーケルはゴールデンレトリバーの写真をスマートフォンのお待ち受け画面にしている。

その犬にアラスカという名前をつけたのはパーケルで、数ヶ月前まで家で可愛がっていた。しかし、弟が犬アレルギーであるとわかり、手放さざるを得なくなったのだ。

とても賢かったアラスカは、その後訓練を受けて、介護犬になったらしい。だけど、介護犬の約束ごとで、どこで誰の介護をしているのか、教えてはもらえない。

学年が変わってクラスメートが初めて顔をあわせる日、パーケルは自己紹介で、アラスカと一緒にやっていた遊びを披露してしまい、皆に笑われた。

そのきっかけを作った同級生はスフェン。ある日、授業中にスフェンが硬直し床に倒れてしまう。彼には「てんかん」の持病があったのだ。

スフェンの母親は白い犬を連れて彼を迎えにきた。遠くからでもパーケルにはわかった。連れられている犬がアラスカだということを。

アラスカはスフェンの介護犬となり、彼がてんかんの発作を起こしたら、ブザーを鳴らしたり、吠えたりして家族に知らせていたのだ。

よりによって、自分がクラスでからかわれる理由を作ったスフェンのところにアラスカがいるとは。

パーケルはアラスカを取り戻すべく、夜中にこっそりスフェンの家に忍び込む……
(アンナ・ウォルツさん『おいで、アラスカ!』の出だしを私なりにご紹介しました)
この物語には二つの軸があります。

一つは「てんかん」という病気、もう一つは「介護犬」の存在です。

てんかんがどのような病気なのか、てんかんの発作を起こした人がいたら、周りの人はどうすればいいのか、子どもにもわかるように書かれており、非常に勉強になりました。

お仕事中の介護犬について、周囲の人はどうすればいいのか、わかっていたつもりですが、ユーザー側からの視点で説明されると、深く納得させられました。

しかし、介助犬は主に肢体が不自由な方の生活をサポートするものだと思っていましたが、オランダでは てんかん患者さんに導入されているそうです。

寝室にブザーが設置され、患者さんがてんかん発作を起こすとそれを押して家族に知らせるのも普通のことだそう。

しかも、介助犬によっては、患者さんの体の微妙な変化から発作が起こりそうなことを知らせることもできるそうで、大いに患者さんを助けているのです。

日本ではてんかん患者さんへの介助犬活動は ほぼゼロ。

導入されれば生活の質が向上する人がたくさんおられるでしょうに。私はこれまで災害救助犬への募金を行ってきましたが、介護犬、盲導犬への募金活動も息長く行っていこうと決意を新たにしました。

ところで、この物語の底辺に流れているのは、人間は誰しも弱いものであるし、同時に強いものだということ。

スフェンは持病のことで悩んでいます。いつ、発作が起こるのか自分ではわかりません。そして発作が起こっている間、自分に何が起こっているのかも全くわかりません。

そしてそんな状態が一生続くかもしれないことに、スフェンは苛立ち、悩んでいるのです。

一方のパーケルにも恐れていることがあります。

物語の終盤で、クラスメートが各自、自分で気が付いている自分の変なところ、弱点をカミングアウトしていく場面があるのですが、人は「そんなことを気にしているの?」と思うような些細なことで悩んでいたりするものです。

自分だけが弱いと悩む必要はないし、相手の弱さを嗤う必要もありません。皆弱い人間ではあるけれど、その気になれば、力をあわせることで人は強くなれる。

そんなことを教えてくれる物語。夏休みの読書感想文にお勧めの一冊です。(小学4年生くらいからではないかと)
おいで、アラスカ!
アンナ・ウォルツ(著)
フレーベル館
子犬のときに飼っていたアラスカが、転校してきたスフェンの介助犬になっていた。それを知ったパーケルは真夜中、スフェンの部屋を訪ね、アラスカを連れ去ろうと計画するが…。 出典:楽天
profile
池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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