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猫のお告げは樹の下で(青山美智子 )

この猫と会いたい

猫のお告げは樹の下で
青山美智子(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、青山美智子さんの『猫のお告げは樹の下で』です。

タラヨウ(多羅葉)の樹をご存知ですか?

モチノキ科の常緑高木で、その葉の裏側をひっかくと、インクを使ったように文字が浮き出るそうです。

「葉書」の語源となっただけあって、今でも切手を貼れば郵便物として取り扱われるんですって。

残念ながら私はタラヨウの樹も、文字が浮き出た葉っぱも見たことがありませんが、この小説ではタラヨウの葉がとても大事な役割を果たします。
ある神社の境内に生えているタラヨウの樹。お参りに来た人たちが、さまざまな言葉を葉に刻んでいる。その神社には「ミクジ」という名前の猫がいるらしい。

”らしい”というのは、誰もがミクジと会えるわけではないのだ。必要がある人の前にだけミクジは現れるという。

背中は黒色、足とお腹は真っ白。尻尾はステッキの持ち手のように先が曲がっているミクジ。顔はハチワレで、お尻部分に少しだけある白い毛は星の型をしている。

ミクジはタラヨウの樹の周りを高速回転した後、トンと樹に手をつく。するとハラリと一枚葉が落ちてくるのだ。

その葉には一言だけ言葉が書かれているが、悩める人本人以外には、その文字が見えない。どうやら悩める人だけに意味を持つ言葉らしい。

ミクジから葉を落としてもらった人は、葉に書かれた文字の意味を考えるうち、悩みから抜け出していくのだった。
(青山美智子さん『猫のお告げは樹の下で』の概要を私なりに説明しました)
この本は短編集です。7つの短編に登場する人物と、その人の前に落ちたタラヨウの葉に書かれていた文字を紹介します。

失恋したばかりの美容師には「ニシムキ」。

思春期の娘とどう向き合っていいかわからない父親には「チケット」。

就職活動がうまくいっていない大学生には「ポイント」。

息子の嫁にこき使われている舅には「タネマキ」。

転校先でいじめられている小学生には「マンナカ」。

漫画家になる夢を捨てきれない主婦には「スペース」。

そして、マスコミで名の通った占い師には「タマタマ」。

猫のミクジがそれぞれに与えた言葉は、まるで暗号です。

どういう意味なのか、私も作中の人物と一緒に、あれこれ考えました。

そうするうち、一話目よりも二話目、二話目より三話目というふうに、小説世界にのめり込んでいくのがわかります。

よくできた小説です。

よくできているといえば、それぞれの短編の主人公たちは、別の短編の中にちょっとだけ登場してきます。

もちろん主人公たちは、そうとは知らず すれ違うだけ。

読者だけが「あれ?これは、あの話のあのシーンだな」と、気づくことができます。

もちろん単に小説の形態だけが、この小説にのめり込む原因ではありません。

誰にでも悩みはあるもの。

主人公たちの悩みは私の悩みとは異なるけれど、どんな気持ちになるか、十分に察することができます。

そして、小説とはいえ、彼らがその悩みとどう向き合い、解決していくのかを見届けたい気持ちになるのです。

その中には、もし自分が同じ悩みに直面したら、参考にさせてもらおうという気持ちも含まれています。

全編通して登場する神社の神職さんがとても魅力的なのも、この小説を温かいものにしていると思います。

ああ、こんな神職さんと猫のミクジがいる神社が本当にあればなぁ。

読み終えた時には何とも言えず優しい気持ちになる小説でした。

私は特に「タネマキ」と「マンナカ」に、ジーンとしました。
猫のお告げは樹の下で
青山美智子(著)
宝島社
失恋のショックから立ち直れないミハルは、ふと立ち寄った神社で、お尻に星のマークがついた猫ーミクジから「ニシムキ」と書かれたタラヨウの葉っぱを授かる。宮司さんから「その“お告げ”を大事にした方が良いですよ」と言われたミハルは、「西向き」のマンションを買った少し苦手なおばの家を訪れるが…。中学生の娘と仲良くなりたい父親。なりたいものが分からない就活生。家族をないがしろにしたと後悔する頑固おやじ。転校先でクラスに馴染めない男の子。20年来の夢を諦めるべきか迷う主婦。自分のしたいことに臆病になった占い師。なんでもない言葉をきっかけに、思い悩む人たちの世界がガラッと変わっていくー。猫のお告げが導く、7つのやさしい物語。 出典:楽天
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池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の
『読書ダイアリー』

ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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