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十年屋(廣嶋玲子)

時間は優しいお友達

十年屋
時の魔法はいかがでしょう?
廣嶋玲子(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回は、廣嶋玲子さん作、佐竹美保さん絵の『十年屋 時の魔法はいかがでしょう?』。
捨てるに捨てられない、かといって手元にも置いておけない(置いておきたくない)ものを預かってくれる「十年屋」。

名前の通り、預かってくれる期間の上限は十年。もちろん、タダではなく「代金」が必要だ。

十年経つ前に引き取りにきたとしても、「代金」を返してもらうことはできない。また、十年経った段階で、そのものが必要ない場合は、それは十年屋の所有物、商品となる。

十年屋への道は誰も知らない。ただ、必要な人には招待状が届き、それを開ければ、いつの間にか十年屋の前に来ているのだ。色々な人が、色々な事情で十年屋にやってくる……。
(廣嶋玲子さん:作 佐竹美保さん:絵『十年屋』の概略を私なりにまとめました)
『十年屋』は6つの短編からなる連作集です。

それぞれのタイトルと預けるもの、主人公の名前を挙げます。
1.懐かしの白うさぎ
主人公は15歳の女の子、リリ。亡くなったママが作ってくれたぬいぐるみのスノボンを新しいお母さんに捨てられてしまいそうなので、十年屋に。

2.傲慢のアルバム
主人公はわがままな女の子マカ22歳。付き合っている彼とちょっとしたことで喧嘩になり、衝動的に、これまで彼にもらったものや思い出の品を捨てることに。しかし、彼が撮ってくれた写真は捨てる気になれず、十年屋に。

3.約束の雪だるま
主人公は少年 ロロ、9歳。病弱な彼女のために猫の形の雪だるまを作ったのに、彼女は入院してしまった。このままではせっかくの雪だるまが溶けてしまう!

4.悔やみの指輪
主人公テアは6歳の女の子。何かと張り合ってながらも仲が良いお友達ララご自慢の大事なものを出来心でとってしまった。とても手元に置いておけない、と、十年屋に。

5.残された時計
満たされないエリート青年のジンは、何も預けた覚えがないのに、十年屋に呼び出される。彼が受け取るべきものとは。

6.作り直しの魔法 
作り直しの魔法使いツルは十年屋で仕入れて、作り直して、売りに出している。
十年屋の店主は、イケメンな魔法使い。

物腰は優しく丁寧だけど、いつもいつも優しいわけではありません。

そもそも、十年間の保管料はお金ではなく、預けにきた人の寿命一年分、なのです。

十年経った時に、その品物を再び手元に置きたいと思う人もいれば、もういらないと思う人もいるし、大事なことに変わりはないけれど、それなしでも自分はやっていけると感じて手放す人もいます。

十年もあれば、人は成長することもできるし、問題が自然と解決することもある。それを著者は「時の魔法」と呼ぶのでしょう。

私は松任谷由実さんの「12月の雨」の歌詞、
時はいつの日にも親切な友達 過ぎてゆくきのうをものがたりに変える
を連想しました。

どんなことも時間が解決してくれる、逆に、何年経とうと変わらない気持ちも存在する、そんなことを教えてくれるこの本は児童書ですが、示唆するものはかなり深く、大人が読むに耐える作品です。

十年屋の執事である猫の「カラシ」は言葉が丁寧過ぎてちょっと変。そこがとても可愛い。

佐竹美保さんの絵も可愛らしいですよ。

ファンタジーが好きなお子さんなら、夏休みの読書感想文に良いかもしれません。
十年屋
廣嶋玲子(著)
静山社
子どものころから大事にしていたぬいぐるみ、大好きな人からもらった写真、大切な友だちに見せたかった雪だるま。忘れたくても忘れられない大切なもの、思い出と一緒に、魔法でお預かりしますー。 出典:楽天
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池田 千波留
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コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
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ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon

 



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