マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ (古内一絵 )
こんなカフェなら行ってみたい マカン・マラン
二十三時の夜食カフェ 古内一絵(著) 私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。
今回ご紹介するのは、古内一絵さんの『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』。 ド派手な服や靴が売り物の”ダンスファッション専門店 シャール”があるのはとある商店街を抜けた普通の住宅街。そこは夜になると、カフェ「マカン・マラン」に変わる。
両店の経営者はドラァグクイーンのシャール。元々はハンサムなエリートサラリーマンだったらしいが、今はショッキングピンクのボブウィッグがトレードマークのオネエさんだ。 シャールがダンスファッション専門店の「お針子」たちのために夜食を作り始めたのが「マカン・マラン」の始まりだ。 一切の広告をしない、真の意味での隠れ家カフェ「マカン・マラン」だが、様々な事情を抱えた人が偶然訪れた時には、温かくもてなしてくれる。 シャールが作る夜食は薬膳を基礎にしており、心や体を病んだ客人を芯から癒してくれるのだった。 (古内一絵さんの『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』の出だしを私なりにまとめました) ドラァグクイーンとは、男性が女性の姿で行うパフォーマンスの一種。
私が初めて「ドラァグクイーン」という言葉を知ったのは2010年。 宝塚パリ祭というシャンソンの催しに出演されていた、シモーヌ深雪さんを初めて拝見したときのことでした。 シモーヌ深雪さんが登場して歌い始めると、客席が静かにざわめき始めました。 みんなの声を総合すると、 「声は男性みたいな気がするけど、女性?え?男性?どっち?どっち?どっちなのー?!」 もう歌の世界よりそちらの方に興味が行ってしまって大変でした。 トークで、女性としてパフォーマンスされている男性なのだとわかり、お客様全員が納得。 これでやっと歌に集中できるという雰囲気になったことを覚えています。 そしてパンフレットを見て、ドラァグクイーンという呼び名を知ったのでした。 古くはカルーセル麻紀さんや美輪明宏さん、 ピーター(池畑慎之介)さん、マツコデラックスさんもドラァグクイーンと言えるのだと思います。 ダンスファッション専門店シャールのお針子たちは皆ドラァグクイーンです。 でも、生きていくために男性の姿でアルバイトをしています。 そしてお店に入ると、メイクをしたりウィッグをつけたりして本来の自分の姿になって針仕事をするのでした。 小説の中で何度も「おかま」という呼び方が出てきますが、その度に本人たちは「ドラァグクイーンよ」と訂正しています。 誇り高きという枕詞をつける場合もありますが、この店の外にいるときは、本来の姿をさらけ出せていません。 「彼女たち」は、まだまだ社会にすんなりと受け入れられる存在ではなく、この店だけが、心からホッとできる場所。 店主シャールはそんな「彼女たち」の居場所をキープするためにも「マカン・マラン」を運営しているのでした。 シャールが受け入れるのは「彼女たち」だけではありません。 早期退職を促されかけているストレスと残業続きで、貧血を起こした40過ぎの独身女性 塔子。 まともなご飯を食べなくなった中学一年生の男子 璃久(りく)。 発注元に振り回され、納得のいく記事を書けない下請けライターさくら。 そしてカフェの近所に一人で暮らす老女や、地上げ屋。 彼らのためにシャールが作るのは心にも体にも優しいものばかり。 悩んでいた彼らの心が解ける様子に、人間は食べ物によって変わるのだと教えられます。 どんな食べ物かはそれぞれのタイトルから想像していただきましょう。 第一話 春のキャセロール
第二話 金のお米パン 第三話 世界で一番女王なサラダ 第四話 大晦日のアドベントスープ (古内一絵さん『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ)目次より引用) シェフであるシャールが、それぞれの料理の材料やレシピ、効用を語るのですが、目の前にそのお皿があるかのような錯覚に陥ります。
「食べたい!!食べてみたい!!」 架空のカフェなのに、探し出して行ってみたくなりました。 市販のドレスではサイズや趣味が合わず、自分たちの着たいドレスを自分たちで作っているうち、社交ダンスを習うオバ様がたにも人気が出てきたということで、ディスプレーされているであろう商品も見てみたい気がする。 4つのお話はそれぞれ独立しているのですが、登場する人物たちが所々で交錯していて、繋がっていくのが面白いです。 シャールに助けられ、癒されていく人物たちが増える一方、シャール自身が抱える秘密が深刻さを増していきます。 「この後どうなるのだろう」と思わせる結末は、 『女王さまの夜食カフェ マカン・マラン ふたたび』 『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』 『さよならの夜食カフェ マカン・マラン おしまい』 へと繋がっていきます。 続編も読んでみたいです。 池田 千波留
パーソナリティ・ライター コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。 BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」 ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HP/Amazon
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