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むすびや(穂高明)

ああ食べたい!!お米とおむすびの力

むすびや
穂高明(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、穂高明さんの『むすびや』。
横山結 22歳。大学を卒業し、この春から両親が経営するおむすびの店「むすびや」で働き始めた。最初からそのつもりではなかった。就職活動に失敗したのだ。実に20社以上から断られ、自信喪失しながら仕方なく親の手伝いを始めたのだった。

「結」とかいて「ゆい」と読む。まるで女の子の名前だと、子どものころからクラスメートにからかわれ続けたな名前が就職活動に悪い影響を与えたのではないか、そんなことまで思ってしまう。そもそも おむすびやの息子だということも、からかわれる原因だったのだ。

親の手伝いをしながら、そんなことまで考える結だった。しかし「むすびや」を続ける上での両親のこだわりや、商店街の仲間との信頼関係などを感じるに連れ、しだいに結は「おむすび」と真剣に向き合うようになるのだった……。
(穂高明さんの「むすびや」を大まかにまとめました)
まずは「おむすび」という呼び方について。私は日常では「おにぎり」と呼びます。地域によって呼びかたが違うのですね。

店名「むすびや」でわかるように、結の両親は「おむすび」という名称に深い思い入れを持っています。

また「結」という名前の意味も明かされていき、漢字や言葉が名称以上の意味を持つ日本語の温かさを感じました。

この小説は結くんが主人公ではあるけれど、大型商業施設に押されている商店街の八百屋さん、酒屋さん、お米屋さんなどの心意気や、「むすびや」を訪れる客たちの人生の一コマも描かれています。

私は来客の人生のその後をもっと知りたくて、そのあたりが食い足りない気分なのではありますが。

ああ、それにしても「むすびや」のメニューのおいしそうなこと。おかか、梅、生たらこ・焼きたらこ、鶏そぼろ、鮭、赤飯、昆布、きゃらぶき、筋子、かやく、塩むすび。

あー、食べたい。
ゆる糖質オフダイエット中の私には酷な小説でした。

ちなみに私が好きな具は昆布。いつも迷いに迷って、結局昆布にします。あのじんわりとした味わい深さ!!

再度叫ぶ。
ああ、食べたい!!

ところで、飲食店の経営って大変だろうなと思いました。小説の中に「むすびや」で働く両親と結の給料が出てくるのです。

現金手取りで、父25万円、母15万円、結12万円。働きのわりにこの金額は安いと思います。

思いますが、自営でお米にも具材にもこだわり、おまけに水道光熱費などを考えると、そう簡単にクリアできる数字でもない気がします。

三人の給料合計52万円を出すにはどれほど売り上げればいいのか?「むすびや」ではイートインだと、おむすび2個とお味噌汁、お漬物のセットが500円。

私は飲食店の原価率を知らないのだけど、3割と仮定すると350円が純利益。単純に割ると、約1500食。月に25日店を開けているとして、1日60の売り上げが必要です。これが最低のライン。

さびれかけた商店街で"おむすび"だけで勝負してやっていけるんだろうか。他人事ならぬ、小説事だけど心配になります。

でも、就職活動失敗から立ち直り、ちょっぴり自信も深めた結くんがやる気になっているのだから、「むすびや」の未来は明るいと思いたいです。
むすびや
穂高明(著)
双葉社
就職活動で全敗し、家業のおむすび屋を手伝うことになった結。実家の商売に子供の頃からコンプレックスを抱いてきた結だが、おむすび作りに実直に向き合う両親の姿を目の当たりにし、気持ちに変化が訪れる。「結」という名前に込められた、亡き祖母の想いも前途を温かく照らしだすー。一人の青年の新たな出発を描いた成長物語。 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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