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鋼のメンタル(百田尚樹)

百田さんのしゃべり口調が連想できて、おもしろい

鋼のメンタル
百田 尚樹(著)
私がパーソナリティを担当している大阪府箕面市のコミュニティFMみのおエフエムの「デイライトタッキー」。その中の「図書館だより」では週に一度、箕面市立図書館の司書さんが選んだ本をご紹介しています。

今回ご紹介するのは、百田尚樹さんの『鋼のメンタル』。

まずは「図書館だより」で百田尚樹さんの作品について語らせていただけることが嬉しかったです。というのも、私は百田尚樹さんの小説が大好きなんです。

『永遠の0』、『風の中のマリア』、『海賊と呼ばれた男』が私の中の百田さんベスト3。まぁ、読んでみてくださいましよ。

私は泣きましたよ。なんて素晴らしい作品であることか。生と死について考えさせられ、一生懸命生きることが素晴らしいと感じさせてもらえます。

普通、作風は著者のキャラクターをどこかに反映しているもの、と思いますよね?なのに、百田さんに限っては全然違う!気高い作品と、著者ご本人の印象がかなり違う!!

関西人で百田さんよりちょっと若い世代の私にとっては、百田さんはテレビ番組「ラブアタック」によく出ていた、”変なお兄さん”。

その後はテレビ番組「探偵!ナイトスクープ」の作家さんとなられ、”変なお兄さん”は”おもろい人”へと格上げされました。「探偵!ナイトスクープ」は関西が誇る面白い番組なんですもの。

実際には、上に書いたような時系列で知ったわけではなくて、『永遠の0』を読んだときに、「探偵!ナイトスクープ」の作家さんだと知ったんです。その時は「へぇーさすがやわ」と思いました。

ほどなくして、友人と話しているときに、「あのさ、もしかして百田尚樹って、 『ラブアタック』に出てた ヒャクタと違う?」と言われ「うそや!!そんなわけない!!」と全力で否定したんですが、その情報は正しかった……

本編に関係ないことを長々とすみません。それくらい、作品世界とオフの百田尚樹さんの差が激しいと言いたいわけです。

さて『鋼のメンタル』はそんな百田さんのオフの世界、素の百田さんについて、ご自分で分析されたものです。

Twitterなどで百田さんをfollowしておられるかたはご存知でしょう。時々、とんでもない発言をされることがあることを。

歯に衣着せぬ、というのとはちょっと違っていて、とにかく思ったことをストレートに発言しておられる気がします。「そんなこと言って大丈夫か?!」と、思わず心配するようなことを、です。

ジャンルは様々で、下ネタのときもあれば、真剣に国を憂うときもあります。どんなジャンルのときでも、たいがい炎上していますね。みごとに。やわな神経の人だったら、その時点でめげて降参しそうな状況のときもありました。

しかし!百田さんはめげないし、態度を変えたりもしません。むしろ、わざわざSNSでご自分の悪口を検索して読むこともあるのだそうです。

これはちょっとわかる気がする。傷口にできたカサブタを、治るまで待てず、自分で剥がしてしまうような感覚かな、と。

でも、百田さんの場合はカサブタなんて可愛いものではない、大バッシングを受けていても読むのだそうで、奥様と息子さんが「あの神経が理解できない」「鋼のメンタルや」とおっしゃっておられるんだとか。

はい。この息子さんの発言が、この書籍のタイトルです。

上のエピソードをお聞きになった出版社の編集さんがピンと来られたんですよ。強いメンタル、鋼のメンタルについて是非書いてください、と。そんな経緯で生まれた『鋼のメンタル』。内容はいたって真面目でした。

例えば
メンタルを免震構造にせよ
(『鋼のメンタル』P53 第二章 挫折との付き合い方 より引用)
人生で辛いこと悲しいことがあったときに、我慢を重ねてまっすぐに立っていると、限界を超えてポキっと折れてしまう。

だから弱音を吐いたり、泣いたり、へこんだら良いんだ、ということです。へこむだけへこんだら、人間は元気になれると。
お世辞ぐらい上手に言え
(『鋼のメンタル』 P116 第四章 精神の解毒法 より引用)
「あいつはお世辞がうまいから出世した」なんてことがよく言われるけれど、それが本当かどうか、よく考えてみなさいとおっしゃっています。

あなたがその上司だったとして、部下の見えすいたお世辞を真に受けて出世させたりしますか?と。そこまであなたはバカなんですか?と。あなたが気づくことなら、上司だって見透かすでしょう、ということです。

お世辞にもいろいろあって、相手の美点を見つけてそれを言葉にするのが上手なお世辞。それはお世辞というよりは評価に等しいでしょう。

反対に心にもないこと、本当ではないことを誇張してゴマをするのが下手なお世辞。「上手なお世辞」が言える人は周りから好かれるから、結果的に過ごしやすいことになるわけです。
「自分の藪に張り付いていろ」
(『鋼のメンタル』 P185 第六章 「成功」の捉え方 より引用)
イチゴを探しているとき、他の人が見つけた場所に後から走って行っても得るものはない、というお話。

つまりは他人の言葉や成果に右往左往せず、自分の藪(自分の道)を一生懸命探して、自分のイチゴを収穫しましょう、ということですね。

ところで、百田さんが打たれ強い原因の一つは、何か悩みが生じても、それが本当に悩みと言えるのか自問することだそうです。

十六歳の時にフランクルの『夜と霧』を読んで以来の習慣なんですって。

『夜と霧』はユダヤ人の精神科医フランクルの著書で、ドイツ強制収容所の体験記録です。日本ではみすず書房から出版されていて、悲惨な記録写真も添えられています。

十六歳の百田少年は大きな衝撃を受けました。それを読んでからは、自分の悩みなどちっぽけだと思うようになったのだそう。

私はこの記述に不思議な気持ちになりました。今まさにフランクルの『夜と霧』を読んでいるところだったのですもの。読書の輪が繋がったな、と嬉しかったです。

唯一、私が「これは頷けない」と思ったのは、
「最初の四十年の大切さ」
(『鋼のメンタル』 P190 第六章 「成功」の捉え方 より引用)
というくだりです。百田さんは「人生は四十歳までが勝負、五十歳を超えてから成功した人は見たことがない」と断言しておられるのです。私はこれだけは違うと思う。違うと信じています。

伊能忠敬が日本地図を作るための測量に歩き始めたのが五十五歳のときです。江戸時代の五十五歳ですよ。人生八十年、いやもしかしたら人生百年時代かもしれない日本で、四十歳までで全てが決まるなんて、そんなことあってたまるもんですか。

もちろん私も、実際のところは四十歳まででおおかたのところが決まるとわかっています。わかっているけど、可能性はゼロではないはず。

私はとっくに四十歳を過ぎていますが、新しいことにチャレンジしますよ。時にめげてやめてしまおうかと思うこともあるけれど、「いや、まだ伊能忠敬がスタートした年にもなってない!!」そう思うと勇気が出るんです。

あ、大いに脱線してしまいました。

百田尚樹さんの『鋼のメンタル』。一箇所だけは同意できなかったけれど、それ以外はとてもためになりましたし、何より、百田さんのしゃべり口調が連想できて、おもしろかったです。
鋼のメンタル
百田 尚樹(著)
新潮社
他人の目が気になってしかたがない、悪口に落ち込む、すぐにクヨクヨする、後悔を引きずる、人前であがってしまう…そんな悩みを抱える人は多いでしょう。でも大丈夫。考え方ひとつで、誰でも「精神の強さ」は鍛えられるのです。マスコミ、ネットで激しいバッシングを受けても、へこたれず我が道を行く「鋼のメンタル」は、どのように形成されたのか。著者初の人生論にして、即効性抜群の実践的メンタルコントロール術! 出典:楽天

池田 千波留
パーソナリティ・ライター

コミュニティエフエムのパーソナリティ、司会、ナレーション、アナウンス、 そしてライターとさまざまな形でいろいろな情報を発信しています。
BROG:「茶々吉24時ー着物と歌劇とわんにゃんとー」

パーソナリティ千波留の『読書ダイアリー』
ヒトが好き、まちが好き、生きていることが好き。だからすべてが詰まった本の世界はもっと好き。私の視点で好き勝手なことを書いていますが、ベースにあるのは本を愛する気持ち。 この気持ちが同じく本好きの心に触れて共振しますように。⇒販売HPAmazon



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